以前からアダルトビデオ(AV)について不思議に思っていたことがあるのである。それはモザイクがあまりに小さく薄いことである。モザイクの向うで何がどうなっているのか、ほぼわかってしまうのである。おチンチンはおチンチンのかたちのモザイクなのである。ほとんど意味をなしていないのである。
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インターネット上には海外サーバー発の無修正エロが氾濫しているので、修正、モザイクの有無それ自体はもはやどうでもいいのである。しかし日本には「猥褻図画公然陳列罪」や「猥褻物頒布等の罪」があるのである。なのにこれでいいのか? なのである。
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ちなみに法律は、その国ごとの法律に従う属地主義に則っているのである。であるから、ポルノ解禁国(あるいは州)にサーバーがある場合、日本の法律では取り締まれないのである。ここを突いて“ライブのぞき部屋”みたいなビジネスに励む連中がいるわけである。海外サーバー経由、というやつである。困ったものである。
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さらになかにはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が締結されたあかつきには、アメリカの圧力で日本もポルノ解禁にならないだろうか、と真剣に夢想するやつもいるのである。助平のうえにバカである。そんなことをしても日本の女優、男優のあそこが解禁されるだけなのである。アメリカがどんなに面白半分でも、そんなことをいい出すはずがないのである。
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で、まあこちらも意味のない詮索なのである。AVがこんなに貧弱なモザイクでいいのか、過去に猥褻として摘発されたことがないのか、調べてみたのである。結果、やはり大小、軽重、いろいろあったのである。
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なかでも大事件は「日本ビデオ倫理協会」(ビデ倫)の摘発である。アダルトDVDの審査が不十分だとして、2007年8月23日に家宅捜査を受け、約半年後、2008年3月1日に、審査部統括部長とビデオ制作会社の社長が、猥褻図画頒布幇助の容疑で逮捕されているのである。
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対象となったブツは、モザイク処理の薄いDVDだそうである。まことに残念ながらタイトルまではわからないのである。そして「ビデ倫」はこの年の6月限りで審査業務を終了し、過去に審査した作品の管理に専念することになったのである。
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おやおや、と思ったのは「ビデ倫」が家宅捜査を受ける8月の直前に(資料によって同年5月と7月の2種類の記載がある)、 倫理審査団体を変更した企業グループがあったのである。「CA(旧:北都)」である。「アウトビジョングループ」とも呼ばれ、流通販売も手がけるAV界の超大手、モンスターなのである。
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新しく倫理審査を移した先は「VSIC(ビジュアルソフト・コンテンツ産業協同組合)」という団体である。移す前に参加していたのは、少しややこしいのだが「日本倫理審査協会」である。「ビデ倫」とはまた別の組織である。
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この「日本倫理審査協会」での審査は、実質的には「北都」の自主審査であったといわれているのである。つまり、インディペンデント系の「北都」が「VSIC」に加盟したとたん、最大組織であった「ビデ倫」が摘発を受け、審査業務を停止してしまうのである。
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これにはさらに前段があって、「ビデ倫」摘発の前年の2006年4月、それまで「ビデ倫」と「VSIC」の両方に加盟していた多くのメーカーが、「ビデ倫」1本に絞ったのである。
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であるから、「CA」は空き家同然の「VSIC」に乗り込んだ感じなのである。そして直後に「ビデ倫」の審査機能は停止し、「VISIC」の威光が増したというわけである。そして多くのメーカーが「CA」の影響力の元に置かれることになるのである。
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そして「CA」は吸収や提携を繰り返して、ますます大きなグループになっていくのである。ざっと数えて、同社の直営AVレーベルは31、流通販売の取り扱いAVメーカーは20もある。有名どころはすべて「CA」傘下といっても差し支えない状況なのである。
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簡単にAVとはいっても、業界規模はかなりのものなのである。石川県加賀市美岬町にある「CA」グループの物流センターは、延べ床面積約1万2000坪もあるのである。アダルト以外の商品も取扱っているとはいえ、ここから全国に発送される商品のほとんどは、吉沢明歩ちゃんとか、かすみ果穂ちゃんとか、風間ゆみさんとかなのである。
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しかも「CA」は1999年11月に「AVの動画配信サイト」であるDMM(デジタルメディアマート、現DMM.com)を創業、さらに2000年4月にはIT専門のドーガ(現DMM.comラボ)を設立しているのである。
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そしてまた、さらにさらにいろいろあって、2009年7月には「DMM.com証券」によってFX業にまで進出しているのである。ちなみに、正確にはエロはdmm.com.jp、一般はdmm.comとドメイン分けしているのである。
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1990年に、いまも物流センターを置いている石川県加賀市で小さなAVメーカーとして出発してわずか25年、インド人もびっくり!! の急成長である。で、いま現在どれだけの売り上げがあるのかといえば、株式を上場していないのでよくわからないのである。
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わからないけれども、民間の調査会社などによると、総売上高は1500〜2000億円超で、経常利益率10%は固いのだそうである。そしてこの売上の60〜70%がAV関連なのだそうである。AVはやっぱりすごいのである。それにしてもグループ各社のあいだでの金の流れがはっきりしないというのは困りものである。
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で、本題というか、本筋に戻るのである。ポルノ非解禁国である日本なのにAVのモザイクはなぜ無意味なほど小さく薄いのか? である。いまやインターネットでガンガン海外のポルノが入ってくるとはいえ、日本で丸見えはご法度なのである。
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と、ここに思いがけないお方が突然、現れたのである。元首相、現東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員長の森喜朗(78)である。先に紹介した「CA」創業の地であり、現在も流通センターのある石川県加賀市から現れたのである。ここは選挙区でいうと石川県第2区、喜朗の地元である。
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そういえば、喜朗がなぜあんなにエラそうなのか? これも疑問だったのである。元首相とはいえ、2012年11月の衆議院解散を最後に議員を引退した男なのである。それがいつのまにか東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員長の椅子に座っているのである。
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エラい喜朗は記念エンブレムのデザイン盗用問題にもシラッとどこ吹く風なのである。もうひとついうと、首相時代「IT」を「イット」と読んだ男である。あまり関係ないが。もう少し控えめにしていてもよさそうなものなのである。なんだか、ふうん、である。
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しかしこれで2つの疑問が同時に解けたような気がするのである。前述の1999年11月のDMM.com創業、さらに2000年4月のDMM.comラボ設立は、ちょうど喜朗が首相の地位に登り詰めようとしていた時期なのである。世のなかやっぱり金なのかなあ、という印象を受けるのである。
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そもそも「CA」グループに、猥褻物を取り締まる警察も、税金の公平な徴収をはかる国税庁も、健全な企業間競争を監督する公正取引委員会も関心を示さないのが不思議なくらいなのである。しかしそれがはじまるのは、森喜朗が完全失脚してからだろうと思うのである。
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ここから先も、追いかけていくといろいろ出てくるみたいなのである。登場してくる人物も多彩なのである。犯罪事件も顔を出すのである。パンドラの匣である。もし興味があれば、「北都 CA」で検索してみてほしいのである。きっと日本のミステリーゾーンがあなたをウェルカムである。(了)





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