荒い言葉づかいが蔓延している。荒いというより悪いというべきか。ここ数年、見ても聞いてもずいぶんいやな感じになってきたなあ、と思っていたら、最近になってまたいちだんと悪くなった。ここまでくると炎上商法だといって簡単に片付けてもいられない。
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これを語るには、申しわけないけれども上西小百合(34)がうってつけである。下の記事をご覧いただきたい。
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【「くたばれレッズ」発言の上西議員「そんなにキツい言葉ではない」】
《サッカーに関するツイートで炎上した“浪速のエリカ様”こと上西小百合衆院議員(34)が25日、TBS系情報番組「ビビット」に生出演した。
上西氏は、J1浦和とドルトムントの一戦(15日)に関するツイートをきっかけに「サッカーの応援しているだけのくせに、なんかやった気になってるのムカつく。他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ」とサポーター批判を展開。すると、浦和サポーターと思われる人物から殺害予告が届き、19日に警視庁麹町署に被害を相談した。22日には、浦和ファンを名乗る人間が大阪にある上西氏の事務所に押しかけたため、上西氏が「くたばれレッズ」と怒りのツイートをし、再び炎上した。
上西氏は公設秘書の笹原雄一氏と並んで出演。上西氏は「くたばれ」発言について「事務所に押しかけてくるような一部の人へのもので、サポーター全員に言っているわけではない」と説明。笹原氏は「ミュージカル、映画にもなった『くたばれヤンキース』から来た発言。そんなにキツい言葉ではないというのが上西事務所としての共通見解です」と補足した。
これに対し、MCの国分太一(42)は「その説明がないと(発言の真意は)分からないですよ」と指摘。同じくMCの真矢ミキ(53)が「アイドルとマネジャーのように、発信する前にチェックしたりできないんですか?」に尋ねると、笹原氏は「彼女の持ち味が消えてしまう。(炎上を)フォローするのが私の仕事」と放任する考えを示した。
納得できない漫画家の倉田真由美氏(46)から「一部の人に向けたというけれど、くたばれ発言で傷ついた人は多い。その人への謝罪はないんですか」と聞かれると、上西氏は「私が言われた言葉からしたら、くたばれなんてそんなにキツい言葉ではない」と答えた。
さらに上西氏は一連の発言について「個人の自由だし、(サッカーの)専門家ではないし、こんなに注目される理由が分からない」「いい試合、悪い試合というのは自由に言わせてほしい」「当たりさわりのない言葉を使うのは簡単だけど、伝わらない。政治の部分ではもっと過激な言葉を使う」などと持論を展開。政治活動では「伝えるためだったら、何でもします」と言い切った。
そして、一連の炎上騒動について「私みたいな議員は“お騒がせ”ばかり取り上げられがちですけど、国会質問に何度も立たせていただいております。仕事はきっちりさせていただいている。お騒がせばかりがメディアに取り上げられるのは、私の努力不足なので、もっと前にいかなければと思います」とコメント。「サッカーに対して、これ以上私が発言することはないが、レッズさんとはお話する環境をつくっていただきたい」と浦和側に改めて要求した。
また、政治家としての今後について「今は高度成長期と違っていろんなところにお金をばらまけるわけではない。それを国民にしっかり伝える。お金を使う優先順位をつけていくことが大事だと思う。国際貢献の名のもとに多額のお金が外国に流れていますが、それでは日本国内で大変な思いをしている人が報われない。国際貢献は、結局返ってくるという人もいますが、あれはお金持ちのための仕組みなんです。それをぶっ壊していかなければいけないと思います。官僚にだまされないで、しっかり自分の意見が言える政治家として、これからも頑張っていきたい」と述べた。》
(※「東スポWeb」2017年7月25日)
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「くたばれレッズ」は誰がどう聞いてもキツい言葉である。正しくは「死んでいただけませんかレッズ」、あるいは「みまかりたまえレッズ」といわなければならない。
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おかしいでしょ? おかしい。なぜなら「死ね」という言葉が意味するのは強者が弱者に、攻め手が受け手に強制する行為であって、決して丁寧にお願いをする態を表すものではないからだ。すなわちどんないい方をしようと、レッズに死を求める言葉は乱暴でキツいのである。
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と、いうように言葉はそれ自体に論理を備えていてあまりにムリな用いられ方をすると破綻してしまう。逆にいえば「くたばれレッズ」といい放った以上は、その責任を負ってレッズを死なせるか、あるいは死なせるように努力していただきたいと思うのである。
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もちろんそれほどの覚悟があっての発言ではないので、あとになって「事務所に押しかけてくるような一部の人へのもので、サポーター全員に言っているわけではない」とか、「ミュージカル、映画にもなった『くたばれヤンキース』から来た発言」とか、奇妙奇天烈な弁明をしなければならない羽目に陥る。
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しかし「(くたばれ)レッズ」は「一部の人」を意味しないし、「くたばれヤンキース」であろうと「くたばれハリウッド」であろうと、それ自体はキツい言葉である。しかも物語としての「くたばれヤンキース」は万人が心得るところの常識的教養でもない。
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ついでにいっておくと、「そんなにキツい言葉ではないというのが上西事務所としての共通見解です」というのもおかしないい回しで、法人格と同じように上西事務所という人格を設定しているつもりなら「上西事務所の見解です」になるべきであるし、そうでないのならば「上西事務所全員に共通の見解です」になるべきである。
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重箱の隅を突ついているようであるけれども、そもそも上西事務所を持ち出してきたところから、こうして責任の所在隠しがはじまっているのである。情けない。
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上西小百合が「くたばれレッズ」とTweetしたのには、もちろんひとつには注目を集めたいという気持がある。これだけ激しい言葉づかいをしておけばきっとびっくりして振り向いてくれるだろう、という計算である。
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つまり大西小百合はSNS上で大声を張り上げているのである。従来、テレビはいろいろな意味で声の大きな特定の人間のものであり、対してネットやSNSは声の小さな人間がたくさん寄り集まって主張なりをするもの、という認識があった。というか私はそのように考えていた。
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それが最近、ネットやSNSでも大西小百合のようにところかまわず大声を張り上げるヤツが出てきたわけである。「電話してくる人とは仕事するな」の堀江貴文(44)もそのひとりである。「突然の電話は相手の邪魔になるかもしれないので気をつけよう」でいいものを「電話してくる人とは仕事するな」と極論化することで注目を集めようとする。
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まずは最大限の注目を集める、そのことだけに目的を絞ればこれでいいのかもしれないけれども、こうした言葉が蔓延すれば思考の短絡を招く。人間は言葉で考えるのであるから、言葉は人間をつくる。それはとても怖い。
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多角的な視点を極力排除することからはじまる堀江貴文の近視眼的発想は、熱湯を注ぐなり副菜を追加するなりして十分食べられるようにしてからでなければ私には受け容れられない。
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上西小百合の「くたばれレッズ」には大声効果とでもいうべきものともうひとつ、表現力の不足がある。おそらく上西事務所に実際に浦和ファンを名乗る人物が登場したことで昂ったのであろう、その感情を表すためにキツい言葉を用いたのである。「私が言われた言葉からしたら、くたばれなんてそんなにキツい言葉ではない」。
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自分の気持や感情をきちんと説明できない。いわゆるキレる子ども、キレる中年とここのところは同じだ。政治家は言葉がイノチ、芸能人は歯がイノチなのにいったいどうしたことであろう。
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こんなふうにして言葉が荒れ、論理が無視されていく果ての果てには、きっと獣性しか残らない。地獄である。ブヒ。(了)
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