2016年2月20日土曜日

最近の中国人観光客はキレイになったと思ったら……





一昨日、知り合いの若い男がニタニタしながらやってきたのである。一緒に出かけるためにこちらが身支度をしているあいだにもずっとニタニタしているのである。どうしたのかと聞くと「お下がりもらったんすよ。台湾人から」と、ダウンパーカの両腕を首の後ろで組んでみせたのである。見たところ新品であった。しかしセクシーではなかったのである。



父親の経営している飲食店にやってきた台湾人のグループ客が、帰国したらもうほとんど着ないからといって置いていったのだそうである。UNIQLOの製品である。こちらへきてから買ったものである。太っ腹である。



UNIQLOといえども最近は高級品なのである。さらに私の場合でいえば、服というものをここしばらく買っていないのである。消費行動における彼我の差、ますます明瞭になってきたのである。21世紀に入るころにさかんにいわれた“こころの時代”、“精神の時代”がいよいよ本格的なのである。私のところだけ。



近所の飲み屋のオヤジにそのお下がりの話をすると「いやいや、とうとうそういう時代がやってきちゃったんだねー」と関心薄そうな反応である。ふだん外国人観光客と接触する機会などないオヤジには新鮮な驚きのはずだと思ったのに、である。「ビジネスチャーンス!!」とおどけてはみせるが、しかしオヤジにそんな気は毛頭ないのである。



日本人に対してさえ、オヤジの店は完全な脱力系なのである。「今日は食べるの駄菓子しかないけどいい?」なのである。外国人観光客向けのサービスを考えるなど、とんでもない話なのである。



まあ、たいへんな日本通の中国系観光客がいるとして、駄菓子しかない飲み屋で満足するようになるまで、あと30年はかかるのである。そんなに長く、店もオヤジももたないのである。したがってこれからと同様、これから先も、中国観光客が訪れて爆食、爆飲するなどということは金輪際ありえないのである。



 

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「でも旅先だからかなー。あの連中、元気いいよねー。なんかエネルギー感がねー」。オヤジ、見ているではないか。それは私も同感なのである。近くにいるだけでなにか伝わってくるものがあるのである。日本人も、むかしはきっとそうだったと思うのである。どうしてそれをなくしてしまったのであろう。きっと“心の時代”だからである。



知り合いの若い男の新しい彼女は、“1年間監禁されて10kg太った女”らしいのである。そのまま事実であれば警察沙汰である。しかし、そのあたりのところはあやふやである。なにしろ学校の成績は優秀だったらしいのだが、ある建築写真集の著者名を「和英併記」であるとずっと思い続けていた男である。こちらもあまり首を突っ込まないようにしているのである。もちろんいま現在、知り合いがその女を監禁しているというわけではない。



若い男はすでにTシャツ1枚になり、盛り上がった筋肉を誇示しているのである。筋肉トレーニングが趣味という彼を見ていると、ユウェナリスの「健全な肉体に健全な精神は宿る」という一句は反語に違いないと確信するのである。オヤジに「豆腐はない」といわれて子どものように泣きそうな顔をしていたのである。



ひとっ走り近所のスーパーまで豆腐を買いに行った若い男は、その10㎏太った女と結婚するかもしれないというのである。それはそれでおめでたいのである。しかし彼女が若干不安定なので、子どもはつくらないつもりなのだそうである。それはご本人達が決めることなのである。飲み屋のオヤジも「豆腐うまい」なのである。



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いま私の住んでいる部屋から歩いて15分ほどのところにある大きな神社は、6、7年くらい前から中国系外国人の観光ルートになっているのである。どういうわけかみな、朝イチの行程に組み込んでいるのである。であるからそのころまではいつも静かだった境内が、朝9時にはもうザワザワするようになったのである。



あのころ、中国系観光客の身なりは、申しわけないが決してよいものではなかったのである。小柄なのと服装がいささか貧相、そのうえケミカルな発色なのとで、遠くからでも日本人と見分けがついたのである。



神社の境内、参道脇に地元の菓子メーカーが茶屋を出しているのである。そこではお茶と餅菓子をひとつ、参拝客に無料でサービスしていたのである。しかし中国系観光客がくるようになってから半年も経たないうちに餅菓子のサービスは中止になってしまったのである。



ムリもないのである。いつも朝イチから餅菓子めあての行列をつくり、しかも首尾よく餅菓子を手に入れると、今度は店の前に立って大声で仲間を呼び集める者まで出てくる始末だったのである。



喜捨に対してそんなにガッついてはいけないのである。毎日同じ観光客が繰り返しやってくるはずはないので、ここにくればただで餅菓子と茶が手に入るとの情報がなんらかの手段で拡散されていたのであろう。世界は狭くなったものである。



おかげで私の散歩中の楽しみがひとつ奪われてしまったのである。とはいえいまになってよく考えれば、中国系観光客のみなさん、その店でけっこう買い物もしているようだったのである。なんど餅菓子をいただいても1回も買い物をしたことがない私よりはずっと上客だったかもしれないのである。恨んだりして申しわけないことをしてしまったのである。



そのころ、百貨店の食料品売り場でシュウマイの実演、試食コーナーの前にボーッと立っていたら、知らないあいだに中国系観光客の一団に囲まれていた、という出来事もあったのである。みんな試食のシュウマイをもらってニコニコ嬉しそうに食べているのである。そう、やっぱりなぜだかあのころの中国系観光客は小柄な人が多かったような気がするのである。



で、そうこうしているうち、シュウマイコーナーのおばちゃんが蒸したてのシュウマイをひとつ楊枝に刺して「はいっ、日本人のあなたにも」と、私のほうへ差し出してくれたのである。申しわけないけれども、その瞬間、私は心底嬉しかったのである。それくらいに、中国系観光客のみなさんは貧相に見えていたのである。



 

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それが、なにがあったのかは知らないが、ここ1、2年ほどのあいだにガラリと様変わりした感じなのである。着ているものがよくなったし、色の選び方も日本人とあまり変らないのである。しかも体つきも立派なのである。とくに若い女性のすらりと伸びた脚は、日本人ではとてもかなわない、という感じなのである。しかもこれみよがしにスリムフィットのパンツご愛用なのである。



とはいえ、集団行動時の厚かましさは相変わらずで、あまり解消されていないようなのである。たとえば去年の夏、きれいな浴衣を着た女の子が境内を1人で歩いているところを、中国系の観光客に呼び止められていたのである。どうやら一緒に写真を撮らせてくれ、ということだったらしく、女の子はにっこり笑って快諾したのである。



その瞬間である。女の子に声をかけたその中国系中年オヤジがひと言ふた言叫ぶと、あっというまに2、30人の人だかりができたのである。女の子を中心に、即席の記念撮影会である。さらにツーショット、スリーショットをねだる輩も現れ、順番待ちまでしはじめたのである。



内気な女の子はそんな厚かましい申し出を断り切れないらしいので、あいだに入って止めてもらったのである。ヨソさまの国の宗教施設でガヤガヤガヤガヤと困ったものである。しかしまあ、かつての日本の農協ツアーなるものもあんな感じだったのだろうと思うのである。



で、私はその女の子を救出したことで、ちょっと気分がよくなったのである。いや、これしきのことで“救出”という言葉をつかうくらい昂っていたのである。そして2人で本殿の前まで歩いてきたとき、なんと忌まわしいことにその女の子の彼氏らしいチャラ男が待ち伏せていたのである。いやふつうに待っていたのである。



勝手にひどく哀しい思いを私は味わったのである。そのとき、ちょうど近くに居合わせた神社の職員に、中国系の観光客はどこからきている人達が多いのか、と聞いたのである。ただその場の雰囲気を紛らわすためである。8割がた台湾からきているという返事だったのである。



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そう、台湾からの観光客のみなさんは、ここ1、2年でぐんと身なりがよくなったのである。そうして遂に、我々日本人が、若い知り合いの父が経営する飲食店で、中国系観光客からお下がりのダウンパーカをもらうという事態にまで立ちいたっているのである。近所の飲み屋のオヤジは「オレのぶんも頼むよー」なのである。



しかし私は心中おだやかではないのである。なんだかズブズブと貧乏の沼にはまっていくような不安を感じるのである。すでに客観的に見れば、2014年のGDPランキングでは、世界2位の中国にダブルスコアまで差を広げられているのである。



国民ひとりあたり、という計算はこのさい無用なのである。とにかく金は全体の“カサ”のデカさがまずはモノをいうのである。そういう野蛮なシロモノなのである。しかもきっと差はこれからさらに開くのである。“心の時代”なのに不安なのである。



最近ではアメリカのハリウッドまでが中国に色目をつかって、なにかにつけ映画のなかで中国をもちあげはじめているのである。グラミー賞やアカデミー賞の授賞式に中国系の人たちがジャンジャン登場してくる日も目前なのである。



テイラースウィフト(26)は大嫌いだが、こうなってくると、白人代表としてさらにさらに頑張ってもらいたい、と思いはじめるのである。了見の狭い男である。まあ、黄色い猿が考えることは、みんなこんな程度なのである。



そう、でもって、こんなふうに、くだらないいじけやあてこすりなんかをいっているうちに、日本人の多くが中国や台湾などの企業に食わせてもらう時代がくるのかもしれないのである。



そうして頻繁に大陸と日本を往き来する中国人たちは、いつか日本土産に日本の紙幣や硬貨を買い求めるようになるのである。そう、むかしこんな国もあったね、と懐かしがりながら。しかし、こんなふうに考えても、いったんはじまってしまった私の“心の時代”を、戦闘モードに戻すのはなかなかたいへんそうなのである。どうしてなのだろう?(了)




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