お喋りは楽しい話題を
口を開けばほとんど必ずといっていいほど
テレビで観た嫌な事件や暗いニュース
街ですれ違った人たちの悪口なんかを
喋りだす人が仕事先にいる
他人の不幸は蜜の味 なんて
笑い飛ばせているうちはよいのだけれど
気力体力が落ち込んでいるときには
これが意外なほどこたえる
なにか禍々しいもの 災いが
こちらにも伝染してくるような
そんな不吉な
ざわざわとした感じになってくる
そういう話は止めてくださいといえればいいのだが
その人も悪気があって喋っているわけでもなく
なにか親切心のようなお節介な気持からのようなので
あまりむげに遮るわけにもいかない
でも 話を聞いてあげると
またたびたびその人はやってきて いやな話をする
きっといやな話というものは
それ自体が人から人へ伝染していく
困った性質をもっているのだ
だからその人にではなく
そのいやな話にいい聞かせるつもりで
ごめんね そういう悲しくなるお話も
楽しくてよいお話になれればいいね
といってみた
その人は一瞬けげんな顔をして
それからつくり笑いを浮かべて去っていった
どう受け取られたかは知らないけれど
それ以来 いやな話をしにくることはなくなった
会うたびに笑って挨拶はする (了)
0 件のコメント:
コメントを投稿