地球規模で見れば人口は爆発的に増え続け、資源は持続可能なレベルを５割も上回るペースで消費され続けている。地球が養える限界は約100億人とざっくりいわれているけれども、2055年にはそのレッドラインを超える。深刻な食料危機が目前に迫っている。
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というようなことが10年ほど前にはさんざんいわれたものだけれども、最近とんと耳に届かなくなってしまった。すっかり飽きてしまったのか、それともいつかどこかでなにかが起きて大量死する、と希望的な観測を抱いているのか、諦めたのか。まあ、ほんとうに「死ぬのは他人ばかり」でノンキなものだ。
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しかし人は増える、資源は減る、と考えれば、その増えた人間を資源化できないだろうかと考えるのはごく自然ななりゆきのように思われる。資源といっても“人材”とかなんとかいうことではなくて、その体をブツとして役に立てられないか、ということだ。
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もっとも単純な方法はカニバリズムだろう。人が増える＝食いものが増える。こんな素晴しいことはない。たとえば日本の年間死亡者数は136万9000人（厚生労働省・2018年推計値）だからずいぶん食卓は潤うだろう。それだけの肉が新たに供給されることになれば飼料のための広大な耕作地も不要になり、生産国の環境回復にも寄与する。
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しかし倫理的にも感覚的にもそれはとてもムリっちゅーことで、そんなとんでもないこと、と一笑に付されて終わる。
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だがしかし、飢餓の危機感はやはりヒタヒタと迫っているようで、最近はカニバリズムをイメージさせるものがやたら目につく。映画のゾンビものとか内容は違えど「膵臓を食べたいと思った」とかいうタイトル、『進撃の巨人』なんていうのもあった。
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まあ、意図的につくられていく格差社会というのもたいへん迂回したカタチでのカニバリズムということができなくもない。
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というようなことを考えていたらついに出てきましたね。人の体を資源として活用しようという法律。↓
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◆『CNN.co.jp』2019年4月21日配信
【人間の遺体の堆肥化認める、法案が通過 米ワシントン州】
《 （ＣＮＮ）米ワシントン州の州議会で２１日までに、人間の遺体の堆肥（たいひ）化を認める法案が可決された。ジェイ・インズリー州知事が署名すれば来年５月１日に発効する。
同州では死去した住民らの埋葬は火葬もしくは土葬が普通。州議会のジェイミー・ペダーセン上院議員が起草した新法は、人間の遺体を土に早く変容させる方法などと表現した。
同議員は万人に通じる経験に一定の技術の適用を認める時機が来たと主張。「人間は自ら好む方法で自らの遺体を処理させる決定が下せる自由を持つべき」とし、「環境により優しくより安全な遺体の処理方法が一部ある」と続けた。
堆肥化の埋葬方法を手がける企業「Recompose」のカトリーナ・スペード最高経営責任者（CEO）はCNNの系列局「KIRO―TV」の取材に、堆肥化のための最初の施設を建設することを期待。
堆肥化については「遺体をわらや木片などの自然の材料で包む。約３～７週間すれば微生物の活動の効果で土に変質する」と述べた。
遺族は施設を訪れ故人の遺体だった土を最終的に受け取ることも可能とし、その利用方法は遺族次第と説明。不要なら、同社が地元の保存団体と協力し、州内の土地を育てることに使われる方法もあるとした。
KIRO―TVによると、埋葬に必要な平均費用は8000ドル（約89万6000円）から２万5000ドルの間で、火葬は6000ドル超。スペードCEOは堆肥化の埋葬方法は約5500ドルと想定している。
環境対策上の側面から人間の遺体の堆肥化を支持する女性は取材に、この問題を話し合った兄弟が「素晴らしいね。あなたは私にトマトを植えることが出来るわけだ」と語ったとも明かした。》
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すでに人体の堆肥化を事業にしようという企業まであるわけか。しかしここで議論されている堆肥化は弔いの一方法としての提案のようだ。人体を提供する側が5500ドル（約60万円）も支払うのだ。お金持ちの、しかもたいへん趣味の悪い酔狂でしかない。
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だがしかし、人体を堆肥化してそれで農作物を育て食料にすればなかなか見事な循環が生まれる。消却してエネルギーをムダにし、２酸化炭素を吐き出すよりずっといい。しかし人体からつくった堆肥を直接畑に撒く方法だと抵抗があるかもしれない。そこで植物が吸収できる化学物質レベルまで分解してから畑に撒く、とかなんとかいってそれをやわらげる。
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あるいは堆肥化に頼らず豚のエサにして豚を育てその豚を人が食べるという方法もある。まあしかしこれはホラー映画の世界か。
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人体の資源化。悪夢ではあるけれども、たとえば人権がいともたやすく侵害・略奪されている国においては将来にわたってもそんなことは絶対に起こりない、とはいいきれないと私は思う。ああ、怖い。けれどもそうなって、外国から日本人の堆肥、またはエサは放射能汚染の危険があるので輸入禁止、なんてことをいわれたりしたら笑うなあ。きっと。（了）
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