江角マキコの「洗脳」疑惑を最初に取り上げた井上公造は『芸能(秘)チャンネル』(AbemaTV・2017年1月24日放送)でこう語っていた。
*
「(A氏による)洗脳という感じがする。別の力が働いているような気がするんです。(江角さんとA氏の)家族でスキーに一緒に行った時も、江角さんと2人になり、ご主人が不信感を抱いている。もし不倫だったら、子供込みで旅行に両家族では行かないと思う。」
*
私もそう考えた。2日前(2017年1月25日)の当ブログで書いたように「億単位の金を騙し取られた男のマンションに1人で出かけて行くのはいくら鬼のように気が強い江角マキコでも不自然」であるし、だからといってただの不倫関係と決めつけるには「A氏」との付き合い方があまりにもオープンで奇妙なのである。
*
それはたとえば前出、井上公造の話にある互いの家族同士でのスキー旅行や、高級イタリアンレストランでの知人たちとの食事会からの「A氏」と仲よく連れ立っての帰宅(「FRIDAY」・2016年5月13日号)である。またこの1月25日には『サイゾーウーマン』が以下の証言を紹介している。
*
《さらに「(女性)自身」では、江角と子どもたち、そしてA氏とみられる男性が、4人で食事会をしていた可能性についても指摘しているが、昨年末には江角宅周辺で、ある“異様な光景”も目撃されていたようだ。
「江角さんは、男性とご自身の長女さんと3人で、堂々と自宅の近くを歩いていました。一緒にレストランに入っていくところを見かけたこともあります。当然その男性は、江角さんの旦那さんだと思っていましたが、外見が、週刊誌に出ていたA氏と似ていることに気づいたんです。当時は家族ぐるみの付き合いだったのかもしれませんが、返金の交渉相手と子ども連れで外を出歩いたり、食事をしていたなんて、にわかには信じられませんよね」(近隣の一般人)》
*
で、先ほどから引き合いに出している2日前(2017年1月25日)の当ブログの記事は、さらに遡って2016年4月30日に江角マキコを取り扱ったときに、なぜ「洗脳」が思い浮かばなかったのか、と激しく悔いているのである。だがしかーし!! だがまたしかーし!! いま考えると2日前のブログの記事もまた一歩踏み込みが足りなかったようなのである。ああ、IQが低いと苦労する。みなさまにもご迷惑をおかけして申しわけない。
*
思うに、江角マキコが1億円超も騙し取られたといわれる「A氏」に対して「洗脳」を疑われるほど依存的な態度を見せているのは事実なのだけれども、それにプラスして、というかその底で「もうひとつ別の力」(by井上ハムゾー)が働いているようなのである。
*
あとで原文を示すけれども、例の『女性自身』の不倫疑惑報道に反論するカタチで行われた『女性セブン』(2017年2月9日号)との単独インタビューでは、「A氏」とのあいだの金銭問題について「お金の返済を求めて税理士と弁護士の先生に相談して、以降2年ほどは話し合いを続けています」と語って「A氏」に騙されたことを認めているのである。もし「A氏」が江角マキコの洗脳に成功しているのならば、江角マキコは金銭問題の存在すら否定するはずである。
*
おかしいなあ、と思って自分のIQの低さと格闘しているとき1月25日の『文春オンライン』の記事を思い出したのである。今回の不倫疑惑→芸能界引退宣言のあらましもまとまっているので、前半部分も入れて少し長めに抜粋しよう。
*
【“落書きから2年半で引退”江角マキコの母親を直撃】
《1月23日、突如芸能界引退を発表した江角マキコ(50)。翌24日発売の「女性自身」(2月7日号)に「江角マキコが落ちた昨年8月に逮捕の男と“自爆”不倫!」と題する記事が出ることを受け、先手を打った形での発表だった。江角は代理人弁護士を通じて声明を出し、夫でフジテレビのゼネラルディレクター・平野眞氏(51)と別居していることも明かした。
島根県に住む江角の母親に不倫相手とされる男性について聞くと、「そんな人のことは知りません。再婚はだめです。それが常識というものだから。娘には強く生きて、子供をしっかり育ててほしい。私の願いはそれだけです」などと話した。》
*
少し長めに抜粋しても江角マキコの母親のコメントはごくわずかである。ごくわずかではあるけれども人柄の実直さ、頑固さ、昔気質、強い規範意識はよく伝わってくる。それにしてもなぜ『週刊文春』は江角マキコの母親へのインタビューなどというくだらない仕事をしたのだろう?
*
ここでようやくIQの低い私のアタマにボウッと灯りがともったのである。江角マキコの母親はウチのおふくろによく似ている、と。まあ、うつけ者である。
*
ウチの家族は兄弟間葛藤という精神的な問題を抱えていて、それは我々の子どものころの育てられかたによって生じている。長女である姉は4歳違いの弟である私(本家の長男だどん)が生まれてから、愛情面ではほぼ顧みられることなく育ってきたのである。
*
江角マキコの母親が「再婚はだめです。それが常識というものだから。」と理屈にならないリクツで筋を通そうとするように、ウチのおふくろも「あなたはお姉ちゃんなのだから我慢しなさい。ウチはなんでも長男が優先」とだけ繰り返して姉を育ててきたのである。子どもながらに抗議をしても「それが常識というものだから」というワケのわからない撥ね除け方をされる。
*
一方の父親も情に篤い人ではなく、そのうえ家庭のゴタゴタに踏み込むことを極端に嫌っていたから、姉は4歳からはつねに激しい愛情への飢餓感のなかで育ってきたのである。そしてついに姉のアタマは少し壊れてしまった。
*
アタマのキズは私と直接かかわらない範囲での日常生活ではまったく察しられないほどの軽いものであるけれども、いつまでも治らない。それどころか年とともに亢進しているように私には見える。それはユングのいうところのカインコンプレックスである。
*
《兄弟の関係において差別的に親の愛情を受けた場合、それによって苦しんだ原体験は、兄弟以外の関係にも投影されていくという。このコンプレックスを負う者は、親の愛を巡る葛藤の相手となった兄弟と同じ世代の周囲の人間に対して憎悪を抱くこともあるという。これをユングは旧約聖書、『創世記』偽典『ヨベル書』の神話を基に「カインコンプレックス」と呼んだ。
一般的には、兄弟間の心の葛藤、兄弟・姉妹間で抱く競争心や嫉妬心のことを言うとされる。》(Wikipedia)
*
細かく説明すると気が滅入るので、姉のアタマの状態を江角マキコのお話に関連するところだけ箇条書きにしておこう。
*
◆ 父親を崇拝している(いまはホトケ)。それにしては仏壇の供え物は腐るまで放置されている
◆ 自分にまったく自信がない。自分は失敗してはいけないという強いオブセッションがある(失敗すると愛されないので)。なので試験や人前に出ることなど試される場面を極力回避する
◆ 自分に間違いはない、自分はいつも正しいと信じている。一種の無謬神話にすがっている
◆ 無意識のうちに弟に悪意を抱き、密かに仔細な攻撃を仕掛ける。たとえば自分からした約束をすっかり忘れる。これを何度も何度も繰り返す。なかったことを事実としていいふらす。これとはまた別に、自分にまつわる過去の記憶を捏造することもある
◆ ウソをつく。矛盾した言動のつじつまをウソで合わせようとする。それを追求するとまったくトンチンカンなことを猛烈な勢いで主張しはじめる。ウソはときとして質的にも量的にも思わず感嘆してしまうほど高度である。ほんとうに、渾身の、珠玉のウソというものをひねり出す。
*
で、遠慮なしにいわせていただくと、江角マキコはこんな私の姉とよく似ているのだろうと思うのである。江角マキコも姉と同様に長女で、3歳下に弟、9歳下に妹がいる。末が女の3人っ子というところまでウチと同じである。そして高校1年生で父親を亡くしている。江角マキコの弟は姉からさんざん攻撃されたはずである。
*
江角マキコのあの「私は正しい、私は間違っていない」という異様な強気は姉の無謬神話に共通する。そして、これもまたいつものうがち過ぎかもしれないけれども『週刊文春』がわざわざ江角マキコにインタビューしたのは、実はこうした事情をほのめかしたかったからではないか、と疑っているのである。
*
疑いついでに今回はもう一歩踏み込もう。江角マキコよりも1歳年上の夫・平野眞は、いまや実の弟と同様にカインコンプレックスからくる憎悪の対象になってしまっているのではないか。アタマが壊れているのだ。十分に起こり得る。そうすると「A氏」は崇拝の対象である父親の代替である。父親への崇拝は、カインコンプレックスにはつきものの傾向である。攻撃的性格も。
*
たぶん「A氏」とのあまりにもオープンな行動、たとえば自分の子どもと3人で出歩いたり食事をしたり家族ぐるみで旅行したりという行動も、コンプレックスから生まれた無意識の父親への承認欲求の表れだ見ることができるのである。
*
江角マキコと「A氏」との関係は、なんというのか江角マキコの側から見れば、現実を認識する力のときどきの歪みみたいなものと、つまりカインコンプレックスからくる狂気と依存と愛情とが絡み合っているものなのだろうと思う。
*
では、そんな私が8割型はウソだと判断する『女性セブン』のインタビューを、速報版である『NEWSポストセブン』(2017年1月26日配信)からご紹介しよう。以上に書いたところまでたどり着いて読むとかなり切ない。
*
—————————————————————————————
*
【江角マキコ 「実際は4時間、同席者いた」A氏との関係語る】
《女優の江角マキコ(50才)が1月23日、芸能界引退を発表した。その翌日に発売された『女性自身』では、実業家のA氏(51才)と不倫関係にあり、フジテレビ局員の夫・平野眞氏(51才)とはすでに別居中だと報じられた。記事によると、昨年12月中旬に、江角とA氏が自宅とは別のマンションで6時間にわたって過ごしたという。これが不倫の根拠というわけだが、江角はA氏との不倫関係を否定、さらにはこの報道が引退の理由ではないと本誌・女性セブンには語っている。
A氏には許諾詐欺事件に関わった過去がある。2016年8月、江角のほか、布袋寅泰(54才)、GACKT(43才)ら複数の有名人が出資者に名を連ねた総額113億円もの巨額投資詐欺事件で、コンサル会社の社長ら5人が逮捕された。うち1人がA氏だったのだ。
資産家として芸能界でもよく知られていたというA氏。インターナショナルスクールに強力なコネを持っており、芸能人が教育に関する相談をすることもあったという。
江角は2014年3月に古巣の事務所から独立すると、新設した個人事務所を前述のA氏所有のマンションの中に置いている。さらに同年8月の「落書き事件」以降、江角とA氏との仲は近づいていったとの証言もある。1月24日、本誌は江角に対するインタビューを実施。A氏との関係について、話を聞いた。
──A氏から投資の話が出たのはいつ頃ですか。
「4年前だったと思います」
──どういった事業で、どの程度の出資額だったのか。
「金融工学的な難しい話でしたが、間違いない投資だとうかがって。具体的な数字は言えません」
──A氏を信頼した背景には、彼の豪勢な生活ぶりや周囲の評価もありましたか。
「決してそういうことではありません。お子さんがいて、家族を大切にしている普通のかたで、人望も厚かった。正直、どういうお仕事をしているか詳しく知っていたわけではないんですが、家族と触れ合う中で信頼できるかただと思いました」
──自宅に行ったことも?
「知人の誕生日会とか、何度か行ったことがあります」
──2014年3月に個人事務所を設立した際、A氏の持つマンション内に本店を構えたのはなぜですか。
「所属事務所の社長もAさんと親しくしていた関係で、Aさんから“空き部屋があるから使っていいですよ”と。他に一室借りるとなれば費用も発生しますので、使わせていただくことになりました」
──2015年3月、A氏は関東財務局のホームページに、『無登録の金融商品取引業者』として実名が出た。信頼は揺るがなかった?
「その話を聞いた時は、さすがに心配になりました。お金の返済を求めて税理士と弁護士の先生に相談して、以降2年ほどは話し合いを続けています」
──詐欺事件とA氏の関連を知った後も密に会っていたのはなぜですか。
「弁護士の先生から返済してもらうために、“これまでの関係を保ちながら頻繁に会って返済の要求をするように”と助言されました。ご指導いただきながら、あえて以前より頻繁にお会いするようにしていました。
もちろん、自分の中で反省の気持ちはあります。芸能という狭い世界に身を置いていると、他の職業のかたと知り合う機会が少なく、世間知らずだったという面は否定できません。誰にも相談せず、閉鎖的に自分で投資を決めてしまった。それが全ての間違いでした」
──2014年8月の「落書き騒動」以降、A氏を一層頼るようになったという証言もあります。
「私は子供を私立小学校に入学させ、そのままエスカレーター式という環境にいたので、他の学校のことをあまり知らなかったんです。子供たちの今後の教育について悩んだとき、思い切ってインター教育に切り替えようと。その際、にインターに詳しい知人にお話を聞きましたが、Aさんもその1人で、信頼して相談していた部分はありました。
私、ずっと仕事をしてきて、つきあいが狭いんですね。飲み歩くこともないし、パーティーもほとんど顔も出してこなかった。限られた友人の中で学校のことも話せて、独身ではなくご家族があるかたで、インターのことも相談できる。そういうかたはAさんを含めて数少なかった」
──不倫報道の根拠になった昨年12月15日の「6時間密会」について教えてください。
「同席者もいましたし、正確には4時間で、返済を巡る話し合いをしていただけです。昨年冬ころから今年にかけて、特に返金を交渉するために必死でした。弁護士の先生からも言われて、週に2~3回はお会いしていたはずです。
面談中、終始返金の話しかしないというわけではないんです。友好的な雰囲気で話をするためにも世間話も含めていろいろとお話ししますので、長時間になることもあります。その後、私の運転でAさんを駅まで送りました。それだけの話です」
江角はA氏との関係はよき相談相手であり、詐欺事件以降もつきあいを続けたのは元来の信頼関係に加え、出資金の円滑な返済のために必要だったと強く主張した。》
*
—————————————————————————————
*
とりわけ、詐欺事件と「A氏」の関連を知った後も密に会っていたのはなぜか? という質問に対して
「弁護士の先生から返済してもらうために、“これまでの関係を保ちながら頻繁に会って返済の要求をするように”と助言されました。ご指導いただきながら、あえて以前より頻繁にお会いするようにしていました。」
と答えているのは弁護士からの指摘を待つまでもなく、たいへん奇妙な話である。
*
《この江角さんのインタビューに対して、弁護士で元裁判官の清原博氏は疑問を呈した。江角さんが面会した男性は、巨額詐欺事件で逮捕されて有罪となった人物であり、江角さんもその詐欺事件の被害者であることを指摘。もし江角さんが男性と親しかったとしても、他の被害者を差し置いて自分だけ返金してもらおうとするのは「不公平」だとした。
そのため清原氏は、江角さんの弁護士ならば、男性と距離を置き、弁護士が交渉を担当するとアドバイスするだろうと指摘。そして、弁護士の指示で男性に週2、3回会いに行くということは「あり得ない」と断言したのだった。
さらに清原氏によると、弁護士はクライアントとの守秘義務があるため、江角さんの発言に対して弁護士は反論できないとのこと。「江角さんはそれをわかっていて、弁護士をうまく利用して、自分の防波堤を築いているのかな」との仮説も立てていた。》(「バイキング」フジテレビ・2017年1月26日放送、引用元「トピックニュース」)
*
《ALG&Associatesの山岸純弁護士は、「詐欺事件の被害者が、加害者の『明日になれば返せる』といった言い分を信じ、藁にもすがりたい精神状態から、接触を繰り返すというケースはあり得ます」(同)というが、江角の代理人の“助言”に関しては、「(自身であれば、こうしたアドバイスをすることは)ないですね。相手が時間稼ぎをするための話が繰り返されるだけなので、早急に民事訴訟を提起したり、刑事告訴をお薦めします。(江角の代理人は)投資詐欺事件を担当した経験があまりないのかもしれません」と話す。》(「サイゾーウーマン」2017年1月26日配信)
*
また、2014年に個人事務所(「インクワイヤー」)を設立した際に「A氏」の持つマンション内に本店を構えた理由についてに出てきた「インクワイヤー」社長は、不倫疑惑が取沙汰された前後からまったく音信不通だという。(「サイゾーウーマン」2017年1月26日配信)
*
こんなふうに江角マキコはウソを平気で、しかも強気に並べ立てる。姉のようすを見たところでも、ウソをついているときは、本人自身それがウソだという認識が“入っていかない”雰囲気なのである。病んでいるのである。
*
こうした深刻なカインコンプレックスを抱え込んでしまった江角マキコはいってみれば被害者である。原因は母親の育て方にある。しかし母親としてはそういうふうに育てるのがあたりまえという社会規範のなかで育ってきて、母親の責任をまっとうするためにそうしてきたのである。責めるわけにはいかない。多くの場合カインコンプレックスに悪人はいないのである。被害者はいるけれども。
*
で、被害者のたとえば私としては姉と母親にまずカインコンプレックスを抱えているということを理解してもらわなければ先にすすめないのだけれども、それは母にとっては自分の子育てを否定されることにつながる話なのである。きわめて頑固な昔気質の女、とくにウチのおふくろがそれを認めるわけがない。たぶん江角マキコの母親もそうであろう。
*
そんなこんなで私は姉と母親と3人暮らしだった家を出ている。いつも怒ってばかり、しかもそれが空振りばかりではたまらない。まあ、江角マキコは早く自分の異状に気がつくことだ。子どものころからのことなのでたいへんだとは思うけれども。
*
姉? ウチの姉自身? 私に指摘されたときには自分の異状に気付きはするようだけれども“ときどきの歪み”がそれをいつかどこかへ押しやってしまうようだ。一度カウンセリングを受けてくれといっても絶対に聞こうとしないし。
*
ああ、ウチのようすについて2015年6月24日に書いたブログが出てきた。実際のお話なのでずいぶんと控えめに書いている。関係のあるところだけ抜き出しておこう。メンドくさい方はもちろん飛ばしていただいてけっこうである。
*
—————————————————————————————
※過去ブログからの転載部分は「*」を「★」に変更しています。
★
私の姉である。彼女が長女で次に生まれた私が長男、下に妹が1人いる。私にとって姉は、なにがというわけではないが、ずっとなにか嫌な感じの存在だった。
★
それを意識したのは私が高校に入ったあたりで、4歳違いの姉はそのときすでに働いていた。勉強が嫌だといって進学しなかったのである。とりあえず進学したってそんなに勉強なんかしなくていいのに、と私は不思議がったものだ。
★
「嫌な感じ」に実体があると確信したのは、自分なりに小さな出来事の積み重なりを整理した結果だ。あまり詳しくはムリだが、二、三さわりだけを書いておこう。
★
子どものころ夜中に私がわがままをいって母に果物を買いに行かせ、それを自分は分け与えてもらえなかったという、現実にはありえない姉の記憶がある。成長してからは、自分が用意するからと実家に昼食に呼んでおいて、当日、顔をあわせて挨拶をしたものの、そのまま出かけて帰ってこないことが何度かあった。電話で話していると辻褄があわなくなり、突然切ってしまうこともある。
★
これだけではよく理解してもらえないかもしれないが、姉には後になって自分でつくった記憶がいくつもあり、また直近の出来事(たとえば昼食の約束)でも完全に忘れてしまうことがある。
★
つけ加えれば、亡くなって約5年になる父への思いが徐々に高まり、私から見るとすで崇拝の域にまで達しているように見える。「父は私を可愛がって、よくいろいろなところへ連れていってくれた」などと親戚には話しているらしいが、忙しい父が子どもを連れて出歩くことなど、妹と私も含め、ほんとうにまったくなかったのである。これもつくられた記憶である。
★
で、つまり姉は自分が長女であったために、長男である私に較べて冷遇されたり、我慢を強いられたりしたと感じているのである。しかも私たちの両親は2人とも情が濃いほうではないので、子ども時代からあまりかまってもらえない、認めてもらえないという淋しさがあったことも想像できる。私も両親から直接ほめてもらったことは、いままでに1度もない。ほめられるようなことはなにひとつしていないが。
★
姉の、子ども時代のそんな“不遇”への恨みつらみへの復讐の刃は私に向けられているのである。私は無意識的に攻撃されていたわけである。嫌な感じの正体だ。
★
こうなると、食事に誘っておいて姿をくらますのは、あとになってつくりあげた記憶、「夜中の果物事件」への報復だと考えられなくもなく、そうすると私は非常に怖いのである。本人が無意識というのがことさら怖いのである。
★
しかも父が亡くなり母もめっきり老いてきた最近では、姉は無意識の攻撃にプラスして明確に悪意をもって私を陥れようとするようにもなってきた。いまは別の都市に住んでいる妹の、私に対する態度が急変したのは昨年の夏あたりである。私に関する情報は、妹へは私を除けば姉からしか入りようがない。
★
そして小さな事件が起こった。母が今年の冬に軽い脳梗塞を起こして倒れたのである。母と実家で2人暮らしの姉が運よく出勤前で電話をしてきてくれたものの、少々異様なことにうわごとのように「助けて、助けて」と何度も繰り返すだけなのだ。
★
これはと思い、とにかくすぐに救急車を呼ぶようにといって駆けつけたのだが、10分後くらいに到着したときにはまだ救急車を呼んでおらず、姉はただ部屋のなかをウロウロと歩き回っていたのである。
★
救急病院のロビーで姉は何度も「私がいてよかった」「私が後ろにいて支えられたからお母さんは頭を打たなくてよかった」と繰り返した。そのとき、ああ、認めてもらいたいのだな、とわかった。しかし、まだ母の応急の診断が下る前であり、いわれたとおり救急車をすぐに呼ばなかったことに腹を立ててもいたので、私は聞かないふりをしていた。
★
まだ先がある。幸いに母の脳梗塞は軽く、2週間程度の入院で回復した。その退院の前日、医師から退院許可が出たことを姉にメールしたところ、勤務中の時間帯であるにもかかわらず、折り返しの電話がきて「まだ都合が悪い」というのである。
★
都合が悪いといわれても、母が今日か明日かと待ち望んでいる退院であるし、おおよその日程はすでに告知されて、姉にも伝えてあったのである。おかしいと思いながらその旨を途中まで話しかけたとき姉はいきなり「わかったわかったわかった」と叫んで一方的に電話を切ったのである。たぶんまた無意識的に忘れてしまっていたのである。
★
その日、病院から自宅に戻り、またまたの腹立ちがひと段落してぼうっとしていたとき、私は思いついたのである。姉は自信がないのだ。徹底的に、救急車を呼ぶことすら躊躇するほど自分に自信がないのである。ふだんは強気でどちらかといえば人あたりもきついほうなので気づかなかったのだが、対外的な強気は自信のなさの裏返しであったのある。
★
高校卒業時に進学を選ばなかったのも入学試験が怖かったからだと思えば腑に落ちる。そういえば勤続20数年になるいまの職場でも登用試験を受けていないので、身分上は臨時職員のままで一応の所長代理である。姉が相当の年配になってもいまだ独身でいるのもそういうわけだろう。
★
おそらくは、とくに父親に認めてもらいたいばかりに失敗を極端に恐れて生きてきたのだろうと思う。私が長女のたいへんさみたいなことにさりげなく話を向けようとすると強く拒絶するのにも、本心を探られる気まずさとともに、自信のなさが影響しているのだ。
★
というわけで、いまのところ私には姉が無意識的に、あるいは意図的に仕掛けてくる嫌がらせへの根本的な対策がない。嫌がらせといってもたかが知れているし、その理由も把握できているのでいまはまだ気分的な余裕がある。しかしいつか自分を押さえられなくなるときがくるかもしれない。というか、すでにその気分はある。残酷な結末にならぬよう、距離を置いていようと思う。
—————————————————————————————
*
江角マキコは強いカインコンプレックスに囚われていて、1歳年上の夫・平野眞は実の弟の代役として憎悪の対象であり、「A氏」は崇拝する父親の代わりである。一見スゴい結論だけれども、お互いの家族を伴っての旅行の異様さもこれで解決がつく。それは夫・平野眞への攻撃、同時に「A氏」への承認欲求からくる成果品なのである。
*
残酷な話だけれども理解できないイヤなヤツが1人減ったことは私にとってグッドニュースである。しかしとくにウチの姉と私の場合は理解はできてもおそらくは決して改善されないだろう。子どもへの愛情の注ぎ方にはぜひご配慮を。長い文章にお付き合いいただいてありがとう。(了)