2016年6月10日金曜日

すみません。史上最汚の記事です。読まないほうがいいかも



連日、批判と嘲笑と悪罵を浴び続けている東京都知事、舛添要一(67)である。『羽鳥慎一モーニングショー』(「テレビ朝日」2016年5月26日放送)では、九州の高校時代の同級生という男が出てきて、「友人が汲み取り式のトイレに落としたお札を素手で拾い、川に入って洗っていた」という話までしていた。



!!!!! 厳重にお断りしておきます。ここから先にはたいへん汚い話が満載です。苦手なかた、お食事前のかたなどは、絶対に閲覧をお控えください。もし万一、当記事をお読みになって体調不良や気分の不快を訴えられましても、当方としては一切の責任を負いかねます。よろしくご了承ください。!!!!!




トイレに落としたお札の話は、金に汚い舛添、のイメージなのだろう。しかしこの場合、ネコババしたのではないらしいので、美談なのである。汚いのは金のほうで、それを拾い、洗ってまでやっている舛添要一は、親切で心やさしい男なのである。あえてサウンドバイツふうにいえば、金に汚いのではなく、金が汚い舛添要一なのである。



しかも、むかしはトイレ、というか便所にモノを落としてしまうことはよくあったのである。なにしろ便器からまっすぐ下が便槽なので、落ちる落ちる、ポトポト落ちる。財布、定期入れ、メガネにハンカチ、万年筆、果ては履いていたはずのトイレのスリッパまで。ああ、そういえば年に数回の汲み取り作業のあと、それらを回収して歩く専門の業者がいるとかいないとかいう話もあった。



うーん、と。トイレが汚い、糞尿が汚い、という話になると必ず出てくるのが、なにをいっておるのだ、糞尿も大切な資源ではないか、むかしは「汚穢屋」という人たちがいて、各世帯から回収したそれを下肥として売っていたのだ、いまだって化学農薬と下肥とどちらが健康と環境にいいかと較べれば、ダンゼン下肥だろう、とかなんとかいうお話である。



ちなみに、人糞をそのまま畑などに撒くことは現在では法律で禁じられている、というふうに信じられているけれども、実際にはそうではなくて、条件さえ整えればオーケーなのである。人糞オーケー。しかもその条件というのもそれほど厳しくはない。撒きたい方はぜひ調べていただきたい。



うーん、と。昭和40年代には、まだ「清浄野菜」という言葉があったのである。つまり下肥を使わず化学肥料で育てた野菜、という意味である。それが特別な価値をもっていたのである。あと、収穫したキャベツにチリ紙が貼り付いていた、という話も聞いたことがある。



うーん、と。よし、わかった。こうなったら汚い話を列挙しておこう。まずは「汚穢屋」の話である。江戸時代は江戸の都市部で出た糞尿を農村地帯に下肥となるべく還元していたのである。なにしろ、江戸はリサイクル都市なのである。



つまり糞尿は商品であった。するとそれを水増ししてごまかそうとする悪い輩も出てくる。で、取引に際しては、指をつっこみ舐めてその品質を確かめていたのである。ふつうに行われていたことである。



話はさらに逸れる。ナマケモノという動物がいて、彼らは一生のほとんどを樹上で過ごす。で、1日6〜8gほどの木の葉を食べる。体重が成獣で8kg程度あるから、驚くほどの小食である。しかし小食でも、とうぜんウンチはする。ウンチはナマケモノがすんでいる樹の根本に落ち、やがて分解されてその樹の肥料になるのである。小さい江戸である。



まあしかし、こういう環境では寄生虫との縁は切れない。終戦直後の日本では、児童の約60%にギョウチュウの陽性反応があったという。しかし、衛生的な環境になったおかげで、ここ10年は1%以下である。でもって、2015年時点では九州の一部地域を除いてギョウチュウ検査は廃止されている。



日本人全体の回虫感染率で見ると、1949年は63%で、20世紀の終りには0.02%まで低下している。



で、よかったよかったなのだけれども、一方では寄生虫が駆逐されたことで人間の体に備わっている寄生虫対応のはずの抗体が異常な働きをする、とか、それが原因でアレルギーが増えた、とかいうこともいわれている。



たしかにあまりに清潔な環境は、かえって健康によくないような感じはある。拙い私の観察によると、潔癖性は風邪を引きやすかったりする。やはり人間は生きものなのだから、いろいろ、目に見える生きもの見えない生きものにまみれていたほうがよいような気がする。



しかし私たち現代人は、もう江戸の時代には戻れないのである。不潔というか、糞尿に対しても寄生虫、黴菌に対しても、感覚的に耐えられないところがある。では、どの程度のところまでなら耐えられるのか、というのが今回の話である。



あ、その前に、もうひとつ汚い話をしておこう。むかし、畑の端に小さな肥溜めがあったとさ。直系50〜60cmの円形で、周りに高さ1mほどの柵が巡らしてあったとさ。あるときひとりの中学生、私の知り合いだが、がやってきて、面白半分に中を覗き込もうとした瞬間、なにかの弾みで柵から向うへ、頭から落ちてしまいましたとさ。



あーら、たいへん!! なにがたいへんって、その筒状の肥溜めの径が小さすぎて、頭から真っ逆さまに糞尿に漬かっている体を反転させることができなかったんだとさ。内側の壁はヌルヌル滑って、とても体を押し上げることはできなかったんだとさ。糞尿による溺死。しかも直径50〜60。悪夢がよぎったという。しかし本人、いまも元気にオヤジをしているのだから助かったわけである。



どうやって九死に一生を得たのか、詳細は教えてくれない。しかしシンクロナイズドスイミングがヒントだといっていた。田舎の畑の端っこの肥溜めで、シンクロナイズドスイミング。食欲は失うが笑える。



糞尿による溺死ではこんな話もある。知り合いがある民宿で便所に行って見下ろすと、ドブネズミが一匹、必死に泳いでいたそうなのである。その翌日、また便所に行って見下ろすと、可哀想に溺れて死んでいたのだそうである。気が退けて用をすませられなかった、といっていた。



恥ずかしながら、私は4歳のときに田舎の親戚の家の便所に落ちたのである。落ちたと行っても汲み取り式の便器に足先からすっぽりはまり、両腕を床に広げたので、ちょうど吊り輪のT字バランスのカタチになったのである。便所でT字バランス。たぶん顔は必死だったはずだ。



しかしそれでも残念なことに、私の足先は糞尿についてしまったのである。それからというものほぼ一週間、私は臭いのために家族から隔離され、一人寂しい生活を余儀なくされたのである。そしてそして時を隔てること二十余年、ある養豚場を取材しにいって糞尿処理プラントを見せてもらったとき、その4歳の思い出が鮮烈に鼻孔の奥に蘇って、思わず嗚咽したのである。



また全然関係のない話である。あるとき知り合いの男が、しみじみと「トシを取ると締まりがなくなる」といったので、漏らしたのか? と聞くと、そうではない、という。



どういうことかというと、ソイツはトイレで座ると、長く尾を引くラッパのようなオナラがしばしば出るのだそうだ。で、若いときはその最後の音程が上がって終わっていたものが、最近は上がり切らない、というのである。とても寂しいものらしい。



うーん。それで、私たちは清潔ではないことにどこまで耐えられるのか、という話である。舛添要一に戻る。さて、あなたも汲み取り式のトイレに金を落としたとして、それを素手で拾うかどうか、である。



もちろん1円玉だとか5円玉だとかでは拾わないだろう。それなら拾うというその金額の大きさで、耐えられる度合いを計ろうというのである。バカである。



私の周囲の反応は、およそ10万円が拾う拾わないの分岐点であった。たぶんヤツら見栄を張っているような気がする。なかには、たった一人だが、ふつうにそこらで流通している現金でも素手では触らない、というヤツがいた。なにさまのつもりか。顔にギョウチュウ検査シールを貼ってやりたい。しかしそういう時代なのだ。



私は5万円でも拾う。拾ってそれを洗い、消臭し、干し、風呂に入り、消臭し、という手間で半日かかったとして5万円。危険手当と慰労金、各1万円を含めていいところではないか。



うーん。だからどうというわけではない。ほんとうのことをいえば、ただ無性にウンチの話がしたかっただけなのである。これも舛添要一のせいかもしれない。いや、私が幼稚で欲求不満なだけだ。お付き合いいただき、まことに申しわけない。(了)


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