2016年2月8日月曜日

眉毛は感情を示す。だから弱い男は剃りたくなる。清原和博も





清原和博(48)が逮捕(覚醒剤取締法違反容疑)されてからというもの、毎日テレビで否応なくご尊顔を拝しております。あれは2月2日夜のことですから、もう1週間にもなろうとしています。なかには桑田真澄と肩を重ねて笑っているPL学園時代の写真などもあったりします。つい、人の一生、人生などを思い、ボンヤリとしてしまいます。和博でボンヤリ。ヒロボン。意味はありません。



年齢とともに和博の顔も、もちろん、ずいぶん変わっています。骨格がしっかり頑丈になって壮年期のオスの迫力が漂うと同時に、クスリのせいでしょうか、すでに老いの兆候も見えています。ゴリラでいえばシルバーバックのお年ごろです。壮年期のオスゴリラは肩甲骨のあいだから肩の辺りの毛が銀色に変るのです。なぜいまゴリラか、ですけれども。



でもって、肌を灼いたとか髭が生えたとか黒目がうわずって三白眼ぽくなったとか、これまで和博の顔面上に起きたいろいろな出来事のなかで、とくに目を引くのは、やはり赤黒い肌と強力ホワイトニングな歯、それと眉毛です。人工的にいじっているところは目立つわけです。



高校時代の和博の眉毛はくろぐろとしていて、野原しんのすけ(永遠の幼稚園児)を彷彿とさせる立派なものです。それをなぜ、いまのように細く短かく薄い眉にしたのか? 男と眉メイクとは? ということを考えてみようというのが今回のテーマです。



男の細くととのえた眉毛がふつうに世間に受け容れられるようになったのは、つい最近になってからのことです。1998年の長野冬季オリンピックのときには、『週刊文春』(1998年2月26日号)が「金メダリストの条件は『茶髪・眉ゾリ・父親なし』」なんて見出しを掲げていました。それにしてもゲスですね。私は喜びました。すみません。



 

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ちなみに『茶髪・眉ゾリ・父親なし』で揶揄されていたのは、スピードスケートの清水宏保(41)、ジャンプの船木和喜(40)、モーグルの里谷多英(39)です。清水と船木はわかりますが、里谷多英は女です。確かに声はずいぶん低かったですけれども、眉ゾリしていいじゃないですか。父親なしでいいじゃないですか。



それよりももっとむかし、世の顰蹙を盛大にかいながらも細眉を愛したのはヤンキーたちでした。1980年代の前半くらいからでしょうか。映画『ビー・バッブ・ハイスール』第1作の公開は1985年です。1967年生まれの清原和博がPL学園に入学したのはたぶん1983年です。つまり、和博の高校生時代には、おそらくすでに男の眉メイクという選択肢はあったはずなのです。しかしもちろん野球少年にそんなことが許されるわけもありません。



日本高校野球連盟が眉を細く剃りすぎることを禁止する通達を出したのは2004年になってです。つまりそれまでには、野球少年たちにも眉メイクがそうとう浸透していたわけです。清原和博の高校時代から20年後です。なんといいますか、風俗の変化というのはめまぐるしいようでいて遅いような、1本の線で捉えられるものではないようです。



で、高野連の通達が出された2004年、関東のある野球少年からは「丸刈りが基本の僕らには、眉ぐらいしかおしゃれができない」という反発があったそうなのです。気持ちはわかります。でも、なにかがすごくおかしい感じがします。



それはおしゃれアイテムとしての眉毛が、体全体からすればあまりにも小さいからだと思います。その小さなところにキムタクが宿っても……、ということです。グリグリ頭の野球少年の眉毛がキムタク……。で、本人は喜んでいるけれども、たぶん他人にはあまり気付かれていない、と。



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少し話が逸れます。最近、欧米では陰毛の処理はむかしからの常識である、という話をしばしば耳にします。女も男も下腹部は完全な無毛状態か、カットして長さ、形を整えているかである、ということらしいのです。ですからモッサリした陰毛は恥ずかしい、という風潮に、日本もなりつつあるらしいのです。私は人さまの陰毛のことなど知りませんけれども。



「バカいってんじゃねーよ、そんなもん」というのは、この話を聞いた近所の飲み屋のオヤジの第一声です。オヤジによると「だってオレらガキのころ、輸入物の『プレイボーイ』なんかどっかから探してきてさ、“毛が見える!! 毛が見える!!”って大騒ぎしてたんだからさ」なのです。「みんな、どんな女でもモッサモサだったよ。剃ってる外人なんかいなかったって」なのです。「インモーで興奮したんだもん」なのです。



うむ。つまりピンナップガールさえモッサモサだったということは、きっとオヤジのいう通り、“欧米ではむかしから陰毛の処理が常識”っていうのはヨタ話に違いないのです。オヤジの“ガキのころ”は1960年代末だそうです。



まあ、オヤジの“ガキのころ”から約半世紀、欧米の陰毛常識がいくらか変化したということはあるかもしれません。しかし、先進8ヵ国でいまだに陰毛モッサモッサは日本だけ、みたいなニュアンスは明らかに違いますね。



脱毛業界の陰謀、というのがオヤジの推論です。私もそう思います。日本人の欧米コンプレックスにつけ込んでいるところも見え見えで、あざとい代理店がさもやりそうなことです。私たちはまたマーケティングにしてやられてお股をツルツルにしてしまうのでしょうか? 『STAR WARS』の次は、陰毛処理のスティルスマーケティングにコロリ、なのでしょうか。



 

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戻します。ヤンキーの細眉以前、男が眉毛をいじるといえば、チンピラヤクザの薄眉または全剃りでした。芸能の世界では『仁義なき戦い』(深作欣二、1973〜)で活躍したピラニア軍団の志賀勝(74)の印象が強烈です。ああ、なんだかわかってきました。



男が眉毛をいじるのは、もちろんそれがカッコイイと思うからです。そしてそれは2004年の関東の野球少年の場合は、おしゃれでカッコイイという認識です。長野の金メダリストもです。おしゃれでカッコイイ。しかしそれ以前からもうひとつの眉毛美学があったわけです。強そうでカッコイイ、です。



強そうな眉毛といえば、むかしは太くて濃い眉毛でした。たとえば弁慶とか西郷隆盛はものすごく濃いイメージだったのでごわす。それが現代においてはあまり一般的ではありません。太眉=強いイメージは、たぶん一世風靡セピア(1984〜1989)にいた武野功雄(52)やゴルゴ13が最後ではないでしょうか。



『スーパー・エキセントリック・シアター』の小倉久寛(61)、子役上がりのオネエ加藤諒(25)、熱海で斑状記憶喪失になった我修院達也(65)、第81代内閣総理大臣(1994〜1996)の村山富市(91)なんて、皆さん眉毛はとても立派でも、フィジカルは決してそう強そうではありません。富市なんか『進め! 電波少年』(日本テレビ)で、松村邦洋(48)にその眉毛を切られてしまっているのです。



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チンピラヤクザの薄眉または全剃りは強そうで怖くて、だからカッコイイと自任されるわけです。それは、この40年くらいのあいだに、男の強さが「剛」から「凶」に変化したのだ、というふうにもいえます。つまりかつてのような男らしい強さは認められていない、ということですね。



というか、強さ自体が求められていないのかもしれません。ものごとを力づくでなし遂げる時代ではない、ということでしょう。というわけで、これからの男の外見的強さはひたすら凶→狂の方向へ向かうのかもしれません。



ではなぜ薄眉または全剃りは強そうなのでしょうか? それは表情が読み取りにくくなるからです。表情が読み取りにくい→なにを考えているのかわからない→凶かもしれない→狂だろう、ということです。まあ、ヤクザが困り眉では困ります。実際どのくらい強そうになるかは、ご自身で剃ってごらんになればよくわかります。



平安時代の身分の高い女は、自分の生来の眉をすべて抜いて白粉を塗ったうえで、その少し上くらいの位置に眉墨で別の眉を描く眉化粧をしていました。これは日本独自の眉メイクだそうです。いわゆる「おじゃる」です。眉毛がまったくないわけですから、これを眉メイクというのもいささか面妖な感じはします。



大事なのは、なぜ「おじゃる」眉メイクをするようになったのか、です。有力な説明として、やはり眉は感情が強く表れるところだから、というものがあります。つまり、額に描いた眉なら、感情につれて動くようなことがないので穏やかで高貴な雰囲気になる、という美意識です。まるで能面です。



 

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眉には感情が強く現れるというのは、たとえば、「焦眉の急」「愁眉を開く」「柳眉を逆立てる」「眉を曇らせる」という言葉があることからも、よくわかります。あと、徳洲会からの献金疑惑で窮地に追い詰められた前東京都知事の猪瀬直樹(69)の眉の書き方が、状況に応じて強くなったり弱くなったりしていたのも印象的でした。



ですからご自分で剃ってみるまでもありませんね。あ、山ごもりをするときには片方だけでお願いします。そういえばむかしむかし、荻野目重次という凶悪な名前の指名手配犯がいて、私はポスターに印刷されたその名前を、どういうわけか「オギノ・メシゲジ」と読んだものでした。メシゲジ。ああ、眉毛はどうしてこうおかしいのでしょう。



ともかく、路上でメンチを切ったり、いがみ合ったりするときに強そうに見える薄眉、全剃りからはじまって、ヤンキーの細眉、おしゃれな細眉という流れが、ときには重なりあいながら男の眉メイクの歴史にはあるわけです。



ここでもういちど清原和博の眉毛を見てみましょう。やはり細く、短く、薄いです。つまり、おしゃれ眉メイクというよりは、チンピラヤクザの薄眉、全剃りベクトルです。和博、自分を強く見せたかったのです。あたまりえすぎて申しわけありません。



あたりまえのついで、です。強く見せたかったということは、清原和博、男であることのこだわりを見せつけながらも、心根の部分では繊細で小心であるということです。まるでベタで面白くもなんともありませんけれども、それをこんなにはっきり見せてくれる男というのもたいへんめずらしいのではないか、と思います。



男、清原和博。高校を卒業して30年、たどり着いたのがハッタリ、こけ脅しの男の美学だったというわけです。で、たぶん、和博の次に覚醒剤で逮捕され騒がれるのは、眉毛を描いているアイツです。アイツ。ハッタリ以前の、犬のような眉毛のアイツ。(了)




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