2017年12月12日火曜日
世にはびこる有象無象のアイドルどもをどう考えるか?
アイドルからアナウンサーになったり、プロレスをやってみたり、また学生に戻ったり、という話を最近とくに多く耳にするようになった。役者をめざすというのは比較的以前からあるキャリアパスである。ともあれ、とするとアイドルとはいったんなんなのであろう? というお話になってくる。むかしはみんなが憧れたステイタスであったのに、いまは次にすすむためのステップでしかなくなっているような気がする。
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しかしご本人たちにとってはそれでいいのかもしれないけれども、絶え間なく、それほど可愛くも美人でもないお姿やあまり上手ではない歌やダンスにさらされている私たちはどういうふうに考えればいいのであろう? とくにファンと呼ばれる一部の人々にとっては、腰掛け、ではやはりすまないのではないか。
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とりあえず例によってなんでも書いてあるWikipediaにお伺いを立ててみたら以下のようなお答えであった。「アイドル」の項である。
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《 アイドルとは、「偶像」「崇拝される人や物」「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を意味する英語に由来し、文化に応じて様々に定義される語である。》
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うむ。定番のこれだけでも足りるような気がするけれども、このあとさらにていねいに続く“日本のアイドル”についての解説が弁明っぽい微妙な雰囲気でおもしろい。
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《 日本の芸能界における「アイドル」とは、成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物を指す。キャラクター性を全面に打ち出し、歌・演技・お笑いなど幅広いジャンルで活動を展開しやすいのが特色である。外見が最も重要視されるモデルとは異なり、容姿が圧倒的である必要はなく親しみやすい存在であることが多い。
一方で、はっきりと目には見えない「華」や「人間的魅力」が強く求められるため、一流のアイドルは手が届きそうで届かない存在となる。日本のアイドルは、実績で男性を指すのではなく、主に女性を指すために使われる事が多い。
韓国や海外ではアイドルを「歌手」として見るのが主流であるが、日本では「エンターテイナー」とされる。
歌手・音楽活動は、本業ではなくバラエティー、ドラマ、モデルなど、さまざまな芸能活動の一部であり、また同様に若い俳優や声優などが多方面で活動する者は「アイドル俳優」、「アイドル声優」などと呼ばれる。
〈— 略 —〉 》
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ふうん。「存在そのものの魅力で活躍する人物」ね。とくにAKB48以降は技能に関連していえばこういうふうに説明するしかなくなっているのであろう。で、ぜひもうひとつ付け加えていただきたいのが、「芸能界・広告業界のつごうによってつくりあげられるもので、個々の能力や資質はそれほど選ばない」である。
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芸能プロダクションの多くは、あるていど目立つ子をスカウトしてから育成すればいいのだ、と自分たちの育成能力の貧しさは棚に上げて信じ込んでいるし、広告業界にしてみれば“いま人気があります。これから売れるコです”とカタチだけ折り紙を付けて連れてこられればそれでいい。とにかく“スター”や“人気者”がいなければ金が回らなくて困るので、能力的にムリだとわかっていても仕立て上げる。
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もちろんファンのみなさま方はこのあたりも十分に承知して「成長過程」を「共有」しているのである。でもってこの「共有」はアイドル本人とばかりではなく、ほかのファンたちとのあいだでも暗黙裡に行われて、ゆるゆるゆる〜い、しかし外部に対しては頑なコミュニティをかたちづくる。
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そんなこんなで日本のアイドルは“何者でもない者”、なのである。そして“何者でもない者”はその何者でもなさによって、ファンのひとり一人の所有願望に応え、唯一無二の存在になる。つまりオレ色に染めてやるうっ!! 欲求に妄想のなかで応えるわけですな(by中尾彬)。そういうの気持悪いと思いませんか?(by古市憲寿)。
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もとい。いや、それはそれでご本人たちがよければ傍からどうこういう問題ではない。ただ気になるのは、そうするとアイドルの恋愛はどうするのか? 問題である。とうぜん所属事務所としてはNGである。しかしアイドルご本人はそういう気持になることもあるであろう。この点についてファンはどの程度寛容なのであろう?
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近くにいた少年(19)に聞いてみたら、残念なことに日本のアイドルには興味がないのだそうであった。興味がない彼がいうことには、「そんなに別にこだわらないと思いますけどね。あたりまえのことで」であった。そうかもしれない。冷めているというのか、体温が低いというのか。手越祐也(30)も別段恐ろしい目に遭っているわけでもなさそうだし。
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ちなみに彼のいまのイチ押しはアナスタシア・クニャゼワ(6)である。でもって「女子も中学校の上級生くらいなるとケモノの匂いを感じるんですよね」という衝撃発言を喰らったので彼へのインタビューはもっぱらそちらへ流れてしもうた。すまぬ。
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しかし実際のところ、自分が押しているアイドルが恋愛したとなると楽しい妄想もそれなりのイメージの制約を受けるわけで、アイドルの恋愛はやはりある程度“業”へのダメージを覚悟しなければならないのである。なにをあたりまえのことをクドクドと。
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でもって芸能プロダクションは“恋愛禁止”を打ち出す。そんなこと本人たちの判断に任せればいいものを育成したつもりになって、また実際にもある程度の金と時間も使っているので、契約書に書き込まなければいられなくなる。難儀な話である。
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◆『NEWSポストセブン』2017年12月11日配信
【〈法律相談〉芸能事務所の「男女交際禁止」は人権侵害か】
《 巷ではグループアイドルが大人気。テレビや雑誌で活躍するアイドルの中には、10代前半のメンバーもいるが、10代の若者が契約書の内容をすべて理解するのはなかなか難しいだろう。娘がプロダクションと交わした契約書の中身に納得できない場合はどうすればいいのか?
【相談】
18歳になる娘のことで相談があります。娘がスカウトされ、ある芸能プロダクションの所属となりました。後日、専属契約書を確認したら5年間は男女交際禁止と明記されており、交際が発覚した場合、違約金を支払うとなっていました。この一項は人権侵害だと思いますし、法に触れるのではないでしょうか。弁護士の竹下正己氏が回答する。
【回答】
芸能プロダクションとの専属契約といっても、一概にはいえませんが、大抵はタレントとして養成・訓練し、一定の実力がつけば芸能界にデビューさせること(売り出し)。他に歌唱・演技・演奏等の芸能活動の場所や条件、CDなどの制作販売について管理し、その指示の下に行なわせ、他の事務所との契約を拒否する内容になっています。
そして、異性との性的交遊を禁止する条項が入っていることも、稀ではありません。というのも、芸能プロダクションとすればタレントがアイドルとして異性のファンの憧れになり、人気を博し、芸能活動のみならず、CM出演やグッズ販売で莫大な利益を上げることを期待し、未知数の若者に投資する側面があるからです。
もし、人気者になったタレントの異性スキャンダルが発覚すればファンが離れ、大きな損失を蒙る可能性があります。そこでタレントの経済価値を維持するために専属契約でタレントの異性との性的関係を制限することにも、合理性があるといわざるを得ません。
とはいえ、異性に愛情を抱き、性的交渉を持つことは人の本性です。これを制約できるかは難しいところ。似たような判例が2つあり、一方はアイドルグループの一員になっていたタレントが、ファンの男性と関係を持ったことで、グループ活動に影響してプロダクションに損害が生じうることを認識しえたなどとして、不法行為責任を認めました。
しかし、他方は自分の意思で恋愛関係を持つのは幸福追求の自由なので、そうした関係が損害を生じさせる意図によるものではない場合、違法ではないとしました。
さて、娘さんは18歳とのことですから、親の同意がない専属契約は取り消せます。違約金支払い条項に納得できないのであれば今からでも取り消せばよいでしょう。》
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法的にも結論は出ていない。強引だが。
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(A)「プロダクションに損害が生じうることを認識しえた」ので不法行為責任が生じる
(B)「そうした関係が損害を生じさせる意図によるものではない場合」、違法ではない
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という(A)(B)2通りの解釈があり、さらに(B)では、恋愛した側の意図の有無に判断の根拠が委ねられている。これでは「私のファンのみなさんはきっと理解してくれると信じていましたっ」といい張ればオーケーということになる。
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しかし司法の判断として「認識し得た」と決めつけられる(A)の場合もあるのである。ここでもアイドルは“何者でもない者”の感じである。なんだかチョコレート菓子にかかっている粉砂糖みたいな感じッツーんですか。どーでもいい感じの存在。
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だから別にそれはそれでどうということもなくて、あーそうですか、なのである。アイドル全般につき、あーそうですか。草食化・少子化の遠因になっているなどとももちろんまったく思わない。ただ、そこらの女子を相手の覗き気分をごくごくわずか誘発するかな、という気はする。リア充が町内のそっちへいくなら侘しすぎるけれども。妄想ともども貧乏くさすぎる。(了)
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