恋ごころについて
恋をすると心を包むガラスが薄くなる
薄いガラスはゆらゆらと揺れ動き
かすかな予感にも震えて響く
いつもは聴こえなかった音
いつもは気づかなかった光
いつもは見えなかった色彩
いつもは感じなかった風
世界は刺激に満ちあふれ
喜びと千々に屈折する予感とで
心は一瞬も休むひまがない
幸福や不安な気持が
信じられないほどの強さで押し寄せ
そして引いていく
昨日まではなんの疑いもなく
そこに確かにあり続けていた町並みや
空や太陽までもが
急に自信なげで頼りなく見える
恋を失った哀しみを
こり世の終わりだと歌った
古い流行歌のほんとうの意味が
突然 目の前に
黒々とした森のように立ち現れる
眠れない夜は永遠に長く
追いかけるべき悩みは果てしなく広い
そして 恋をするときでさえ
人は独りだと知る
恋をすると心を包むガラスが薄くなる
薄いガラスはゆらゆらと揺れ動き
かすかな予感にも震えて響く
いつもは聴こえなかった音
いつもは気づかなかった光
いつもは見えなかった色彩
いつもは感じなかった風
もしこの心が砕けてしまうのなら
その前に たった一瞬でも
薄いガラスに映った
あの日の自分の姿に会いたい (了)
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