『新潮45』(2017年2月号)に【『再び別人格が現れた「声優のアイコ」事件法廷』】という記事がある。「声優のアイコ」こと神いっきは性同一性障害のために乳房切除手術を受けて男として暮らしていたのだけれども、女装をしては昏睡強盗を働いていたのである。
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一見ややこしそうではあるけれども、ややこしくない。ややこしいのはこのあとである。『デイリー新潮』(2017年1月27日配信)経由で抜粋しよう。
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《平成26年9月から始まった裁判では、当初、神被告は犯行時の記憶がなく、一貫して容疑を否認していた。
〈ところが第4回公判で、ゲンキ(4歳)と名乗る別人格が現われ、法廷において「お兄ちゃんは悪くありません!」と叫んだあたりから流れは大きく変わった。神被告は解離性同一性障害(以下、DID)であり、「自分の中の別人格が犯行を行った可能性がある」と一転して容疑を認め、犯行時にDIDであったかを診断する精神鑑定が行われることになったのである〉※〈〉は『新潮45』より引用、以下同
裁判所が鑑定を依頼した精神科医・岡田幸之医師は、神被告が解離性障害は起こしやすい傾向にあると言うものの、DIDであることには否定的である。別人格が現れている間、神被告は休眠状態で記憶を有していないとされるが、一方で犯行中に「神いっき」として、友人とLINEのやりとりをしていた。
〈「別人格がやったという根拠になっているのは、本人が覚えていないと言っている部分でしかない。こうかもしれない、ああかもしれない、というので作り上げられたストーリーとしか言いようがなく、信憑性はかなり疑わしい」〉
一方、弁護側の証人として出廷した精神科医・岡野憲一郎医師によれば、神被告の中には幼児人格の「ゲンキ」、凶暴な人格の「コウジ」、そして「ミサキ」の3人がいる。岡野氏は神被告との面会の際「ゲンキ」に会ったと明かしたうえで、犯行時に名乗っていた“声優のアイコ”はミサキの偽名で、一連の事件の犯人は彼女である、との説明を彼から受けたという。
2人の精神科医の見解が対立する形となったが、弁護側証人である岡野医師も、〈「別人格を含めた総体としての被告人の責任能力をどう考えるかは、法律家の判断に任せる」〉と述べている。》
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解離性同一性障害というのは以前はたいへんにめずらしく、1人の精神科医が一生に一度出会うかどうか、というものだったらしい。しかし最近では比較的頻繁に見聞きするようになった。あるタームが市民権を得ると事象のほうがそちらに寄っていくというご都合主義的な感じを受けないでもない。しかし別人格を疑わせる言動が実際に現れるのであるから、ともかく人のこころ、アタマのなかはややこしい。私のアタマの外側は比較的シンプルである。
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こころ、アタマのなかを考えるときによく「夢」が使われるけれども、最近はほんとうに単純な夢しか見ない。現実の街を少しデフォルメしたようないつもの景色のなかを歩いただけでお終いだったりする。そのときさまざまな感情が去来するのだけれども、まあアタマの内側も単純なものである。
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で、夢のなかでもあたりまえのことしかできないので窮屈である。ほとんど見ている最中にこれは夢だとわかるので、それならたとえば高いビルの屋上から飛び降りてみるくらいはすればいいものを、できない。つまらない男である。
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あるとき、そーんな話を知り合いとしていたら、知り合いは
「私ならバンバンやるよ」
と無造作にいったのである。
「崖とか飛ぶし、人とか蹴っ飛ばすし」
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うむ。この知り合いは女だけれども知人には稀な武闘派のひとりだったのである。10代の頃にカラオケ店で女2人vs.男8人の大乱闘をやらかした武勇伝を聞いたことがある。
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もちろんそれにはそれなりの理由があって、ふだんから暴力的ということではまったくない。むしろ本人は見せないようにしているけれども気は弱いほうだと思う。しかし、大乱闘になる前に女の子らしくキャーッと叫んでスタッフを呼ぶ、という対応はまったく思い浮かばなかったらしい。
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「右目の下がちょっと腫れただけ」
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ああ、中学校に入学して1週間目くらいで男の担任教師と取っ組み合いの喧嘩になったこともあったらしい。聞くとこれにもそれなりの理由はあり、最終的に担任教師は土下座したというので、たぶん正義感の強すぎるヤツなのである。それはそれでオトナの目から見れば不自由である。で、実生活がそんなわけだから、夢のなかはもっとはるかに過激なのである。
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しかし、それにしてもいくら夢のなかとはいえ本能的に身を守ろうとはしないものなのであろうか? 崖から飛び降りる恐怖はないのだろうか?
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「だって夢のなかだってわかってるわけじゃん。イライラ我慢することないじゃん。もう、ラッキー!! って」
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で、これは夢のなかだ、映画と同じだ、と思ったら、さっそく悪態をつき、生意気な連中に因縁を吹っかけ、わざと車道を歩く。万引きなんかし放題、らしい。
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そんな知り合いがある日犬の散歩に出かけたままいなくなり、その翌日になって50〜60kmほど離れた隣町で保護されたのである。その間の記憶はまったくない。診断の結果は解離性同一性障害であった。
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単純な私にはどう考えていいのかわからない。私の前に別人格で表れたこともないのでそのままにしてある。知り合いはいまも月イチのペースでゆる〜く通院中である。たぶん2度と夢の話はしないであろう。(了)
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