大阪府門真市で2016年10月19日、侵入してきた男に刺されるなどして家族4人が死傷する事件が起きた。門真市といえば昨年12月29日に殺人、死体遺棄・損壊事件が起こっている。いわゆるバラバラ殺人事件である。この2つの事件が起こった現場を地図で確認すると、直線距離で1.5㎞も離れていない。
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さらに家族4人死傷事件で逮捕された容疑者は現場近くに住んでいたし、バラバラ殺人事件では、遺体の一部が隠されていた第2の現場が、これもまたすぐ近くにある。近隣にお住まいの方々の不安はたいへんなものであろうとお察し申し上げる。
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それで思い出したというわけでもないのであるけれども、私の住んでいる街でも最近、不可解で不気味な現象が起きているのである。昼食の時間帯になると毎日、南の方角から60代〜70代とおぼしきオバサンたちがゾロゾロと現れるのである。
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みなさん測ったように150㎝台前半とおぼしき低身長で、小太り。リュックあるいは大きな手提げバックを携えている。身なりはそれほど裕福そうには見えない。そしてみなさん、たいへん申しわけないけれども、正直申し上げてなにを考えているのかちょっとわからないくらいのブスなのである。
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オバさんたちは例外なく4人連れか5人連れで、歩道に横に広がりさかんに何事かを喋り合いながらやってくる。よく見るとシワがなんとなく楽しそうにも見える。ただやはり、近くまで迫っているそうしたオバサンたちの集団にふと気付いたときには少しギョっとするのである。
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あっちにもオバサン、こっちにもオバサン。あんなオバサンやこんなオバサンにもたぶん旦那さんや子どもさんがいて、毎日飯を食い、テレビを見、口喧嘩なんかもして夜になったら寝て、ということを繰り返しているのだと思うと、いささか気が遠くなりかけたりもするのである。
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で、あるとき、意を決してそのオバさんたちがどこからやってくるのかを突き止めることにしたのである。オバサンたちを引き寄せる吸引力の正体を、この目で確認してやるのである。いやいやオバサンたちは引き寄せられているとは限らないのである。逆になにかから放出されているかもしれないのである。空飛ぶ円盤だったらスゴいだろうなあ。
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というわけで、ある日のお昼時、歩道を流れてくるオバサンたちの群れに逆らって南へ向かったのである。南の方角はほぼ住宅街で、道なりにどこまでも進むと市の境界になっている山々に行き当たる。もちろんオバサンたちがそんなに遠く山の向うから歩いてくるとは考えられないので、住宅街のなかに何かがあるはずなのである。しかし記憶にはない。
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ほどなく、気のせいなのかもしれないけれども、奇妙なことに気がついたのである。オバサンたち、ほとんどこちらの顔を見ないのである。ふつう仲間と歩道をほぼ占領するように歩いていて正面から誰かがやってくれば、まずは顔を見て会釈のひとつもしつつ進路を譲り合うものだと思うのだけれども、こちらに顔を向けさえしないのである。しかしだからといって進路を塞ぐわけでもなく、するりと通り抜けていく。
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ほどなく、オバサンたちは100mほど先のピザハットと理容室アダムとのあいだの小路から出てきていることがわかった。で、その角までいってようやく確認できたのであるけれども、いま歩いてきた表通りから30mほど入ったところに、まったく気づかないあいだに地区の文化センターが新築されていたのである。せっかく区民向けの月報を配布してくれているのにロクに目を通していないのでこんなことになるのである。ピンク色の外壁がオバちゃんたちにまったく似合わないのである。
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なるほど、玄関ホールの奥に掲出されている予定表によると、大小の体育館、いくつかの実習室、和室、会議室それぞれで、いわゆる文化教室が開かれているのであった。小さなオバサンたちは、それぞれどこかの教室に所属しているのである。置いてあったチラシによると、ほとんどの教室が無料なのである。週に何度も利用しているオバサンもいるに違いない。
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疑問は解決、不安は解消したのである。ふむ。しかし、である。オジサンたちはどこへいったのであろう? ここまでまったく出会わなかったオジサンたちは、オバサンが地区の文化センターで習いごとに興じているあいだ、いったいどこでなにをしているのであろう? お家でテレビか病院の待合室か、それともどこかの公園のベンチか。
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それにオバサンのなかにも人付き合いが苦手、嫌い、という人もいるはずである。そういうオバサンもまたお家でテレビか病院の待合室か、それともどこかの公園のベンチか、はたまたスーパーか百貨店か、なのであろうか?
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そんなことを考えていると、なんというのか、地区の文化センターに通っているオバサンたちも含め、とても孤独な印象を抱いてしまうのである。たぶん勝手な思い込み、センチメンタリズムであろう。きっと私の将来は行き倒れ、正確には行旅死亡人に違いないと思っているのでそう感じるのだ。
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いや、それにしても、漠然とした話が延々で恐縮だけれども、いまの世の中、生活や時間の厚みが薄過ぎるのではないか、と思うのである。人と人との因果というものが、わずかな糸でしか繋がっていないような気がする。かつてそれは縦に横に織り合わさって1枚の分厚い布のように広がっていたはずである。それは面倒くさくてうるさくてうっとうしくて、あまり居心地のいいものではなかったりするけれども、人間はそういうなかで生きるもののように思うのである。人のことはいえないけれども。
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門真市で、おそらくは面識もない一家4人を死傷させた24歳の男は16歳ごろから自宅にひきこもっていたという。その事件の前日の18日、千葉県浦安市で男女3人に無差別に斬りつけて逮捕された32歳の女にも通院歴があり、事件を起こした日の朝には、血が付着したタオルの写真とともに以下の文章をアップしていた。
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「リストカットとか云うヤツですか…。アレ、ヤっちゃいました。だって、仕方ないじゃないですか。誰かに当たって逮捕されるより、物を壊して後悔するより、自分傷付けた方が、一番平穏なんですよ」(「東スポWeb」2016年10月19日配信)
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あまりに薄く、脆く、寒々しい。あんなオバサンやこんなオバサンにもたぶん旦那さんや子どもさんがいて、毎日飯を食い、テレビを見、口喧嘩なんかもして夜になったら寝て、ということを繰り返しているのだと思うと、いささか気が遠くなりかけたりもする、などとエラそうに斜に構えていてはいけないのである。生活と時間に厚みを。
犠牲になられた方々のご冥福、一日も早いご回復をお祈りする。(了)
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