2016年2月11日木曜日
み〜んなホサれてカラッカラ。芸能人残酷物語
安全保障関連法案反対デモへの参加やそれにつらなる発言で、石田純一(62)が一時、干されそうだったのだという。また、伊勢谷友介(39)がSMAP騒動について“あほくさ”とTweetしたことで干されそうになっている、とも聞くのである。そのTweet(2016年1月21日)の内容は以下の通り。
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「あほくさ。スマップの事なんかより、未来において大事な選択肢が国会で選択されてる」「人が求めるからだというエクスキューズ(口実)で、大事な事から目をそらし、どうでもいい事に、注視させるメディアに、どんなリテラシーがあるんだろうか。。。」
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SMAP騒動に国民の目を向けさせておいて、その間に重要案件がさっさと国会を通過させられているのではないか、といっているわけである。つまり、もしかすると大衆操作が行われているのではないか、という話である。確かにメディアがときの権力に都合のいいように利用されることはある。
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有名なのは、いささか古いけれども、いわゆる阿部定事件である。情夫を殺した女がそのチンチンを切り取り、持ち歩いていた事件である。この事件が起こったのは1936年5月18日であり、その約3ヵ月前には2.26事件が起きているのである。
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事件実行に到るまでの経過がいろいろとあり、阿部定への判決は懲役6年であったから、実態はそれほどの凶悪大事件というわけでもないのである。とはいえ、殺された石田吉蔵にはまことに申しわけないことである。
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それが猟奇的な事件として猛烈な報道合戦が行われた背景には、2.26事件の余韻からいち早く国民の目を逸らそうとした当局の思惑があったといわれているのである。たとえば2.26事件で蹶起した将兵を英雄視するような風向きになってはマズかったのである。
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であるから伊勢谷友介のいっている内容は、別に咎められることでもなんでもないのである。そのようにして、いつも注意深くメディアに接することは大切なことなのである。伊勢谷友介に唯一落ち度があったとすれば、あまりにイノセントにそれを発信したことであろう。
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それは、結果的にいわゆる政治的な発言をした芸能人を“干す”行為がほんとうにあるのだと印象づけ、いっそうの自粛を呼び込むものである。伊勢谷友介のTweetにあった政治状況やメディアに対する批判に軸足をおいて眺めれば、そう見えるのである。いまはすでにそういう、とても窮屈な時代なのである。
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で、今回、ここで取り上げるのは、その“干す”という行為である。仕事を与えず干し上げることである。つまり兵糧攻め+省き、芸能界からの放逐である。そういう恫喝、芸能人としての抹殺がまかり通っているのである。石田純一、伊勢谷友介ばかりでなく、印象的な過去の例には鈴木亜美(34)、セイン・カミュ(45)、北野誠(57)などなどがいて、ただいま現在も能年玲奈(22)が干され中である。
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“干す”という理不尽な“お仕置き”に根拠を与えているのは、“事務所縛り”という慣行である。日本の芸能人は、所属する事務所の諒解なしには独立はもちろん、仕事を選ぶことすらできないのである。その逆に、芸能人として力不足ではあっても、事務所の力で仕事に押し込んでもらうことも多々あるのである。
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こうした状況に、俳優の立場からノーを唱えているのが小栗旬である。有力事務所の意向そのままのキャスティングでいい映画が撮れるはずがない、というのがその主張である。そのために俳優の労働組合を構想しているものの、なかなか前進してはいないらしい。
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「『自分は誰かに殺されるかもしれない』くらいの覚悟で戦わないと、日本の芸能界を変えるのは相当難しいっすね」なのである。しかもこれ、2014年8月発売の『クイック・ジャパン』(太田出版、vol.115)での発言なのである。もう1年半も経っているのに、なんの進展も聞かないのである。
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“事務所”縛り同様の慣行は、約半世紀前に映画界にあったのである。悪名高き「5社協定」である。5社とは松竹、東宝、大映、新東宝、東映であり、のちには日活も加わっていたのである。ほとんど邦画界のすべてである。おっと、ピンク専門の大蔵映画を忘れてはいけないのである。しかし協定の仲間には入っていなかったのである。もっともなことである。
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で、メジャー5社は1953年9月10日に、「各社専属の監督、俳優の引き抜きを禁止する。監督、俳優の貸し出しの特例も、この際廃止する。」という申し合わせにサインをしたのである。この協定に反して動いた監督、俳優は例外なく“干された”のである。
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5社協定は結局、テレビ放送の台頭によって映画が斜陽になったのにともない、ほとんど自然消滅に近いカタチで1971年に反古にされたのである。では現在はどうなのか、というと過去の5社協定にそっくりなものがあるのである。“音事協”である。
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“音事協”、「一般社団法人 音楽事業者協会」である。Wikipediaには「タレントの引き抜きによる事務所間のトラブルの防止や著作権・肖像権などの権利確立、タレントの雇用環境の改善等を目的として1963年に創立された、最大規模の業界団体である。」と紹介されている。日本の芸能プロダクションの主要どころがこぞって加盟するこの団体が、実質的にタレントの自由を奪っているのである。
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もちろん、営業の自由→職業選択の自由は憲法で保証されているのである。現実には、たとえばライバル会社への転職を社内規定で禁止している企業はある。しかし、その規定自体が法的に無効だと判断される可能性も高いのである。一般的に禁止期間が1年以内だと有効、3年以上になると無効だとされるらしいのである。15年は長かったよねえ、トシちゃん。
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弁護士の紀藤正樹(55)は、2016年1月19日付のブログでこう発言しているのである。SMAPがあの異様なテレビ生謝罪を行った、その翌日である。たいへんよくこの問題が説明されているので、引用させていただくのである。少し長くなるが、ぜひ目を通していただきたいのである。
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《僕は、芸能人の事務所縛りは、日本に、はびこる巨悪の一つであると思っていますので、備忘録として、この記事をアップしておきたいと思います。
この事務所縛りにより、これまでも、多くの才能ある芸能人やアーティストが泣かされてきたことか。事務所縛りは、労働基準法上も、独占禁止法上も、不正競争防止法上も、多くの法的問題をはらんでいると思っています。
もちろん単なるわがまま的な契約違反は許すべきではありませんが、基本的に事務所縛りの問題は、プロデュース料やアイデア料、著作権料などの金銭解決で行うべき問題であり(もちろん中には、損害賠償金などで解決されるべき問題もありますが)、それが現代的な芸能界の在り方だと思っています。芸能人の労働組合があるハリウッドでは既にそうなっています。
→もっと詳しく知りたい方は、映画俳優組合 The Screen Actors Guild、略称:SAG参照。なお2012年に米国テレビ・ラジオ芸能人組合と合併し、SAG-AFTRAとなった。⇒SAG-AFTRAのホームページ=但し英語
日本も、芸能界と広告業界と企業の、各相互の間の関係は、現に、そうなっています。契約違反は、当然に損害賠償請求の問題ですし、知的財産関係の問題も、基本的に、契約の内容によって、その帰属が決まります。そこに、金銭的利益が発生する仕組みとなっています。
それが一つ(原文ママ)、日本の芸能界のみが、独立することを許さない、独立すれば芸能界を追い出すという、極端な芸能人縛りを行っています。》
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しかし、それにしても封建時代でもあるまいに、と思うのである。“事務所縛り”には、私たち観客、視聴者も縛られているのである。ある日、見たい俳優、タレントが事務所の都合で見られなくなるのである。
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そしてその底には、どうせ俳優、タレントのことなどすぐに忘れるだろう、そんなに真剣に見ているわけがないさ、という私たちに対する、そしてそういう芸能に携わっている自分たち自身への侮りがあるのである。悲しいではないか。「一般社団法人 音楽事業者協会」は、そこにかかわるあらゆる人々の誇りを踏みにじっているのである。(了)
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