日馬富士(33)と貴ノ岩(27)の騒動では、暴力はダメ!! ゼッタイ! がとにもかくにも大前提、絶対の遵守事項とされている。いかなる理由があり状況にあっても人を殴ったりして痛い思いをさせては絶対にいけないのである。血を流させるなどもってのほか。暴力は悪。もちろん異論などございませぬ。
*
しかし私はこの「暴力は悪」というテーゼの敷衍のされ方、用いられ方がたいへん気持悪い。誰も彼もがおうむ返しのように“暴力は悪い、許されない”といい、それでとりあえず安全地帯に身を置いたお顔をしていらっしゃる。それでまた大合唱である。いえいえ、暴力は悪い、それはその通りでございます。
*
だがしかし、「暴力は悪」という文句が、私のあまりよくない耳にはまるで反日スローガンのように聞こえるときがある。誰もがいつでも反射的に暴力反対!! 暴力追放!! 暴力だけは絶対に悪いけど……、というのを聞くと、実はここにあるのは内実のないうわべだけの言葉、要するに言葉の抜け殻ではないのか? と疑ってしまう天の邪鬼なワ・タ・シなのである。
*
そして天の邪鬼な考えは暴力とはなにか? を深く考えることをせずにただただ暴力反対!! と叫んでいれば、そのうち、暴力反対っていってんだろこのバカ野郎!! と手が飛んでくる妄想に発展する。
*
暴力はヒトがヒトになる以前からヒトとともにあったものであるから、それを排斥するのは思っているほど簡単なことではない。侮ってはいけない、と思う。そーんなこんなをアタマに入れて、ちょっとこれを読んでいたたきたい。
*
*
*
◆『J-CASTニュース』2017年12月3日配信
【松本人志、「暴力ダメは正直ムリ」 日馬富士問題で発言、SNSで批判の声相次ぐ「心底がっかり」】
《 「相撲の世界で、土俵以外のところで一切暴力がダメっていうのは正直ムリがあると思うんですよ」―。
2017年12月3日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、ダウンタウンの松本人志さん(54)が元横綱・日馬富士の「暴力」を肯定するような発言をしたことが、波紋を呼んでいる。
■ 松本「稽古と体罰ってすごいグレー」
3日放送の「ワイドナショー」では、平幕・貴ノ岩への暴行問題の責任を取って、11月29日に引退を表明した元横綱・日馬富士の引退会見の模様を放送した。
日馬富士の引退について、松本さんは
「引退する必要はなかったと思ってますね」
と、日馬富士の引退に納得していない思いを明かした。
松本さんは「もちろん酒の場で物(リモコン)を使ってやりすぎたってのはありますよ」と、日馬富士の貴ノ岩への行為が行き過ぎた行為であったことは認めながらも、
「(相撲は)人を張り倒して投げ倒す世界じゃない。その世界で土俵以外のところで一切暴力がダメっていうのは正直ムリがあると思うんですよ。だったらどうやって稽古つけんねやろって」
と持論を展開。続けて
「あの、稽古と体罰ってすごいグレーなとこで、でもそれで強くなる力士もいると思うんですね」
と、日馬富士の行いの根底にあるのは「正義感」であるとして、自身はそうした日馬富士の味方であることを断言した。
この松本さんの発言を受け、SNS上では
「かなりビックリ。松本人志は暴力虐待擁護なんだ」「松本さんにはとてもがっかりした」「試合としての格闘技と暴力は本質的に全く違うものだろ......」「稽古は稽古場でやれよ」「暴力肯定派の松本さんに心底がっかり」
など、批判の声が相次いでいる。
■ 必要なのは「日本人力士が強くなること」
また、松本さんはこうした問題が表沙汰になるのは、日本人力士がふがいないからだという。
松本さんは
「モンゴル人力士に押されちゃってるんですよ。相撲協会もモンゴル相撲にふんどしを掴まれてあたふたしているのが僕は見ていて情けない」
と、「日本人横綱」が稀勢の里1人しかいない現状を嘆き、
「結局モンゴル人力士を意識しすぎているというか、負けてるから、いろんなことが目に付くというか。日本人の横綱が3人、4人と出てきたら、なんとも思わなくなるんですよ」
と、日本人力士の奮闘を促した。》
*
*
*
注目すべきは「(相撲は)人を張り倒して投げ倒す世界じゃない。その世界で土俵以外のところで一切暴力がダメっていうのは正直ムリがあると思うんですよ。」である。続く「だったらどうやって稽古つけんねやろって」は景子おっと間違いた(by荒木経惟)稽古すなわち暴力といっているわけで、暴力論議の中では見当違いなので無視してしまう。
*
ここで松本人志(54)がいいたかったのは、暴力——腕力といったほうがいいかしらん、が支配している世界で暴力(腕力)を否定するのは難しい、ということだと思うのである。
*
いつか以前にも書いたけれども、軍隊、とくに直接敵と対峙する陸軍の場合、心やさしい軍隊など存在しない。と思う。殺すか殺されるかの状況に晒されれば精神は昂り、殺気を孕む。そもそも心やさしければ戦えない。
*
柔道家・松本薫(30)だって反射的に攻撃してしまうかもしれないので、生後半年にも満たない娘にも襟の回りはさわらせない、というようなことを語っておった。試合から遠ざかっているいまでさえ。
*
相撲がそこまでシビアなものかといえば異論はあろうし、また百歩譲って暴力(腕力)に生きる異能のものとして自己規定、自己プロデュースして生きなければならぬのか、といわれればこれまたそうでもないか、になる。なにしろ江戸時代から「谷風情け相撲」の世界なのである。
*
余談だけれどもついでにいわせていただく。今回の日馬富士と貴ノ岩の騒動について、もっと世間一般に情報を公開してみんなで議論すべきだ、みたいなことをおっしゃる方々がいらっしゃる。
*
とんでもはっぷんである。そんなことをしてしまえば相撲は滅びる。プロレスみたいに伝統相撲派、スポーツ相撲派、ショー相撲派に別れたりしてワケがわからないことになるのは目に見えているではないか。ゴージャス松野(56・沢田亜矢子の前夫)みたいのが土俵に上がってきたらどうする?
*
もとい、江戸時代から「谷風情け相撲」である現実の相撲界は、四六時中殺気立ってはいないしいるわけにもいかないけれども、暴力(腕力)の気配は残しておく必要はある、という微妙な立ち位置にいる。
*
だって相撲は豪傑、暴れん坊、怪力自慢同士のぶつかり合いでなければおもしろくもなんともないではないか。力士が酒を浴びるように飲みメシをどんぶり何杯も食ったりするのも、そのひとつの象徴的行為という側面があるよね(by池上彰・67)。
*
暴力はいけません。ほんとうにいけませんけれども、相撲界はまったく完全に暴力を排斥してしまうわけにはいかないであろう、ということである。これを簡単に「暴力は悪」と切り捨てて事足りている感じがつまらない。イヤなのである。私はっ!! はっ!! はっ!! 人間はまだそれほど利口ではないから、暴力を排斥しても別に進歩でも進化でも何でもなくてむしろ退嬰のようにしか思えないときがある。
*
「暴力は悪」というテーゼが絶対的遵守事項となってなにが生まれたかといえばいっそう直截的な「言葉の暴力」である。なにからなにまでローラーで轢き潰したように平らにせんといかんのか? である。「死ね」「アホ」「ボケ」「間抜け」などという言葉がメディアを飛び交う。醜いことである。あまり他人さまのことはいえないけれども。
*
手を上げることを決して許されなくなった教師たちは極端な言葉で生徒を罵る。人々が健康になればなるほど心の病が増える、と誰かがいった言葉を思い出す。
*
ではどうすればいいのかといわれれば言葉に詰まる。まあ若干の手出しはありとして、そこから逃げ出すのは卑怯でも臆病でもないという諒解があればいいのではないのかしらん。よくわからぬ。
*
それから松本人志のコレ、「日本人の横綱が3人、4人と出てきたら、なんとも思わなくなるんですよ」。なにをいっているのかわからぬ。もしかしてたいへん差別的な発言ではないのかと気にもなるけれども番組を見ていないいのでわからない。
*
あ、そうか!! 松本人志、“家族を護らなならんから”とかいって盛大な筋肉をつけたマッチョ野郎であった。「(相撲は)人を張り倒して投げ倒す世界じゃない。その世界で土俵以外のところで一切暴力がダメっていうのは正直ムリがあると思うんですよ。」とは、きっと筋肉がいわせた言葉だったのだ。大真面目に考えて失敗した。(了)
OCN モバイル ONE データ通信専用SIM 500kbpsコース
CMで話題のコスメやサプリがSALE中☆
【DHC】最大70%OFFのSALE開催中!
0 件のコメント:
コメントを投稿