2015年4月11日土曜日

結婚時間


この人と と固く決意をし
結ばれて一緒に暮らす
二人の毎日がはじまる
そのときから
ぼんやりとした夢でできていた霧が
ゆっくりと風に追い払われていく
現実が少しづつゴツゴツとした姿を現わす

いつまでも同じように
愛情が続くとは限らない
よいときもあれば悪いときもある
一生は長いのだ

わかっていたのに
現実になって目の前に立ちはだかると
こんなはずではなかったと戸惑う
そのとき自分がなにをどう感じるのかまでは
わかっていなかったから

それからは
ときに驚き 幻滅し 疲れて
後ろを振り向くこともある
パートナー同士であること以外に
小さな慰めや喜びを見出したり
忘れようと努めたりするようになる

別に誰にいわれてはじめたことでもない
すべては自分たちの意志で動いたのだ
簡単に途中で投げ出すわけにはいかない
ただそれだけがそこにいる理由になる
愛情は焦りに 諦めに 無関心にかわり
ただ淡々と季節が過ぎるのを望むようになる

皮肉やいい争い
お互いを傷つけあうだけの喧嘩もして
愚痴をいい 溜め息をつき
ただその日いち日をやり過ごす

ささやかな喜びがあった日は
笑いあい 乾杯をし 写真を撮り
こうして自分も少しつづ年をとっていくのだと
もう若くはないのだと お互いの顔を見る

そうして長い長い年月が経って
砂漠の中の一粒の砂のようなある瞬間に
ふと ここが自分の場所なのだと気づく
もしあのとき とか
たとえばあんなふうに とか
そんな自分以外のなにものかと較べようもない
自分だけの居場所なのだと気づく

辛く不恰好な時間の果てで得たものがそれである
そこでしか出会えない自分やパートナーや家族
シアワセといえばシアワセだし
こんなものかといえばこんなもの

だから結婚なんて
誰としても同じというのも正しいし
また本当に真剣になって考え抜かなければ
というのもまったく正しい
時間に身を捧げるのはあなただ

ただ いつもどんなときであっても
誰かのせいにだけはしてはいけない
その瞬間にそれはあなたの人生ではなくなる       (了)



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