毎年、秋から年の暮れにかけてはさまざまな賞が発表される。国内では主なところ10月17日に世界文化賞(高松宮殿下記念世界文化賞)授賞式が行われ、11月3日には文化勲章の宮中親授式も行われる予定だ。こういう大きな文化賞の話題に接するたび、文化と革新と権威というソリの合わないもの同士を無理矢理ひとくくりにしているようで居心地が悪くなる。
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まあ、今回はオレンジ色のおかっぱアタマでインタビューに現れたフザけた出川哲朗(52)、もとい文化勲章受賞者、草間彌生(87)が、そんな不快感を宥和してくれる救いの女神だったわけである。まあ、この人ほど“アメリカで芸術家として生きること”を忠実に演じている人はいない、と私は思う。
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その文化と革新と権威の三つ巴のあいだを実に巧みにすり抜けたのがボブ・ディランであった。御年75歳、ダテにトシをとっていないというかタヌキジジイというか、天晴である。まだ20代の頃、つまり約半世紀前に早くも「イメージが大切」だと語っていたといわれる、その面目躍如である。
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振り返るとボブ・ディランのノーベル文学賞受賞が決まったのは10月13日であった。同日ボブ・ディランはラスベガスでコンサートを開いたのだけれども、受賞についてのコメントは一切なし。その後も沈黙を貫き通して、ようやく28日になって、英紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)のインタビューのなかで、今年のノーベル文学賞(Nobel Prize in Literature)受賞者に選ばれたことに言及したのである。
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ボブ・ディランは「信じられない」「素晴らしいことだ。こんなことを夢見る人がいるか?」と語り、12月10日にストックホルム(Stockholm)で行われる授賞式への出席の意向を問われると「もちろん、できることなら」と答えた、らしい。(「 AFPBB News/AFP時事」2016年10月29日配信)
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しかし受賞決定からコメントの発表までのほぼ2週間、なんのアクションもしていなかったというわけではない。21日には自身の公式サイトから「ノーベル文学賞受賞」という表記を消していたのである。まあ、これは気を利かせたつもりの、しかしカンの鈍いスタッフの仕業だろうと思う。とはいえ時期が時期だけに辞退するつもりなのだろうか? というような憶測を呼んだわけである。雲隠れ作戦はさらに効果を発揮する。
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スウェーデン・アカデミーは17日、ボブ・ディランへの直接の授賞連絡を断念したことを明らかにし、事態を静観していた。けれどもついにこの21日になって業を煮やした選考委員、ペール・ベストベリィが、ボブ・ディランは「無礼で傲慢だ」と苦言を呈してしまったのである。
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もちろん、勝手に授与すると発表しておいて連絡が取れないからと非難するとは「無礼で傲慢」なのはどちらだ、というお話の展開になったのである。そこで「無礼で傲慢だ」というのは個人の意見であってスウェーデン・アカデミーの見解ではない、という公式の発表までなされた。
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こうしてボブ・ディランは自身の革新、反権力というイメージを損なうことなくノーベル文学賞を受賞することに成功したのである。見事である。それにひきかえ、というか較べることさえ気が引けるのではあるけれども、ボブ・ディランに大きな影響を受けたということになっている吉田拓郎(70)のつまらなさである。『スポニチアネックス』(2016年10月28日配信)によると、ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞について以下のように語ったらしい。
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「彼がえんび服を着て賞をもらうのが想像できない。僕はレコード大賞にジーンズを着て出てひんしゅくを買ったことがあるけど、彼もディラン的なファッションで出たら格好いいと思う」
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「ディラン的なファッション」の段階でアウトである。ボブ・ディランはいわゆるファッションとして衣服を選ぶ場所にはいないのである。格好いいとか格好わるいというのも大きなお世話だろう。というか、この吉田拓郎の上から目線のものいいの無神経さには呆れる。バカなのか?
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こちらはバカではないのであろうけれども、つまらなかったのが10月25日(現地時間)、レジオン・ドヌール勲章叙勲式での北野武(69)であった。テレビニュースで見たけれども、これまでにないほど激しく緊張しているようすがありありであった。で、叙勲後のコメントも恭順そのものである。
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「こんな素晴らしい賞を頂いて感激です。ここにいられないほど恥ずかしい褒め言葉を頂いてどうしていいかわかりませんが……(笑)、自分がいろいろなジャンルの垣根を超えたと言われますが、本当のところは超えようとして超えられず引っかかっているところで、この受章でまた新しいジャンル、違うジャンルでも活躍できるようにと、力をもらったような気がします。本当に感謝しています」(「映画.com」2016年10月26日)
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いくら「レジオン・ドヌール勲章」がフランスで民間人に与えられる最高の国家勲章という格のあるものだとしても、もう少しなにかなかったのか、と思うのである。INとOUTを巧みに使い分けるのが北野武/ビートたけしの自己イメージ管理術であって、今回は思い切りINに入ってみました、というところなのであろう。
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それはわかるのである。わかるのではあるけれども、もうそろそろそれもマンネリ、手詰まり感がいなめないのである。ジャンルの垣根を超えるとか新しいジャンルをつくるとかの前に、古びてしまった自分自身のIN & OUTの戦略を脱ぎ捨てるべきだと私は思う。
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で、賞といえばたいへんなことであるはずなのにほとんど誰にも見向きもされない「レコード大賞1億円買収疑惑」である。10月26日発売の『週刊文春』が、バーニングプロダクションからLDHにあてた1億円の請求書の写しの写真つきでスクープしている。
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買収の対象になったとされるのは、昨年、2015年のレコード大賞である。受賞曲は、三代目 J Soul Brothersによる「Unfair World」であった。オリコン年間シングルランキングでは31位という、それほどたいしたことのない曲である。立派なのは「Unfair World」というつけもつけたりのタイトルだけである。
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『週刊文春』はこれを記事にするにあたって、LDH代表取締役のHIROあてに質問状を送っていたのだそうである。HIROの手元に届いたのは10月21日とされている(「LITERA」2016年10月29日配信)。で、23日に突如として発表されたHIROのLDH代表取締役退任につながっていくのである。
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まあまあ、なんといえばいいのか、いまにも倒壊しそうな古い建物の楽屋裏でグニョグニョと薄汚い駆け引きが行われていたわけである。ご苦労さまである。あと数年もすればレコード大賞は消滅し、近年のレコード大賞を受賞したことは黒歴史でしかなくなるというのに。1億円? やっすーい!! と思っていたけれども、そう考えると1億円でも高いくらいな気がしてくる。そういう私は500円でお金持ち気分になれる小学生並みの人生である。
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で、マスコミの目をくらますための工作が行われたらしいのである。それがスクープを掲載した『週刊文春』と同日発売の「女性セブン」(10月26日発売/11月10日号)の「上戸彩『HIROと娘と』初めての昼下がり撮」という記事である。『LITERA』からご紹介しよう。
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《しかし、そこに掲載された家族スリーショットは、かなり不自然なものだ。長女を抱くHIRO。そこにおどけたように手を開いて駆け寄る上戸。また別のカットではカメラ目線で長女を抱くHIROに、まるでグラビア撮影のように微笑んで娘を見つめ、HIROに腕を絡める上戸の姿が収められている。
通常の散歩や外出ならバギーや抱っこ紐があってもいいと思うのだが、それらもすべてなし。しかも、マンションから出て車に乗るまでの写真というのだが、芸能人が公衆の面前に姿をさらすような車への乗り方をするはずがないだろう。
とにかく誰が見てもわざわざ撮り下ろししたとしか思えない写真なのだが、調べてみると、この記事もレコ大疑惑から少しでも話題を逸らそうとするHIROが仕掛けたものだった。
「21日に『文春』からの取材を受けて、レコ大疑惑について取材されていることを察知したHIRO、そしてバーニング・エイベックスがセブンにもちかけたようです。同日発売の『文春』にぶつけて、話題をそらすため、セブンは校了直前に“やらせ”撮影をして、急遽、記事をつっこんだようです。そのため、グラビアには間に合わずモノクロのみ、代わりにネットニュースでカラー写真を大々的にばらまいています」(週刊誌記者)
芸能界とはズブズブ、とくにバーニング系とは完全に癒着構造にある「セブン」がその意図を組んで、カウンター記事をやるのは今更驚かないが、呆れ果てるのはHIROが自分のスキャンダル潰しのために、妻である上戸彩を利用したことだろう。いや、上戸だけではない。HIROはこれまで決してメディアに公開しなかった娘まで使ったのだ。自分の不祥事を隠し、保身のために家族を利用するというのは、どういう神経をしているのか》
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厳しいのう『LITERA』。そういえばこのところ、厄介だけれども素晴しいもの、だとかなんとか、「家族」の二律背反的なありかたがさかんに取沙汰されているのである。HIROんちもヤバくなったら一蓮托生&一心同体であり、調子がよくなったらお互いにあまり束縛し合わないように、という感じなのであろう。めずらしくもない話ではあるけれども。
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この件に関しては、とにかく最低限、誰も死なず怪我もせずに落着してほしい、と思う。マジで。2005年の12月には、当時日本レコード大賞の審査委員長だった阿子島たけし(享年65)の自宅が全焼し、不可解なことに3日後になってから、その焼け跡で遺体が発見されるという事件が起こっているのである。しかも司法解剖の結果、煙を吸い込んだ形跡なし。
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この年のレコード大賞はEXILEに大賞を獲らせるかどうかで大手芸能プロ同士が水面下で綱引きをしていたといわれている。審査委員長の阿子島たけしも、そこに巻き込まれていたのかもしれない。
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《「業界関係者との金銭授受があった」「阿子島はレコ大委員長を辞めろ」などという阿子島への怪文書が出回るようになる。怪文書はプロダクション担当者で構成される「音楽業界有志一同」名で、辞任勧告文書であった。阿子島は怪文書について、「全く根も葉もないこととまで言わないが、事実関係を捻じ曲げている」「出した人間は分かっている。詳しいことは後日話す」とコメントしていた》(Wikipedia「阿子島たけし」の項)
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1億円を支払ったとか買収したとかくらいならまだしも、命まで落してしまってはお話にならない。心に思い当たりのあるレコード大賞関連、および周囲の方々には、一刻も早い逃亡をオススメする。
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ちなみに2005年のレコード大賞は倖田來未の「Butterfly」(オリコン年間シングルランキング85位)であり、EXILEはまったくなにも受賞できていない。それから11年、なんだかいろいろなものが落ちていく2016年の暮れである。(了)
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