2015年5月15日金曜日

お喋りは楽しい話題を


口を開けばほとんど必ずといっていいほど
テレビで観た嫌な事件や暗いニュース
街ですれ違った人たちの悪口なんかを
喋りだす人が仕事先にいる

他人の不幸は蜜の味 なんて
笑い飛ばせているうちはよいのだけれど
気力体力が落ち込んでいるときには
これが意外なほどこたえる

なにか禍々しいもの 災いが
こちらにも伝染してくるような
そんな不吉な
ざわざわとした感じになってくる

そういう話は止めてくださいといえればいいのだが
その人も悪気があって喋っているわけでもなく
なにか親切心のようなお節介な気持からのようなので
あまりむげに遮るわけにもいかない

でも 話を聞いてあげると
またたびたびその人はやってきて いやな話をする
きっといやな話というものは
それ自体が人から人へ伝染していく
困った性質をもっているのだ

だからその人にではなく
そのいやな話にいい聞かせるつもりで
ごめんね そういう悲しくなるお話も
楽しくてよいお話になれればいいね
といってみた

その人は一瞬けげんな顔をして
それからつくり笑いを浮かべて去っていった
どう受け取られたかは知らないけれど
それ以来 いやな話をしにくることはなくなった

会うたびに笑って挨拶はする   (了)



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