【おはよう句会】
◎ 平成三十年二月十三日(火)先負 苗字制定記念日 一
痩せた躯であごを出し 北からの女 虚勢を張る
ただただ 独裁者と生きるは厄介なりとぞ思ふ
〈解題〉
第3代北朝鮮最高指導者・金正恩の実妹、金与正(30)が平昌冬季オリンピックに合わせて訪韓していた。虚勢を張るものの泰然、威風堂々とはほど遠いその風姿からは、独りで大向こうを相手取る切迫感が滲んでいた。しかしその痩せた肩が担う約2500万人の国民の命運を思うと胸を塞がれる思いもする。
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たしかに私は去る1月17日、ソチに続き今回の平昌でも高梨沙羅(21)はメダルを取れない!! と申し上げました。銅メダル獲得、おめでとうございます。
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改めまして、たいへん失礼な見通しを立てて申しわけございませんでした。けれども、みなさまもういまのこの時点に到れば、なぜあのとき私がメダルは取れないと予測したかがおわかりいただいているかと存じます。インタビューなどを見ておりましても試合が近づくに連れ高まる極度の緊張と孤独の激しさがひっしひしと伝わってきて痛々しいほどでございました。
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しかしながらマスコミの論調はとにかく金をめざす、めざせ、の一辺倒、それに異を唱えるわけにはいかないご本人の口調も、最後にはまるで初見の台本のごとき棒読みになっていたのであります。
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で、さてめでたく銅メダルに手が届いてからのマスコミは一転してこの4年間の苦しさ辛さを書き連ねねぎらっております。もちろんそれはあたりまえのことでございます。しかし私としましては、いまになって精神的にキツかったであろうよく頑張った、とクチを揃えて褒めそやすより、どうしてそのさなかにいるときにそれを書けなかったのか? と思うわけでございます。
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そうしていただければ、高梨沙羅もよっぽとラクになったはずでございます。少なくとも昨日(2月12日)までのような苦悩を抱え込むことはなかったであろう、と。
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でもって試合後には4年間の苦労をクローズアップするのもマスコミとしては予定通りで破綻はないけれども、なかなかリアルなドラマは感じられないわけでございます。
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大衆に迎合するマスコミ、ここに極まった感じがいたします。もっと前もって高梨沙羅の苦悩がしっかり伝えられていれば銅メダルに感動爆発!! 感涙で日本沈没!! だったのでございます。
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まあ、とりあえずこれで高梨沙羅ご本人もだいぶご自分を取り戻したようでございます。平昌ではソチで壊れたこころのカケラを拾えればいいのだ、と詩人のようなナイスなことを書いてしまった私もホッとしております。高梨沙羅のインタビューはコレ↓。
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◆『日刊スポーツ』2018年2月13日配信
【高梨沙羅「最後の最後に一番いいジャンプ」一問一答】
《 高梨沙羅(21=クラレ)が銅メダルを獲得した。1回目で103・5メートルを飛び120・3点をマーク。全体3位で臨んだ2回目のジャンプは103・5メートルを飛び、合計243・8点をマークした。着地の瞬間、両手を上げてガッツポーズを繰り返した。ゴーグル越しにもわかるほど涙が流れた。表彰台では笑顔で手を振り、観客に頭を下げた。
表彰式後の高梨の一問一答は次のとおり。
-銅メダルを獲得
高梨 最後の最後に渾身の、ここにきて一番いいジャンプが飛べましたし、何より日本のチームのみんなが下で待っててくれたのがすごくうれしくて。結果的には金メダルを取ることはできなかったんですけど、すごく自分の中でも記憶に残る、競技人生につながる、糧になる貴重な経験をさせていただいたと思います。
-2回目のジャンプ、終わった後に笑顔
高梨 正直、最後にいいジャンプが出たのでホッとして、気が緩んで(笑顔が出て)しまいました。
-他のチームメイトの選手からはどんな声をかけてもらった
高梨 「お疲れさま、すごいね」って抱き寄せてもらった時にすごくホッとして。涙が止まらなくて、日本チームとしてこの場にこれてよかったと思いました。
-この4年間、世界中の選手から目標にされたプレッシャーもあったのでは
高梨 ソチオリンピックからの4年間ずっと悔しい思いを持ってやってきたつもりですけど、自分は金メダルを取る器ではないということがわかりましたし、やはりまだまだ競技者としてもっと勉強しないといけない部分もたくさんある。周りの先輩達から学んでもっと成長していきたいです。》
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うむ。こちらもなかなかナイスですねえ。「『お疲れさま、すごいね』って抱き寄せてもらった時にすごくホッとして。涙が止まらなくて」のところ、癒された瞬間の振り返りは感動的である。つーかもはや私のようなゲスな野次馬が口を挟めるお話ではない感じさえする。“ナイスですねえ”が書けたのでデアル体に戻っているのである。
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ご本人も深く納得されているようであるし、これまでは口が裂けてもいえなかった「 自分は金メダルを取る器ではない」というフレーズがこぼれたのもよかった。これでリラックスして新しいチャレンジがはじめられる。と思う。
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オリンピック開催地、韓国では高梨沙羅のオルチャンメイクが好評で「美女鳥」と呼ばれ、「ルックスはキムヨナに迫る」とも評されているそうである。ウソかホントかわからぬけれどもカスタム入りの顔に迫るのであるからたいしたものである。
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あ、オブセッション(obsession=強迫観念)が強すぎて表情が消えてしまっていた昨日までの顔からそういう連想が生まれたのはむしろ自然なのかもしれない。とするとキムヨナ、顔面カスタムを証明されたことになる。
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もうひとつ、今回の平昌オリンピックについては全体として日本惨敗、メダル数で歴代1位の長野(10)、2位のソチ(8)を超えることはない、という予想を立てたのであった。現在3個(高木美帆・銀、高梨沙羅/原大智・銅)、日程終了の25日までまだかなりの競技が残されているけれども、メダルを計算できる種目は多くない。どうなることか。
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私の場合、ここ数年でつくづく国に対するロイヤルティが低くなってしまったのう、とテレビを観つつ実感している。(了)
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