2月12日未明の突然の引退表明からほぼ24時間。清水富美加(22)が出家したとしている宗教団体「幸福の科学」と、所属している芸能事務所「レプロエンタテインメント」両者の記者会見が行われて、おおよその状況がつかめてきた。ひとことでいってしまえば、意にそぐわない仕事や不当な待遇に耐えかねた若い女優がかねて信心していた寺に助けを求めて駆け込んだ、ということである。
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おお、そういえば2016年10月25日にはその幸福の科学から「“だって、あなたの幸せを、まもりたいから。”みんなの幸福のために戦うアイドルanjewel いま、あなたの元へ、羽ばたきます」とうたった6人組アイドルグループ「anjewel(アンジュエル)」が登場していたのである(「日刊サイゾー」2016年10月27日配信)。「ハロー!プロジェクト」の「アンジュルム」はきっといい迷惑だ。
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しかし教団は芸能界進出をめざしているのか、とか、ただいま天理教、立正佼成会など大手が信者数を軒並み激減させている新宗教界の異変などはとりあえずおいておく(「NEWSポストセブン」2017年2月1日配信)。幸福の科学の本尊がエル・カンターレ=総裁・大川隆法(60)というれっきとしたニッポンバツイチオヤジだということもどうでもいい。
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もちろん、清水富美加が芸能界引退を発表したその日、12日の午後9時ごろになって突然、レプロエンタテインメント所属の菊地亜美が「私はレプロに所属して10年ちょいだけど、沢山お世話になってるし毎日楽しく仕事してますよ。なんでこんな話になっちゃたんでしょうね。」とツイートしているというさっそくの黒さもどうでもいい。焦ってんなー、レプロ。
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正直いわせていただければ、清水富美加には信仰があってとりあえずはよかったのである。清水富美加が12日のツイッターで「力ある大人の怖い部分を見たら 夢ある若者はニコニコしながら 全てにうなずくようになる。そんな中ですり減って行く心を 守ってくれようとしたのは 事務所じゃなかった」と語っていることからも窺えるように(「デイリースポーツ」2017年2月12日22時32分配信)、集団からの抑圧に対抗するには個人はあまりにモロい。であるからまず孤独にさせることが人を操ろうとするものの常套手段なのである。話しは少しズレるけれども超長時間労働というのも、なんの気なしに、というか意図せずこの作戦にのっかっている。
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で、現状取り込まれている集団とは違う価値観、世界観をもった知り合いがいると、状況をある程度は相対化して客観的に見ることができる。金にしか目がいかないリーダー、とくに経営者たちはそれを批判的だとか理屈っぽいとか不満分子だとかいうのである。清水富美加のツイッターの文章にもオノレの人生にもがく若者の、オトナへのごく一般的な苛立ちというものがいくらか感じられるけれども、しかし若さゆえの反抗と片付けられないものもある。
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ともかくなにがしかの支えがなければ、個人は集団から一方的に押し付けられる要求に対抗し切れない。その支えが清水富美加の場合は幸福の科学であり、同様にレプロエンタテインメントとのトラブルを抱えている能年玲奈→のん(23)の場合は生ごみ先生だったわけである。どうしているのであろう?
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幸福の科学が信頼するに足る宗教かどうかは別問題である。最近エル・カンターレが清水富美加の守護霊と対談しておったとかいうておるけれども、そんな神秘的な力があるのなら、なぜ現実世界においてこんなに多くの人々を巻き込むトラブルを起こす手段に訴えるのであろう。悪いレプロエンタテインメントなど霊的なパワーで降参させてしまえばいいではないか。社長・本間憲(55)の守護神に直談判したりして。
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まあしかし、先ほどののんの件もあってレプロエンタテインメントは大ダメージである。これですっかり一般の目にもブラック企業の仲間入りである。それだけではない。一連のSMAP解散騒動に見られたジャニーズ事務所の専横ぶり、田辺エージェンシー社長・田辺昭知(78)の夏目三久溺愛ぶり、バーニングプロダクション周防郁雄(76)とLDH・HIRO(47)のレコード大賞1億円守銭奴ぶりが記憶に焼き付いているのである。ニッポンの芸能界全体が漆黒のブラックに見える。これからはテレビに新人女優が出てきても「可愛いわね」ではなく「可哀想にね」といわれてしまうのである。マジ剛力彩芽(24・オスカープロモーション)なんか涙出る。新人ではないけれども。
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そんなこんなで最終的な結論は、とりあえずは「毒をもって毒を制す」でいいんじゃない、ということである。レプロエンタテインメントの強圧的姿勢を崩すにはそれなりのパワーが必要だし、コワモテの代表のようなレプロが改革されないかぎりニッポンの芸能界は暗黒のままであろうからだ。幸福の科学そのものについてはまたあとでよかと。
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おっと、なぜこういう「毒をもって毒を制す」などというエラそうな考えに到ったか、ということを説明せねばならぬ。まずざっくり全体を見ていただくために『デイリースポーツ』(2017年2月12日配信)から抜粋しよう。
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《清水の引退理由は宗教団体「幸福の科学」に出家するためとしている。幸福の科学側はこの日、会見を開いて「仕事を干されるという恐怖心の中で仕事をしていた」「業界のルールに従わないとこの世界で生きていけない」「事務所を辞めると自分の本名すら使えない」などと批判した。
同日夜に事務所側も会見し、「多く事実と違うところが含まれていると考えている。意向に反する形で仕事を押しつけていた。やりたくないような仕事をやらせていたとあったが、週に1度、少なくとも月に1度ぐらいは本人とマネジャーが面談して、入っている仕事や今後の仕事について密にコミュニケーションを取ってきた」などと反論した。》
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ふうん。「週に1度、少なくとも月に1度ぐらい」マネージャーと面談することが「密にコミュニケーションを取ってきた」ことになるのか。そもそも「週に1度、少なくとも月に1度ぐらい」というあやふやなものいいはなんなのか、ということである。このあたりを明確にすることが求められる展開にそのうちなるんだろうな。ならないか。レプロたぶん闘わないから。
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しかもそのなけなしの面談時のマネージャーの言葉も、幸福の科学の記者会見と清水富美加による直筆コメントによるとそうとうシドイ。哀れなくらいシドイ。
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《「出家したい」と言ったら、マネージャーさんにも、「意味が分からない。やめてくれ」と言われました。》(清水富美加 直筆コメント)
《意に沿わない仕事をして、切り売りされているようで、しばしば周囲に死にたいと、多いときには週1回、漏らすようになりました。マネジャーにも言うと「あまり言うと死んじゃうんじゃないかと思うので、もう言わないでほしい。死ぬという言い方はずるい」と言われました。》(幸福の科学の記者会見における幸福の科学グループ専務理事/広報担当・里村英一、56)
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ねえーっ。もうマネージャーったらほんとうに自分だけのことしか考えられていないのである。自分のことでいっぱいいっぱい。こんなふうに抑圧された者が抑圧する側に回ってさらに加担していくという構図はよくあるけれども、たいへん哀れだし残酷だべ。レプロエンタテインメントがタレント、いや人間をどう考えているのかがよくわかる。いまや犬猿の仲といわれる周防郁雄と田辺昭知の両方とも仲がいいらしいけれども。
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最後に清水富美加が発表した直筆コメントの全文を『デイリースポーツ』(2017年2月12日配信)から、また幸福の科学の記者会見における幸福の科学グループ専務理事/広報担当・里村英一の発言を『日刊スポーツ』(2017年2月12日配信)から抜粋してご紹介しておく。レプロエンタテインメントからの反論は、前掲以上のものはまだ出ていない。
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【清水富美加 直筆コメント全文】
ファンの皆様、関係者の皆様、友達、飲み友達、私と話したことがある人、知ってくれている人。突然に、本当に突然に、芸能界から姿を消して申し訳ありません。お世話になっていた現場や、共演者さん、スタッフさん、関わらせて頂いた方々にご迷惑をおかけしている事、しっかりと自覚しております。
しかし、約8年、このお仕事をさせていただきましたが、その中でお仕事の内容に、心が追いつかない部分があり、しっかりとした生活を送れず、毎日がギリギリの状態でした。
なので今、出家したいと思いました。
私、清水富美加は幸福の科学という宗教に出家しました。
なんで、それで、出家することになるのか、皆さんにとっては、何もかもが意味不明だと思います。幸福の科学が、宗教が、出家というものが何なのか。「出家したい」と言ったら、マネージャーさんにも、「意味が分からない。やめてくれ」と言われました。無宗教の方が多い現代では、誰もがするであろう反応ということも分かっております。
神とか仏とか、あの世とか、確かめようのないもの、この目で見たこともないものを、私は信じ、神のために生きたいと思いました。出家を決意してからは、安定した生活が送れるようになっております。皆様から見たら洗脳とも取れるであろうこの一連の出来事や、この8年間で感じてきた素直な気持ちを、これから、偽りなく、明かしていきたいと思います。どうかこれからも温かい目で見守って頂ければ幸いです。本当に本当にありがとうございました。
2017年2月吉日 清水富美加
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【幸福の科学の記者会見における幸福の科学グループ専務理事/広報担当・里村英一の発言】
子どもの頃から熱心な当会の信者で、支部や祈願に参加し、仏法心理的価値観を子どもの頃から学ばれてきました。芸能活動でつらいことがあっても、元気や励ましを届けたいと頑張ってきました。しかし次第に主役級の役を与えられる中で、人道的な作品に出演したいという彼女の意思に反し、必ずしもそういうものでない仕事が与えられてきました。
突然、青天のへきれきのように出家を希望したとみれる点がございましたので、出家には大きな伏線があったことをご報告させていただきます。
私ども、芸能界にしばしばみられる厳しい就労環境があったことが大きな点だと思っております。当初は歩合制であったものの、事務所は何もしてくれなかった。次第に稼ぐようになったら、事務所から月給制を持ち出された。お父様から事務所に、厳しいのではないかとお話ししたところ、仕事を干されたというのがありました。その中で清水さんは、仮面ライダーシリーズのオーディションに自分で申し込み役を射止めましたが、睡眠時間3時間で1カ月31日働いても、月給制、ボーナスは支給されなかったという環境で、仕事をやっておりました。嫌な仕事の典型は、水着のDVDであった。性的対象にされるのが嫌で事前に拒否していたにもかかわらず、「もう決まっている」と、無理に入れられてしまった。仕事を断ると干されるという恐怖の中で仕事をしていたと言っていました。意に沿わない仕事をして、切り売りされているようで、しばしば周囲に死にたいと、多いときには週1回、漏らすようになりました。マネジャーにも言うと「あまり言うと死んじゃうんじゃないかと思うので、もう言わないでほしい。死ぬという言い方はずるい」と言われました。自分の奥底に気持ちをため込むようになったそうです。
事務所側は、彼女の危機的状況に対して、真摯に対応してこなかったという状況であります。昨年秋に、今年公開になる暗い映画の撮影が続き、祈願を受けると言うことで何とかやってきました。その中で「女優 清水富美加の可能性 守護霊インタビュー」をきっかけに、長年おさえていた思いが吹き出した。これをきっかけに天命を確信して、出家を決意するに至ったのでございます。
弁護士に依頼し、迷惑をかけないよう今の仕事をどう整理していくのかという段階になったけれど、事務所に相談すると「せめて決まっている仕事はやってもらわなきゃならない」という、聞く耳を持たない強硬姿勢に出られました。それを見た清水さんは心身に大きな傷を受け、専門医の治療を受け、ドクターストップで仕事を休むという結論になりました。病名などは個人情報につき控えさせていただきます。SOSを役者さんがあげても、事務所側は仕事だからやるしかないと言うばかり。突然スケジュールの穴をあけたのではなく、整理したいのに、事務所がやれという一点張りだったために、このような事態になっています。
診察した医師からは「生命の危険があります」と診断が出ています。働き続けて死を選んだ電通の社員の事例を思い出さずにはいられません。宗教上の緊急救済の必要があると考え、出家を認めるに至ったのであります。事務所側はその経緯を全く理解しようとしていない。「業界のルールに従わないとこの世界では生きていけない。どんなおかしなルールでも。契約上、事務所を辞めたら本名を自由に使えないというルールから逃げられなくて、毎日がギリギリの状態でした」と本人が申しております。
本人によると、そうした思いをしているのは自分だけではないと。若い役者たちは同じように死にたいと申していると。業界のあしき部分があるならば正していただきたいと、清水さん個人を越えて、芸能界が浄化されることを願っています。
—〈略〉—
現在清水さんは非常に体調が不安定で危険な状態が続いております。今日も出席不可能。したがって今月で事務所との契約は解除。体調が回復したら宗教家としての活動に移って参ります。事務所との交渉内容の公開は差し控えさせていただきます。何人も思想の自由、幸福追求の権利が保障され、苦役が禁止されていることは、日本国憲法に保証されている。過密なスケジュール、本人が望まないキャラクター、人を食べる仕事も含まれております。事務所の仕事の振り方が不適切だったのではと思っています。事務所から振られたときに断れない状況の中で、よくもこんな仕事を当会の信者にさせたなと、個人的には思っています。皆様の温かいご理解を賜りたいと思います。
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発言のなかで「今年公開になる暗い映画」、「人を食べる仕事」といわれているのは、この7月公開予定の映画「東京喰種 トーキョーグール」のヒロイン霧嶋董香役であろう。なーんかニッポン芸能界もメチャクチャだけれどもつくっているものも、もうメッチャクチャでないかい。
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今回の一件に関してはレプロエンタテインメントには“勝ち目”というものがない。したがってこれまでになく大幅に譲歩したカタチでの早々の幕引きが見込まれる。その波及効果を受けて、のんの芸能活動が解放される可能性もなきにしもあらずである。そうなれば漁夫の利といえるかもしれない。清水富美加は幸福の科学以外の仕事はしなくなるわけだし。
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今年はニッポン芸能界が大きく揺れ動く年だとは思っていたけれども、予期せぬところから濃ゆ〜い燃料が投下された。自分は不当に干されたと思っている芸能人のみなさん、たくさんいらっしゃると思うので、この機会に一斉に声を上げたらいいんでない。(了)
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