「嵐」の通算15枚目のアルバム『Are You Happy?』が苦戦している。10月 25日付ランキングでの売上総数は約31.6万枚(正式発売日は10月26日)。前作『Japonism』(2015年10月発売)の初日売上41.3万枚と比較すると約10万枚、23%のダウンである。ほかから見ればいずれも夢のような羨ましい数字ではあるけれども、「嵐」としては確かに厳しい。
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この事態をいち早く察知したジャニーズ事務所は、10月26日に公式サイトで「緊急告知」を行ったのである。アルバムの発売と5大ドームツアー(11月11日スタート)の開催を記念して、「嵐から皆さまへ感謝の気持ちをご用意させていただきました」なのだそうである。ついてはアルバム通常盤の「ユーザーコード」を保管しておくように、である。なにかオマケでもくれるつもりらしい。
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予約状況を見てこりゃイカン!! と慌てて泥縄式に動き出した特典商法である。なんというお安さ!! プライドのカケラもない、まるでバッタものかバナナの叩き売りの感覚である。こういう、ほんとうに目前の数字だけを追いかけるマーケティングがやがては自分の首を絞めるというあたりまえの道理がおわかりになっていないのであろうか。
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宇多田ヒカル(33)の新譜『Fantome』(9月28日リリース)が通常版のみの発売でオリコン週間アルバムランキングで3週連続1位を記録し、Hi-STANDARDが事前告知一切なしで発売した16年半ぶりのシングル『ANOTHER STARTING LINE』(10月5日リリース)が初週13.6万枚を売り上げて10月17付オリコン週間シングルランキング(10.3〜10.9)にトップで初登場したという事実が一方にはあるのである。ゴミステーションに吊るすカラス除けをやたら増やしてもらっても困るのである。すぐに効き目がなくなるし。
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こうした音楽制作に携わる基本姿勢の問題はさておき、「嵐」の“マイナス10万枚”の原因はなにかいろいろと取沙汰されている。『デイリーニュースオンライン』(2016年10月30日配信)の解説はこうだ。
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《それにしても、この1年でなぜ売り上げが下降してしまったのか?
「去年9月には大野智(35)、今年は二宮和也(33)の熱愛が週刊誌で報じられました。その上、いずれもSNSで彼氏の存在をアピールする“匂わせ女子”だったこともあり、女性絡みのスキャンダルでメンバーに失望するファンが続出したんです。また、嵐といえばコンサートチケットの高額転売が横行している関係で、正規ルートのチケットを入手できるファンはほんの一握り。なかなかコンサートに参加できず、最近ではHey! Say! JUMPやジャニーズWESTなど、若手グループに流れるファンが多いようです」(ジャニーズに詳しいライター)
平均年齢33.6歳の嵐。彼らの天下はいつまで持つのだろうか?》※原文ママ
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“ジャニーズに詳しいライター”は、たいへんファンとファン目線に近いところで書いておられるようである。「嵐」に対してはいくつかの不満があって、それがファン離れを起こしているように見える、ということであろう。ジャニーズに詳しくない素人はこれをそう読む。なんだかイヤミじゃのう。
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もうひとつ、『ギャンブルジャーナル』(2016年10月30日配信)のヨミはこうだ。
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《一部では昨年の大野智や今年の二宮和也の熱愛報道により、ファン離れが加速したという情報もあるが、もはやそういった問題ではないという声も......。
「SMAP解散騒動によるジャニーズ事務所イメージの低下、若手の有望株であるHey! Say! JUMPの度重なるスキャンダルを考えれば、嵐の熱愛報道など大したインパクトはありません。ジャニーズ全体のイメージが悪くなったことで、嵐にも影響が出ていると捉えるほうが納得がいきますね」(記者)
SMAP解散騒動によって、メリー喜多川副社長を中心とした幹部の横暴などがささやかれ、これまでは何となく許されていたテレビ出演の「ジャニーズ偏重」も頻繁に叫ばれるようになる始末だ。テレビ朝日の会長が「事務所ごとの優遇はない」という趣旨の発言をしたことも話題になった。
「CD売上はダントツの1位ですし、当分ジャニーズの力は大きなままでしょうが、5年後どうなっているのかといえば不透明な部分もあるでしょうね。
かつてはアイドルの象徴としてメディアの頂点にいたジャニーズですが、価値観やエンタメが多様化した今、ジャニーズでさえその中の一つに過ぎない扱いになってしまうかもしれません」(同)
大きなターニングポイントを迎えているジャニーズ。今後の展望は果たして》
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「果たして」で終わるところがなかなかオサレである。ここではつまり、SMAPの解散やHey! Say! JUMPのたび重なるスキャンダルなどによってジャニーズ事務所全体のブランドイメージが低下していることを、「嵐」の“マイナス10万枚”の原因として挙げているのである。
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両方とも当たっているのであろう。しかし、そろそろもう少し根本的な問題にも着目しておく必要があると思うのである。なんのための必要かはわからないけれども。
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かんたんにいってしまうと、供給過剰なのである。ジャニーズ事務所所属でCDデビューを果しているグループが15組、これにさらにジャニーズJr.および研修生が200名弱いる。ジャニーズJr.にもファンはついている。おそらくデビュー組はそれなり微妙にキャラクターやターゲットが分けられているのであろうけれども、なかなかわかりづらい。受け取り側としても差別化しにくい。
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たとえばHey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、Sexy Zone、A.B.C-Z、ジャニーズWESTのメンバーはほぼ同年代である。でもってやっていることは、いってしまえば歌とダンスとバラエティである。みな同じ。こういう状態で選択肢がたくさん用意されていることは、かえって不親切である。
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数が増えると、その数自体がアイドルグループのスタイルそのものと矛盾してくる。ここにA、B、C、D、Eの5人のメンバーからなるグループがあったとして、ジャニーズのやり方だと、それぞれにファンとなるターゲットを振り分けながら選抜されているように思うのである。逆にファンの立場からいうと、誰でも好みのタイプが見つけられるようにグループがつくられている。
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こうしたやりかたでは、いくつグループをつくっていっても全体のキャラクターのバリエーションはA、B、C、D、Eの5タイプである。どこを切っても同じ金太郎飴。全体としては各タイプがダブって何人もいることになる。ややこしい。スターの輝きが打ち消し合ってしまう。グループごとのカラーをはっきり区別して打ち出せればいいのだけれども、それが難しいのはAKBでも証明済みである。
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いわゆるこれまでのジャニーズ系タレントの枠を超えるグループを誕生させられればいいのである。しかし現状ではただ拡大再生産の道を歩もうとしているように見える。もっぱら美少年の中性的魅力をよしとするジャニー喜多川の限界である。
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さらに困ったことに、供給が過剰になっている一方で、市場は小さくなっている。具体的なデータはないけれども、おそらくアニメーションやゲームにそうとう食われているはずである。ファンになってくれる女の子の数も、そして彼女たちの自由になる時間も金も限度というものがある。これまではたとえばBLものというアニメやコミック、ライトノベルとの相互作用で市場の広がりが期待できたかもしれないけれども、これからは逆にせめぎ合いである。
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ほんとうに大ザックリではある。たとえば「嵐」がデビューした1999年の日本の18歳人口は約155万人であった。2016年では推定119万人である。36万人も減少している。新規参入してくるファンの数が頭打ちになっているのである。これにブランドイメージの悪化や業界内での影響力の衰退、さらにはこれまでの専横に対する反発などを加えて考えると、ジャニーズ事務所はほんとうに危うい崖っぷちに立たされているといわなければならないのである。
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打つ手はふたつであろう。Hey! Say! JUMP、Kis-My-Ft2、Sexy Zone、A.B.C-Z、ジャニーズWESTのなかのいずれか2つ、できれば3つを解散させること、さもなくば地方の拠点をつくって移動させること、そしてもうひとつはさっさと引退を決め込もうとしているらしいジャニー喜多川(85)、メリー喜多川(89)に死ぬまで頑張ってもらうことである。
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うむ。こんなことを考えながらテレビを観ていたら相葉雅紀(33)が四国でショウガを掘って齧っていたのである。四国名物、四万十ショウガ。『相葉マナブ』(テレビ朝日)であった。なんというのか、相幅雅紀、アイドルという積み増しがまったく感じられない仕事っぷりであった。「嵐」であることさえ忘れてしまっていたのかもしれない。あれではただの、ふつうの体験レポーターである。
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相葉雅紀の隣りで同僚ヅラでボケッと突っ立っていたハライチ澤部佑(30)とアンジャッシュ渡部建(44)も悪い。悪いけれども、SMAPと「嵐」、煎じて飯島三智(58)と藤島ジュリー景子(50)の力量の違いをまざまざと見せつけられてしまった感じがするのである。
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キャイ〜ン天野ひろゆき(46)が香取慎吾(39)のことを“王子”と呼び続けていた『香取慎吾の特上! 天声慎吾』(日本テレビ)を思い出していただきたい。いまのジャニーズ事務所の危機が実感されるであろう。(了)
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