2016年2月18日木曜日

飢餓の時代に、ますます汚く食う日本人





昨日の夜、なにを食べたのか思い出せない。わずか6時間ほど前のことなのだが記憶にない。あ、思い出してきた。鮪の照り焼き、イカの粕漬、キムチ鍋風味噌スープ、サラダである。サラダといってもレタスだけ、キムチ鍋風味噌スープというのは、なんのことはない、前日のキムチ鍋の残りに水と粉末だし、味噌を入れて加熱し直したものである。日韓共同による残りもの片付け汁である。



これで上等の部類である。たまには魚肉ソーセージのみ、鯖缶のみ、という夜もある。食べることにあまり興味がないのである。したがって、過去になにを食べたかを思い起こすこともふだんはしないし、次はなにを食べようと考えることもないのである。



それと、食べることにはやはりいささかの後ろめたさがあるのである。なにしろ国連の調査によると、世界で約8億500万人が飢餓に苦しんでいるのである(「世界の食料不安と現状2014年報告(SOFI2014)」)。全世界人口の9人に1人である。もし地球が読売ジャイアンツのレギュラーメンバーなら、阿部慎之介(36)あたりが、食糧不足からの栄養失調が続き、体調を維持できない1人なのである。なぜ阿部慎之介なのかはわからないのである。



しかし発展途上国では、年間約500万人の子どもが、栄養不足のために5歳になる前に死んでいるのである(国連世界食糧計画2008)。電気、水道のたぐいなら節約しろといわれればかえってムダにしてやるいじけた私だが、食物の場合はいささか相手が違うのである。



 

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いやいや、いちいち七面倒くさいことをご苦労さま、といわれそうである。そんなふうに小難しく考えてはちっともおいしくないでしょう、ともいわれそうである。確かに七面倒くさい、しかしそれがなにか? ちっともおいしくないくらいがなに? である。同時代に生きている人間としてあたりまえの話いであると思うのである。



若いころはこんなことは考えなかったのである。空腹を満たすのに忙しく、全人類の皆さまのことなど想像する暇はなかったのである。ガツガツと人並み以上に食べていたのである。餓鬼とはよくいったものである。



なぜ世界の9人に1人もが飢餓状態にあるかといえば、富が偏在しているからである。少なくとも、世界で10億人程度が1日1ドル以下の生活をしているのである。その反対に、世界で最も裕福な200人の資産は、人類すべての年収の約40%にも達するのだそうである。そういう世界で生きているのである。



しかし私たちの世間、そこはさっさとスルーなのである。グルメブームがすっかり定着、というのもだっるーいくらいのくいしん坊! 万才なのである。テレビを点ければ朝も早よから天気予報のあいだをぬって、せっせとメガ盛り特集だの激辛特集だのイチ押しランチ特集だのであふれ返っているのである。で、食い散らし、食べ残し、飽食、呆食。



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ただ食べることだけが楽しみで、という切なさ、世知辛さもわかるのである。わかるのではあるけれども、あまりにも目の色を変えすぎているように思うのである。それから、それで経済が回っている、それで生活を支えている人もいる、という考え方である。そのためにいつまでも悪弊がただされないのだとしたら、本末転倒である。



そんなに食いたいか? もう十分食ってるじゃねーか。という話である。テレビカメラに向かってなにものかを口に入れ、その口で歯ごたえがどうの、舌触りがどうのなどというのは、飢餓や富の偏在の問題以前に、感受性、美意識の問題である。



クレージーキャッツの谷啓(享年78)は、バンドメンバーとさえ一緒に食事ができなかったのである。食べるところを見られるのは恥ずかしいことであるという感覚が、半世紀前の日本にはあったのである。それを、まだものが入っているというのに、しかもテレビカメラの前で大口を開けて平気な連中がいるのである。



教養とは、文化理想を体得し、それによって身につけた創造的な理解力や知識のことである(by広辞苑)。そのことからいえば、テレビカメラの前で嬉々として箸を使い含羞のそぶりさえも見せぬキャツラ、無教養はなはだしい、といわなければならないのである。



 

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それを、いまやいい年したジジイまでがナニがうまいカニがうまい、あーうまかったウシ負けた、とかしましいのである。人は生きてなにごとかをなすために食うのだと思うのであるが、ただ食うだけで終わっている感じがするのである。ただ食うためだけに生きているのである。



以前にも書いたかもしれない。生きものは低級なものほど食餌のために時間をかけているのである。というより、人間以外、やれ獲物を捕らえる、それ餌を探す、そのためにほぼ生きているすべての時間を費やしているのである。そういう人間以外に近いヤツらに味がわかるのか? である。



なんだかどんどん腹が立ってくるのである。なかでも最近とくに腹が立つのが渡部建(43)である。「健」ではなくて「建」、人でなしの建である。趣味は「食べ歩き」である。恋愛に使える“恋愛心理学”もたくさんもっているらしいのである。



ついでに好きな漫画家は弘兼憲史(68)だそうである。人でなしの建、ぜんぜん駄目なのである。ちなみに「食べ歩き」と聞くと、食えるものをあさってクンクン鼻を利かせながら歩く野良犬をイメージするのは私だけであろうか?



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で、人でなしの建のご著書『芸能界のアテンド王が教える 最強の店77軒』(文芸春秋、2014)である。アテンド王!! オムツがデカいわけではないのである。オツムは軽いのである。いろいろと介添え、ご接待するのがお上手らしいのである。



建、食い意地だけではないのである。なにからなにまでがいやしい男なのである。なので佐々木希(28)にはさんざ便利にコキ使われたあげくポイ捨てされればいいのである。そのアカツキにはご紹介いただいた店で乾杯してやってもいいのである。



こういう建みたいな人間は、昨日の夜なにを食べたか憶えているのであろうか? たぶん憶えられないのでいちいちメモしているのであろう。で、記憶からなくして、またあそこのあれがおいしい、ここのこれがおいしい、とはじまるのである。



あー、つまらん、つまらん、まったくつまらん!! (by大滝秀治)どんなにうまいメシだって、食ってしまえばウンコになるしかないのである。和食も洋食も中華もスイーツも、みんなウンコの素なのである。お天道さまの光とウンコは誰のところにも平等にやってくるのである。(了)




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