2017年5月10日水曜日

外国で苦労せず「職業は日本人」で生きるのが夢だす



うれしい。再びこの日が訪れるのを心待ちにしていたのである。ずいぶん長いあいだ待たされた甲斐があった。まずはさっそく、そのうれしいニュースを伝える記事をご紹介しよう。『Record China』2017年5月8日配信分からである。



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【中国選手がボコボコにしていた「日本チャンピオン」、実は単なる留学生だった!=中国格闘技界の「ウラ事情」を暴露】

《中国の複数のスポーツメディアによると、中国の格闘技界をめぐる「暴露」が物議を醸している。

「中国における総合格闘技(MMA)の第一人者」を自称する徐暁冬(シュー・シアオドン)氏はこのほどメディアの取材に対して、中国の格闘技の試合に登場するいわゆる「日本チャンピオン」はすべて偽物だと明かした。

徐氏は、「彼らが招待している選手は本当の日本人ではない。北京の日本人留学生だったり、中にはモンゴル人もいる。中国人は日本人をやっつけると聞くと喜ぶ。これはもはや自分で自分をだましている行為だ」と大会の主催者に怒りをにじませながら語った。

また、「君たち(メディア)が暴露する勇気があるなら私も話そう。現在、日本人のファイトマネーは中国の試合では最高になっている。ロシア人も米国人もブラジル人も、日本人ほど高くない。なぜだかわかるか?日本の選手は自分がやられるために来ていることを知っているからだ」と明かした。

さらに、「北京外国語大学でそこそこ鍛えている日本人留学生のファイトマネーは5000元(約8万円)だったが、今では6万元(約100万円)に跳ね上がっている。しかも、これは最低金額だ。彼らのレベルはとても低いが(主催者は)それだけ出す」と格闘技界の裏事情を暴露した。

近年、中国で行われる大きな格闘技の大会には必ずと言っていいほど「日本チャンピオン」と名の付く選手が登場し、そのほとんどが中国選手に敗れている。中国人が日本人を叩きのめすという結果に観客は当然盛り上がるわけだが、徐氏の証言通りならそれはすべて演出だったということになる。

〈—略—〉 》

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素晴しいではないか。日本からの「実は単なる留学生」、彼の地で「日本人」を売り物にしてワンマッチ100万円とは。終戦直後にアメリカのプロレス界で活躍した悪役・グレート東郷(享年105)以来の快挙である。ずいぶん憎たらしいいい仕事をしているのであろう。



え? 日本人が負け犬になって外国人を喜ばせるなどもってのほか、国辱ものではないかとおっしゃる?  しかもそもそも日本人が敵役に回される理由がない、と? ふむふむ。いやいやそこが重要なところなのである。「単なる留学生」である彼らの仕事上の最大のフィーチャーは「日本人」なのである。ああ憧れの「職業は日本人」。「日本人」が金になる。金を払ってでも日本人がボコられるところを見たい。しつこいのう。



ヨシコさん、あなた力道山時代のプロレスをご覧になったことありますよね? 関取だった力道山(享年39)がプロレスデビューをしたのは確か1951年のことです。たぶんリアルタイムでご観戦になられたことでしょう。いえいえそんな失礼なことは、ただそれほど当時のプロレス人気はスゴかったらしいといいたいわけでございます。



で、「外国人=ヒールという図式のもと、アメリカ人の悪役を日本人である力道山が倒すのが定番の流れだった。戦勝国であるアメリカの大柄なレスラーを、敗戦で意気消沈した日本の小柄な力道山が倒すという展開に当時の日本のファンは熱狂した。」(Wikipedia)のである。たとえばベンとマイクのシャープ兄弟とか銀髪鬼フレッド・ブラッシーとか。



つまりヨシコさん、プロレスをはじめ格闘技のリングで敵役を担うには選手本人やまたそのバックボーンが強く大きく憎たらしいイメージであるほどいいわけなのであります。敵役はみんなそんなものか。で、めでたくこのたびの日本人留学生もかつて連合国側から日本のリングに送り込まれた凶悪な刺客同様の地位を中国で得たわけなのである。めでたくない? 日本人エラくない?



1980年代、バブル経済華やかなりしころには「職業は外国人」という方々が日本の盛り場には大勢いらしたのである。なにをするかといえば店の飾り。いやいや飾り付けをするのではなくてただカウンターに座ったりそこらをうろついたりして店の飾りになっていたのだそうだ。



「職業は外国人」とか「飾り」とか露骨にはいわれなかったけれども、実質そういう扱いの外国人はほんとうに多かったらしい。



この話を聞いた私は心底羨ましいと思ったのである。そんなに外国人が好きなのか!! それならこちらも「職業は日本人」として、いつかどこかで胸を張ってそう宣言し、外国女にモテモテになりたいものだと思ったのである。この点、ヘアスタイルなどにいまもそこはかとないバブル感を漂わせるヨシコさんはいかがお考えであられよう。



ああそうですか。「職業は外国人」は愛されているけれど「職業は日本人」は不当に嫌われ憎まれている、と。しかも話がメチャクチャだ、と。でもしかしリング上で嫌われ憎まれている「職業は日本人」は、たとえば留学先の北京外国語大学ではふつうに勉強ができているはずである。袋叩きに会ったというニュースは聞いたことがない。私だってもし可能であれば銀髪鬼フレッド・ブラッシーと居酒屋で肩を組み、力道山の額に噛み付いたあの口とスルメ齧り付き合戦みたいなことをしてみたい。



もとい、「職業は日本人」に憧れてから幾星霜、いっこうに道は開かれず、一方では依然として「職業は外国人」な方々は活躍し続けていらっしゃるのである。主な稼ぎ場所は格闘技のリングや飲食店のカウンターから芸能界を経て、ただいまは、なんといえばいいのコレ? 言論界? 論壇? マスコミ? そんなところがかなりおいしいらしい。



とりあえず言論の場での「職業は外国人」な方々の役回りは悪役ではなくもっぱら善玉である。日本は素晴しい、正しい、美しいといっていれば仕事が舞い込むらしい。ほかには英語の講師くらいしかできる能力がなくても一攫千金も夢ではない。ふつうの日本人では一銭にもならない無内容な論評でも、別に本気でそうは思っていなくても、外国人が喋ると金になるのである。で、その金で外国人同士、日本人の悪口で盛り上がればまた日本の酒場が儲かるのである。



そんなところに目をつけた日本人がオラもそのヨロクに預かりてえ、とやった仕事が『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京)、『所さんのニッポンの出番』(TBS)、『世界が驚いたニッポン! スゴ~イデスネ!!視察団』(テレビ朝日)などのいわゆる日本礼賛番組であろう。最近はこれらの番組に出てくる外国人のみなさまが銀髪鬼フレッド・ブラッシーに見える。



いうまでもないけれども、こんなものや「職業は外国人」どものいうことをそのまま鵜呑みにしてはいけないのである。いうまでもなくこれらは海外からの評価のごくごく一部を都合よく切り取って紹介しているのに過ぎず、いま流行の“ポスト真実”といういいかたさえできるシロモノだと私は思う。ついうっかりノせられていたらそのうちまた大恥をかくことになる。



ネット上では「海外の反応」というのもよく見かける。これも徹頭徹尾日本礼賛にシフトしているものがほとんどで、アニメから科学技術、政治までそれこそあらゆるジャンルを埋め尽くし、無数のサイトが存在している。YouTubeへの投稿もいっぱい。いくつかまとめサイトをご覧いただければ、もしかすると誰かがどこかで大量にでっち上げをしているのではないか、と不安になるくらいのありさまだ。



これではいけない。逆に一刻も早くあらゆる事柄についての日本人の反応が世界から期待されるようになるべく、「職業は日本人」というステータスを牽引できる人材を育てなければならない。いまのところ「職業は日本人」が曲がりなりにも通用するのは中国だけのようであるけれども、これではいけないのである。



「職業は日本人」なら世界各国で嫌われ憎まれるところからはじめて、そして酒場で歓迎され、やがて気心が知れ合うようになりたい。そんなふうに考えればいつも唇が「F」ワードの出だしの形をしているドナルド・トランプは実に立派な「職業はアメリカ人」なのかもしれない。



なにをいいたかったのかといえば、人とか国とか時代とか、すべからく複層的に見なければいけないのではないか、ということである。おお、おっと、「職業は日本人」はいまのところ中国だけでなく、日本国内にも存在していた。日本人向けの「職業は日本人」がいた。ついうっかりヨシコさんを忘れていた。たいへん失礼した。(了)


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