あまり書きたくないけれども書いておこう。評論家・西部邁(享年78)の“自裁死”についてである。結論からいわせていただければ、思想家の死としては明らかな敗北であり、もしこれが完璧に計画通りに実行されたものであるならば、“自裁死”をことさら美化させないことにおいて見事であったと私は思う。生きる人間は文字通り死者のうえを踏み渡っていくしかない。
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事実関係をできるかぎりつまびらかにしよう。まずは当初から指摘されていたいくつかの謎についての記事、それから自殺幇助の容疑者逮捕の記事である。読むのが面倒であれば飛ばしていただいてかまわない。
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◆『産経ニュース』2018年3月19日配信
【西部邁さん「自裁」に深まる謎 口の中に瓶、体にロープ 留守電に異音 タクシー使わず移動?】
《 東京都大田区の多摩川で入水自殺したとされる評論家の西部邁(すすむ)さん=当時(78)=の死をめぐり、さまざまな謎が渦巻いている。生前から自らの死について語り、現場には遺書も残されていたが、死因は不明のまま。第三者が自殺を手助けした可能性も浮上し、警視庁が自殺幇助(ほうじょ)などの容疑を視野に捜査していることも判明した。「自裁」の背景に何があったのか。
東急東横線田園調布駅から約1キロ、野球グラウンドやテニスコートなどが並ぶ河川敷。1月21日早朝、家族は変わり果てた西部さんの姿を見つけた。
捜査関係者によると、川の中で見つかった西部さんは工事現場用のハーネスを着用。そこから長さ20~30メートルのナイロン製ロープが伸び、土手の樹木に巻かれていた。体が流されないよう固定したものとみられるが、手の不自由だった西部さんが1人で作業できたのか-との疑問が呈された。
当初は溺死とみられていたが、司法解剖の結果、大量の水を飲んだような形跡はなかった。口の中にはフィルムケース大の空の瓶が入っており、死亡との関係は不明だが「人為的に入れられた可能性が高い」(捜査関係者)という。警視庁は今後、詳細な鑑定で死因を究明する方針だ。
最後の足取りも分かっていない。同居する西部さんの長女(49)によると、事件前夜は親子で東京・新宿のバーを訪れていたが、21日午前0時ごろ、西部さんが「人と会う約束がある」と言って長女を先に帰宅させた。約1時間後、長女の携帯に西部さんから着信があり、留守番電話に「ザー、ザー」という音だけが残されていたという。
バーから河川敷までは、直線距離でも10キロ以上。タクシーで移動した様子はなく、何者かが車で迎えにきた可能性がある。また、現場から発見された5通の遺書はワープロソフトで書かれていたが、普段は長女が口述筆記しており、長女のパソコンを使用した形跡もなかった。
生前、自著などで「生の最期を他人に弄り回されたくない」とし、「自裁死」を選択する可能性を示唆していた西部さん。警視庁は関係者から事情を聴くなどして全容解明を急ぐ。》
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新宿のバーから事件現場の多摩川河川敷への移動、両手が不自由だったにもかかわらず工事現場用のハーネスを着用し、そこから長さ20~30メートルのナイロン製ロープで河川敷の樹木に繋いでいたことには、すでに逮捕された2人の助けがあったことがわかっている。
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ワープロソフトで書かれた5通の遺書も幇助者の仕事であろう。また新宿のバーで長女と別れた約1時間後、「長女の携帯に西部さんから着信があり、留守番電話に『ザー、ザー』という音だけが残されていた」という“ザー、ザー”は多摩川の流れの音に違いない。つまり西部邁は死の直前にもう一度長女に連絡を取ろうとしていたわけである。
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残る謎はこの部分である。
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「当初は溺死とみられていたが、司法解剖の結果、大量の水を飲んだような形跡はなかった。口の中にはフィルムケース大の空の瓶が入っており、死亡との関係は不明だが『人為的に入れられた可能性が高い』(捜査関係者)という」
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つまり西部邁の死は入水自殺ではなかったのである。この点、死因については有力な報道がある。
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「警視庁によると、口には粉末の入った小さな瓶を含み、口のまわりにはネックウオーマーが巻かれていた」(「NEWS24」2018年4月6日配信【西部邁さん自殺ほう助「死生観尊重」背景は】)
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吐き出さないようにネックウォーマーで口を塞いでくわえていた小瓶になにが入っていたのかといえば、毒物以外には考えづらい。最期のようすをその他の報道と合わせて推察すると、ハーネスを着け両手が縛られた状態の西部邁に毒薬入りの小瓶を渡してくわえさせ、ネックウォーマーで口を塞ぎ、仰向けにする。毒物の粉末が嚥下されて死に到ったのち、死体を多摩川に流す、ということであったのであろうと思われる。
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でもって、4月5日にその幇助者が逮捕された。
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◆『朝日新聞デジタル』2018年4月5日配信
【西部邁さんの自殺を手助けした疑い、知人の2人を逮捕】
《 評論家の西部邁(にしべすすむ)さん(当時78)が今年1月に死亡した際、西部さんの自殺を手助けしたとして、警視庁は5日夜、いずれも西部さんの知人、東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の子会社社員窪田哲学(45)=東京都江東区福住1丁目=と、会社員青山忠司(54)=埼玉県上尾市富士見2丁目=の両容疑者を自殺幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕し、発表した。ともに容疑を認めているという。
捜査1課によると、窪田容疑者は「先生の死生観を尊重して力になりたかった」、青山容疑者は「20年以上お世話になった先生のためにやらなくてはならないと思った」と述べているという。窪田容疑者は、西部さんが出演していた番組の担当プロデューサーだったと説明しているという。
逮捕容疑は、1月21日未明、大田区田園調布5丁目の多摩川付近まで西部さんを車で連れて行き、工事現場などで使う安全帯やロープを装着させた上で川に入水させて自殺を手助けしたというもの。
現場からは遺書が見つかり、警視庁は自殺と断定したが、西部さんが病気の影響で手が不自由で、ロープの装着などを一人で行うのは難しいとみて捜査。防犯カメラの映像などから2人が浮上したという。
西部さんは1月20日午後11時50分ごろ、新宿御苑付近で娘に「これから人と会う」と言って別れていた。直後、新宿区内を窪田容疑者と一緒に歩く姿が防犯カメラで確認されたという。
MXテレビのホームページによると、青山容疑者は1月10日に収録された番組で西部さんと対談。西部さんは「(人間にとって)本当に幸いなのは死ねること」などと述べ、西部さんが亡くなった後の同月27日に「生前最後のメッセージ」として放送された。》
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ずいぶんと他人さまの手を煩わせた“自裁死”である。しかもいってみれば社会への絶望があったにせよ、どこまでいっても個人的な死である。三島由紀夫の死と並べては論じられない。ほかにもいろいろ書きたいことはあったつもりだけれども、その気力も萎え果てた。最後に西部邁の長女のコメントが読める記事をご紹介しておこう。
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◆『読売新聞』2018年4月6日配信
【西部さん長女「自殺ほう助は断ってほしかった」】
《 西部邁さんの長女(49)は5日夜、読売新聞の取材に応じ、「逮捕された2人と父はテレビ番組だけでなく、深い親交があった。父は自裁死したいと漏らしていたが、自殺のほう助を頼まれても2人には断ってほしかった」と話した。
西部さんは晩年、手などが不自由になり、著作は長女に口述筆記してもらっていたという。
長女は、「父の好きなご飯を作るなど、人生には楽しいことがあると伝えていた。父はそれ以上に自殺を望んでいたのだろうか」と悔やんだ。》
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死ぬときは誰も巻き込まずひとりに限る。まして自殺ならなおさら。(了)
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