めずらしく忙しいのです。20日までにでっちあげてそのギャラを来月10日にふんだくれば年が越せるっつー仕事がありまして。しかしまだなーんにも手を着けておりません。ですから忙しいというのは気持だけですね、いまのところ。いつものことです。忙しいときほど能率はダウンします。
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でもってホラホラ。こんなときに限ってまたおもしろそうなものを見つけてしまうわけです。まずは「The 5.6.7.8 's」という日本のバンドです。なしていまごろになって? とおっしゃられましても、クエンティン・タランティーノ(55)の『KILL BILL』にハコバン役で出てたでしょ!! と責められましてもまーったく記憶にございません。なにしろ自分の結婚式すら微塵も覚えていないワタクシでございますから。
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ほんとうです。クスリのせいでもケガのせいでも、またあまりの悲惨に防衛機制がかかっているわけでもなく、どういうわけかほんとうに思い出せないことが山ほどあるのです。なので今回のような発見もあり、楽しいです。人生2度楽しいワタクシです。
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そういえばこのあいだも突然、道すがらのオジサマに「おお、あなたあのそば打ち教室の……」と声をかけられました。でも知らないオジサンに着いていってはダメなので笑って誤摩化しました。そば打ちに興味はまったくありませんけれども、そば打ちでナンパされかかることもう4、5回のワタクシです。忘れてしまったむかしにそば打ち教室でブイブイいわせていたことでもあったのでしょうか?
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「The 5.6.7.8 's」は基本的にスリーピースのガレージ(ガールズ)バンドです。なぜガールズがカッコに入っているかというと、1986年デビューだからです。今年で芸歴32年です。その音楽性は1989年に発表したファーストシングルのタイトルが「MOND GIRLS A GO-GO」ということからおおよそおわかりいただけるかと思います。ガレージ、パンク、ロカビリー、サーフみたいなところですね。歌謡曲や演歌の匂いがまったくしないのがスゴいです。
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きちんと説明するのがメンドくさいのでこんな書き方になってしまいました。申しわけございません。そういえばこのあいだ、近所の居酒屋のオヤジが「最近、筆が荒れてきたんじゃないのー」といって面と向かってヒヒヒッと笑ってくれましたよ。バカにしてりゃいいのよ。
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昭和61年デビューの「The 5.6.7.8 's」に平成も終了目前の30年に捕まってしまうのには、きっとなにか意味があるはずです。なんだろなー、と考えるまでもなく、「The 5.6.7.8 's」は怖いのです。
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「The 5.6.7.8 's」ご自身はインタビューで欧米で間違って解釈されている日本のイメージが好きだとおっしゃっていました。ポップスに反映されたものでいうとワンダジャクソンの「Fujiyama Mama」やアーサキットの「Sho-jo-ji」ですね。
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しかし欧米で間違って解釈されている日本のイメージとはおっしゃいますけれども、お三方のアピアランスはもうモロに終戦直後のGIバーのママサンです。ノースリーブのワンピースにちょっとビーハイブ気味に上げたおぐしだったり、だらしない着物だったり。それが芸歴32年の風雪に耐え、すっかり板についていらっしゃって怖いわけです。
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ほぼ治外法権の夜の街で毎晩毎晩、GI相手に命懸けで仕事をしてきたママサンですよ。YouTubeで拝見しただけですけれども圧倒されます。ああ、こういうところから野村沙知代(享年85)やメリー喜多川(91)は出てきたのだなあ、と思うと、女だてらに恫喝のひとつやふたつ、ウソのひとつやふたつ、どうってことはないという気持になります。
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どことなく近所の神社の納涼ステージに出てくる歌謡ショーの楽隊とか、パッパラー河合(57)が指導した北朝鮮のバンドみたいな感じもありますけれど。
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お、いま別府温泉の「ヒットパレードクラブ」という店でサンディという人が歌う「Fujiyama Mama」をYouTubeで見ましたけれど、上手いですねえ、この人。「音楽博物館ヒットパレードクラブ」っていうの? サンディ2もいるの? こりゃぜひ一度いってみにゃあなりませんのう。ああ、こうしてまた仕事の時間が削られていく。
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平成も終わろうとしている2018年における「The 5.6.7.8 's」の意味というのは、あなたちこういうところからはじまっていることを忘れてはいけませんよ!! なのでしょう。大日本帝国が滅び、日本国として仕切り直したふりをしてやってきた73年。いくら生々しさは消えたとはいえ戦前を美化するグロテスク、国民よりも国家の都合を優先させる倒錯はもういかがなものか、と。
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今年のNHK紅白歌合戦にはぜひ「The 5.6.7.8 's」に出ていただきたい。そしてついこのあいだまでの敵性音楽をジャカジャカとかき鳴らし踊り狂っていただきたい。でもって海外ツアーと同じようにママサンイングリッシュでおおいに客席を煽っていただきたい。戦後の73年がいかに儚い、虚ろなものだったかが実感されるでしょう。ワタクシたちはなにを夢見てなにを勝ち取ったのでしょう?
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大日本帝国はある意味、進駐軍によって“解放”されましたけれども、いまワタクシたちがいつまで待っても進駐軍はきません。いろいろなことに頬っ被りして見て見ぬふりを決め込むのは止めて、そろそろ地に足を着けて歩いていきましょうよ。っつーことではないか、と思います。
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もうひとつ見つけたのはコレ(↓)。
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◆『日刊スポーツ』2018年8月5日配信
【村上春樹氏が初ラジオDJ挑戦/オンエア楽曲一覧】
《 作家の村上春樹氏(69)がディスクジョッキー(DJ)に初挑戦した「村上RADIO(レディオ)~RUN&SONGS~」が5日夜、TOKYO FMなど全国38局で放送された。 自身で選んだ楽曲とともに、「走る」「音楽」を軸に、普段なかなか接することができない素顔を、時に軽妙な語りを交えながら披露した。 村上氏が選曲した音楽のは、次の通り(曲名、歌唱者の順。一部フレーズ、フルコーラスを含む)
◆ ◆ ◆
<1>「マディソン・タイム」 ドナルド・フェイゲン、ジェフ・ヤング&ザ・ヤングスターズ。
<2>「ヨーホー、ハイホー、口笛吹いていこう」(ディズニー関連の曲を集めたアルバムの中の1曲) ブライアン・ウィルソン
<3>「サーフィンU・S・A」 ビーチ・ボーイズ
<4>「D・B・ブルース」キング・プレジャー
<5>「スカイパイロット」 エリック・バードン&ジ・アニマルズ
<6>「マイウェイ」 アレサ・フランクリン
<7>「サバービア」 ペット ショップ ボーイズ
<8>「セプテンバー」 アース ウィンド&ファイア
<9>「ワット ア ワンダフル ワールド(このすばらしき世界)」 ジョーイ・ラモーン
<10>「ビトウィーン ザ デビル アンド ザ ディープ ブルー シー(絶体絶命)」 ジョージ・ハリスン
<11>「ノッキン オン ヘブンズ ドア(天国への扉)」 ベン・シドラン
<12>「ラブ・トレイン」 ホール&オーツ
<13>「ライト マイ ファイア」 ヘルムート・ツァハリアス》
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もう、ね。英語がカッコイイと思っているのか知りませんけれども「村上RADIO(レディオ)~RUN & SONGS~」というタイトルの眠たさはいったいなんなのでしょう。自分のアタマでモノを考えない敗戦国の哀愁すら感じてしまいます。
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でもって選曲がまたまったく見事に無味無臭。全体として地金がバレないように慎重に散らして選んでいることがわかります。また、各曲ごとにも際立った主張をもつものはありません。そんなに恥ずかしいんなら出てくんなよ。「The 5.6.7.8 's」なんて「アイムブルーウ、ウーウー、ドベドベドウー」だよ。少しは見ならえ。
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1949年生まれ、69歳の村上春樹はこんなふうにカッコばかりに気をつかって戦後ほとんどの時間を生きてきたっつーことです。その意味では現代の日本をもっともよく代表する作家といえるでしょう。
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イケイケ「The 5.6.7.8 's」!!(了)
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