尾籠なお話である。もしかして食事中、あるいはこれからお食事という方は、たいへん恐縮であるけれどもご遠慮をいただきたい。
琵琶湖博物館の研究顧問・嘉田由起子が発明した言葉に「うんこ親和文化」と「うんこ忌避文化」というのがある。かつてし尿を肥料として活用していた日本は「うんこ親和文化圏」にあり、し尿はできるだけ早く遠ざけたいとする東南アジア、インド、アフリカ、ヨーロッパなどは「うんこ忌避文化圏」にある。
*
おっと、この嘉田由起子とは滋賀県知事だった嘉田由起子(67)だったのではないのであろうか? どうやらそうらしい。なるほど、「うんこ親和文化」「うんこ忌避文化」というネーミングが実にチャーミングだなあ、と思っていたら名付け親は後の滋賀県知事であったか。そういうことであったか。だからどうということでもないけれども。
*
もとい、嘉田由起子によれば、たとえばアフリカ・マラウイではうんこに呪いをかけられるという恐怖があるのだそうだ。それが各戸にうんこを溜め置くトイレがなかなか普及しないひとつの理由になっているらしい。
*
しかしもっと元をたどれば話は逆で、うんこは誰のものかわからなくなるような家から離れたところでするべき、という衛生規範の教えのために呪いというお話がつくられたのかもしれない、とも考えられる。いずれにしろうんこは忌むべきものなのである。
*
「うんこ親和文化」の日本にもうんこにまつわるそれらしい話がある。「うんこが温かいうちは捕まらない」という泥棒のジンクスは、仕事は手早く済ませろということであるけれども、ここではうんこが時計代わりである。親しんでおる。
*
極端な例ではうんこを生薬として用いていたという事実もある。
《徳川光圀の命により編纂された救民妙薬の、"河豚の毒を解す妙薬"の項には人糞を用いる方法が記されている。さらに、便壷の底に蓄積される泥状物質を「糞坑底泥」と呼び、これは発背(身長の発育)や悪瘡(悪性のできもの)に適用とされた。》(Wikipedia)
「糞坑底泥」、“フンコーテーデー”と読むのであろうか。すごい。
*
中国ももちろん「うんこ親和文化圏」である。最近はこんなニュースがあった。
************************
【これぞ人民の最終兵器! 逮捕を逃れるため、自らのウンコを塗りたくる事件が相次ぐ】
《日本では戦国時代、籠城戦などにおいて攻めくる敵に対し、人の大小便を武器として使用した記録があるという。しかし中国では、21世紀の現在でも現役の武器として有効なようだ。
「新浪新聞」(7月18日付)によると、広東省清遠市清新区の道路で、電動バイクを運転していた中年の女が道路を逆走し、パトロール中だった交通警察に止められ、路肩で聴取されたことから事件は始まった。
聴取の結果、女はなんと無免許運転だったことが判明。警察は現場ですぐにバイクの押収に取りかかったのだが、女は突然、ズボンとパンツを脱ぎ出し半ケツの状態になると、自らの手に大便と小便を排泄し、バイクのシートに塗りたくり始めた。想像もつかない事態にあっけに取られた警察だが、交通違反に加え、業務執行妨害の容疑で女を現行犯逮捕したという。取り調べに対し、女は「排泄物をバイクに塗りたくれば、警察もあきらめると思った」と、あきれた理由を口にしたのだった。女はしばらく拘束された後、処分が言い渡されることになっている。
一方、陝西省永寿県では6月18日、青果店に侵入した男が店内の店員が所持していた携帯電話とハンドバッグを盗み、逃走する事件が発生している。店員が男を追いかけ、捕まえようとしたその時、男は突然ズボンの中に手を突っ込み、大便を排泄しだしたのだ。男は自らの大便を自分の顔面と体に塗りたくると、さらに逃走を試みたが、近くをパトロール中の警察官に囲まれ、現行犯逮捕された。実はこの男、過去に窃盗事件を3回起こしており、いずれも今回同様、大便を全身に塗りたくり、警察の追跡から逃れようとしていたという。
ちなみに中国では、以前にも遼寧省のバス車内で運転手とトラブルに発展した女性が運転手の顔面に使用済みナプキンや小便を塗りたくるという事件が発生している。
イタチの最後っ屁ならぬ、人民の最後糞というわけか。》
(※「日刊サイゾー」7月24日配信)
************************
この記者はいったいなにをよりどころに上から目線の記事を垂れ流しているのであろう。われわれの数世代前の先祖はうんこ(し尿)を肥料として重宝し、江戸および近郊ではその売買が立派なビジネスになっていたというのに。
*
それから現代のわれわれには「脱糞逃走犯」というヒーローもいる。パトカーで高速道路を移送されている途中に脱糞し、慌てる警官を尻目に、走る車の窓から手錠のまま逃走した泥棒である。確か2003年のことであった。この男はそのまま町工場に駆け込み手錠を切断し、それからたぶん約100kmは離れた自宅までいったん徒歩で戻って着替えまでしているのである。
*
再び逮捕されるまでにいくらかジタバタした、身体能力がスゴい、という点は人民に誇れるかもしれない。
*
脱糞といえば今年6月25日のUFC(Ultimate Fighting Championship)大会で、女子選手がリング上でやってしまったのが記憶に新しい。失神寸前まで追い込まれてのことらしいけれども、翌日には「私は戦士だ。クソをしたからといって戦うのをやめたりしない。またすぐに試合で会おう」(I am a warrior, and I will never quit #ShitHappens haha be back soon.)と堂々とTweetしている。素晴しいではないか。
*
恐怖のあまり脱糞してしまうこともある。以前一緒に暮らしていた犬は男のくせに飼い主によく似てたいへん臆病なヤツで、知り合いが連れてきた自分よりも小さな犬にも恐慌をきたし、姿が見えなくなったと思ったら、外に逃げたかったのであろう、閉めた玄関ドアにすがるようにして大量脱糞してしまっていた。
*
その数時間のちには知り合いが連れてきたそのお嬢さん犬を追いかけ回してキャンキャンいわせていたから、そんなところも似ているといえば似ていた。
*
臆病で女好きなアイツにも寿命の尽きるときがきて、息を引き取ったのは3年前の夏、まだいくらかは涼しい夜明け前だった。それから夏になるとアイツとうんこが瞼に浮かぶ。同じく夏に死んだ父親のことはあまり思い出さない。私は「うんこ親和型」である。(了)
OCN モバイル ONE データ通信専用SIM 500kbpsコース
CMで話題のコスメやサプリがSALE中☆
【DHC】最大70%OFFのSALE開催中!
0 件のコメント:
コメントを投稿