2018年8月3日金曜日

ヴィム・ベンダースに“スマホ撮影”の新しい名前を考えた



『ベルリン・天使の詩』で知られる映画監督&写真家のヴィム・ベンダース (Wim Wenders・72)が、携帯電話による「写真撮影」について次のように語っておられました。





誰もが写真家である

われわれは皆、数十億枚の写真を撮る

写真撮影はかつてないほど活き活きとし、同時に死んでいる

私はカメラ付き携帯電話を好まない。ポラロイド写真を愛している

iPhoneの写真は誰も見ない。撮った本人でさえ

現像なんて誰もしないだろう

フィルターやアプリなどで便利になったことは創造性の向上を意味していない

自分もセルフィーを撮る

しかしセルフィーは鏡を見る行為と同じで写真撮影とは違う

真実という概念と写真はもうつながらない

人は写真を見るとなにがしかの加工済みだと考える

写真撮影とよく似ているが写真撮影とは違うこの新しい行為を示す単語を探している

いい言葉があったら教えてほしい

※『BBC News』2018年8月2日配信
【世界的映画監督ベンダース氏、「携帯電話による写真撮影」について力説】





はい、ワタクシたいへんヒマにしておりますので考えてみます。妙案が浮かぶかどうかはわかりませんけど。



そもそもの写真の目的は「記録」にあります。カメラとフィルムは記録装置であり、絵画などに比してのあまりの精細さは、やがて現実の“引き写し”、現実の複製という印象を喚起し、被写体に対する支配・所有の代替行為となり、さらには呪術的な意味まで与えられるようになりました。



ワタクシも魂を盗まれると困るので写真撮影からは極力逃げるようにしております。善かれ悪しかれ影が薄いといわれたことがないのはこのおかげか、とも思っとります。



幼少期のワタクシの幼さに捕らえられたいたいけな写真は実家のアルバムから引っ剥がしてきましたので、ワタクシの写真はワタクシの手元にある以外はほとんど存在していないはずです。ゴミとして、あるいはゴミとすら認められていないものとしてなら少しはどこかに紛れているかもしれませんけれども。あ、マグショットが1件分あります。



写真を撮ることもありません。最後にシャッターを押したのは去年、ある神社の境内で中国人観光客に頼まれてのことで、さらにそれ以前となるとトンと記憶にございません。ほんとうです。もう10年ほど前、携帯からメールを送ろうとして送信ボタンのつもりでシャッターを押していたことはあります。



そういうワタクシから見ますと、あちこちでカメラ付き携帯を振りかざしていらっしゃる方々は、たいへん閉じた行為に没頭しているように見えます。知人に送ったりインスタグラムにアップしたりするために撮影している方ももちろんいらっしゃるでしょうけれども、ワタクシには「私はここにいた」ということを自分自身に納得させるために撮影しているように感じられるのです。



とうぜんセルフィーでないかぎりその写真に自分が写り込んでいることはあり得ないのですけれども、シャッターを押すことでそこにいたと証明するために撮影している、と。被写体がそこにあっても、実はフレームの外にいる自分こそが目的でありテーマであるということですね。よく見かけるフード関係の写真もしかり。



ですからそうした自分の存在証明のための写真は、自分のいる場所や時間が変われば意味のないものとなり、顧みられることもほとんどなくなります。



そして撮影者から切り離された写真は——たとえば誰か他人のiPhoneのスクリーンショットなど、は、見る者にその意味を改めて問いかけてきます。それが誰か有名人のパーティの写真だったとして、それがワタクシに語りかけるものはなんなのか、を無意識のうちに考えさせられます。生活の充実度の差、美醜の差、貧富の差……。そうして剛力彩芽(25)は嫌われるわけです。



なにか見る者を楽しませる仕掛けのない、ただ「その現場に私が存在したという証明」としての写真は徹頭徹尾、そのときの撮影者のためのもので、それ以外の人間にとってはなんのありがたみもありません。そんなものでこちらの時間に割り込んでくるな、ということですね。



と、いうことから、ワタクシは「携帯電話による写真撮影」は、観光地によくある記念スタンプのようなものだ、とみなします。なにかを画像として取得してくるというよりも、その場所や被写体にペタンと自分の存在証明を押してくる、というイメージです。



旅が終わればスタンプ帳など見返すことなどありません。



「携帯電話による写真撮影」は「スタンプぺったん」。いかがなものでしょうか。(了)







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