ボンヤリしていて我に返り、いまなにを考えていたのだろう? と振り返って確信がもてるのは、食うこと絡みとエロ絡みが２割くらいはあったことくらい。ほかの8割がたは仕事の段取りから趣味のことや八つ当たり気味の罵詈雑言、そしてそれら有象無象をまとめてシュレッダーにかけたような、なにがなんだかよくわからないシロモノだ。つまり私はいやしく、いやらしく、はしたなく生きている。
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そんな私なので新規就農した青年に「なにが起きても地面さえあれば自分が食うくらいはなんとかできると思えたので、精神的にスゴくラクになった。地に足がつくってコレかなあ、って」といわれたときにはかなり衝撃的に羨ましかった。これが自立ってもんじゃないか、と。
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とはいえ青年のマネをしてこれから農業をはじめる根性も気力も私にはない。土地はあってもそのうえで文字通り座して死を待つだけの自分が見える。はっきり見える。頼りないといわれようと愚かといわれようと、こればっかりは長年培ってきたmy vintageなのでどうしようもない。
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しかし餓死するのはもちろん怖い。そこでどうするかというと、もし万一、天変地異が起きてライフライン一切合切使いものにならなくなったらどうしよう? というようなことを考える。ほんと、こうしてアタマのなかだけでモゾモゾモゾモゾして座して死を待つタイプなのよ。
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それでも気がつけば道端の草を見て、おやおやこれは食えるだろうか、とか、この水溜りには魚が棲んでいるだろうか、とか、そこらの虫を食べる練習をしておいたほうがいいかもしれんね、ああ、それよりペットショップをやっていたらいざというときいろいろ食えるよなあ、というようなことは考える。
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また考えているだけかよ、と思われるかもしれないが、だがしかし違うのだ。そういう考えをもったときから街の景色が変わって見えてくる。そして街がいかに反自然かということが身に沁みてわかる。鳥獣魚昆虫草木、カエルでもいい、食用になりそうなものを手に入れられる場所はほんとうに少ない。そして瞬発力のなさにもまた自信があるので、それらが私の手に入る可能性は限りなく小さい。
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こんなことではいざとなったら暴徒と化して商店を襲うしかないではないか。それともこっそり動物園や水族館の近くに引っ越しをしておくか。それでもなお、田舎へいって農業を少しづつでも勉強しようかという考えには到らないのが情けない。こんな私を嘲笑うかのごときニュース。↓
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◆『ライブドアニュース速報』2019年3月1日配信
【「日本の食事が口に合わず…」 公園のカルガモを捕獲したベトナム人が書類送検】
《 東京・江戸川区の公園にいたカルガモが、近くに住むベトナム人に捕まえられてしまった。ベトナム人は「日本の食事が口に合わずカモを使ってベトナム料理を作るつもりだった」と話しており、警視庁は鳥獣保護法違反の疑いで書類送検した。NHKニュースが報じた。
捕まえたカルガモを自転車の前かごに入れて自宅に帰る途中に、警察官が職務質問をして発覚したという。カルガモは捕まえられたあと死んでしまったということで、近所の人は「かわいらしい姿を見せていたのに信じられません」と話した。》
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「かわいらしい姿を見せていたのに信じられません」とはなんとのんびりしたことをおっしゃっているのであろう? もし、おかしな弾みがついてたまさか南北朝鮮が統一なんてことになったら、日本の約６割の総人口を擁する核保有国がすぐ隣に出現することになるのだ。そんなことでどうするのだ。
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つまり、私たちは、なんというのか、根性の入り方が小さいというか弱いというのか、あ、足りないのだ。もちろん世界的に見れば食糧危機なわけだし、いざとなれば、というか「口に合う」と思ったら公園のカルガモでもハトでもムクドリでもコイでもフナでもザリガニでも躊躇なく捕まえて食ってしまう根性がなければ、これからの時代を生き抜いてはいけないのだ。
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そうだ、私も見ならわなければならない。ボンヤリしている場合ではない。いつまでもグチュグチュグチュグチュくだらないことばっかり考えていないで、いざというときの食料確保に向けて、いまからなんでもいいから前向きに行動してみろ、というお話だ。ようし、そうだ。わかった。公園のハトと池のコイにエサをやりにいくぞ。（了）
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