2017年5月22日月曜日
「キレる中高年」。いままでムダに生きてきたの?
「おうぅぅいっ!!」
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昨日、スーパーで買物をしていたら突然怒鳴り声が聞こえて、驚いて振り返ると60歳くらいのオヤジが突っ立っている。その視線の先には、さも不服そうにしきりに振り返りつつカートを押して菓子パンの向うへ去っていく痩せたオバサンの姿があった。
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オヤジが地団駄を踏むようにしながらズボンの腰の辺りをパンパンと払ったので、オバサンのカートと軽くぶつかりでもしたのであろう、ということがわかった。
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それにしてもオヤジの「おうぅぅいっ!!」は見事な大音声である。腹の底から低域豊かに噴き上ってあたりの空気を震わす迫力があった。こんな声は一朝一夕に出せるはずがない、剣道か空手かカンフーかをやっているその鍛錬の賜ではないのか。
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しかしひとり取り残されたいまのオヤジは手持ち無沙汰で、動物園のゴリラのようにただひたすら場違いな感じがする。と、そのとき
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「バカ野郎!!」
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再びオヤジが吠えたのである。「おうぅぅいっ!!」よりもいっそうの大音声である。ああ、これが最近話題の「キレる中高年」なのだ。1ヵ月ほど前、道端でいいトシこいてクチ喧嘩しているのを見て以来の邂逅である。中高年なのであるからいいトシこいているのはあたりまえだけれども。
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ああ、あのとき道端で一方のオヤジが中腰になって両掌を上向きに腕を広げ「やるか! こいっ!!」と叫んだのはなかなかにクラシックで印象的であった。そうそう、そうか。たぶん昔のケンカは取っ組み合いだったんだよなー。いまはすぐパンチだけどなー。
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で、気がつくと私はいつものクセでニタニタと思い出し笑いをしながら「キレる中高年」オヤジと眼を合わせていたのである。おお、またまた他人さまに無礼をしてしまった。
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空想癖というのか連想癖というのかがあり、さらに人の顔が好きなので、しばしばまったく関係のないことを考えながら他人さまの顔面に視線を止めてニタニタしているのである。通りを向うから歩いてくる人の顔は、渋谷の交差点ででもないかぎりはすべて見る。
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しかしこれは人を不快にさせてしまうほんとうによくないクセで、笑う口元を隠すために人さまの多いところに出るときにはマスクをするようにしているくらいなのである。近場なのでつい安心していた。
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でも、ついでだからどうして「キレる中高年」はキレるのか聞いてみたい。
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まあ、そんなふうに考えるのは私くらいなものかもしれないし、さらにそんなことを面と向かって聞いてもただのいいがかりにしか取られないかもしれないけれども、それにしても逃げることはないではないか。お話しをすればわかります。
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「なんだこの店わああ!!」
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叫びながら足早に去っていく「キレる中高年」オヤジの四角い後頭部を見ながら、私はふと、私という人間も相当窮屈なものだなあ、と思ったのである。
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そんなわけでスーパーで出くわした「キレる中高年」オヤジへの謝罪の意味も込めて、私なりになぜ「キレる中高年」になってしまうのかをボンヤリ考えてみた。しかしまあ、「会社での役職振る舞いがプライベートでも通用すると思っている」から「そんな親に育てられた」まで実に多岐にわたる理由が考えられるのである。それらを整理して書くのもたいへんな労力だしダラダラと長くなっては読むほうも面白くない。
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そこで「キレる中高年」に共通する属性を私なりに勝手にいくつか書き出してみた。ご機嫌を損ねてしまったとしたらたいへん申しわけないけれども、ここでキレてはダメダメ。自分を顧みるひとつの材料にしていただければ幸いでござる。
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【「キレる中年」10のアティテュード】
◆ 不幸である
◆ 嫁が怖い
◆ 姑が怖い
◆ 営業職である(であった)
◆ 殴られたことがない
◆ 坊っちゃん育ち、嬢ちゃん育ちである
◆ あまり泣かない
◆ 気にされていたい
◆ ふだんクチ下手である
◆ 怒鳴って意見を通したことがある
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いかがであろう? とりあえず、そうさなあ、上の10項目のうち3つ以上に心あたりがあれば要注意ということにしておこう。お互い怒ってもそれで物事がよい方向に転がっていくことはないので、いつもニコニコと微笑んでいられるように心だけたい。ニヤニヤはダメダメ。(了)
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