密閉型ヘッドフォンを装着してとりあえず怨霊おっと間違いた(by荒木経惟)音量を最大にして悪魔のロックを聴くという子ども時代からの悪癖が祟って耳が悪い。
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なにしろ小学校から帰ってくるなりレコードをかけ、デカいヘッドフォンを被って踊り狂っていたのだからわれながら呆れる。なかでもお気に入りはアーサーブラウンとクレージーワールド(The Crazy World of Arthur Brown)の「ファイアー(Fire)」とブルーチアー(Blue Cheer)の「ジャストアリトルビット(Just a Little Bit)」であった。これはわが人生におけるほぼ唯一の自慢エピソードである。シヴいべ。
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ああ、そんなバカ息子の無音の騒ぎに無視を決め込んでいた母親の哀愁漂う背中を思い出してしもうた。大丈夫だかあさん、あのときかあさんが心配した通り十分イカレたオトナに育ったから。わかってんだろ?
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で、そういうガキは中学校に入るとバンドを組んだりするわけである。よくわからん紫色のスナックのマスターに「コードはきちんと押さえないといかん」とかいわれながら。うむ。とりあえず大音量だけをめざしているくせにプロ志向だったのである。
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どうしてビートルズやローリングストーンズなんかのコピーをやらずにジミヘンドリックスを10倍くらいラウドにしたような滅茶苦茶な音ばっかり出していたかといえば、耳が悪かったからだ。チューニング? なに? それ、だったし。たまあーにチューニングしようとしたら音程がわからなくて遂に弦を巻き切ってしまったこともあったっす。
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そんなようなわけで楽器なんかどうでもよかったのであるけれども、見栄を張ってやがてギブソンだのフェンダーだのをもつようにもなったのである。手に入れたら終り、な感じではあったが。
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楽器店に出入りしはじめると、いわゆる楽器エンスーみたいな方々、というか当時はバンドの連中もみなそんな感じでフェンダーならもちろんプレCBS一択、ギブソンの場合はレスポールカスタムなら80年代まで、とかなんとかさらに細かく評価がわけられて喧しかったのである。
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そんなことをいわれてもこちとらは耳が悪いのである。アーサーブラウンとブルーチアーで耳を壊した男である。そんな違いがわかるわけがない!! しかもエンスー(enthusiast=エンスージアスト)というのはどこの世界でもそうであるけれども実に細かいところに思い込みが激しい。
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ギブソンのギターピックアップ(マイク)は特許出願中(P.A.F=patent applied for)のシールが張ってあるヴィンテージじゃなくちゃ、っていわれてもねえ。木目はセンターから左右対称に広がってるヤツ(bookmatch=ブックマッチ)、っていわれてもねえ。
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楽器店の店員に、たとえば正直なところエレキギターの音色にボディの材質はどのくらいかかわるのか? と聞けたのはずっと後になってからだ。お答えは5%ということであった。耳でわかるはずがない!!
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でもって、じゃあ弦振動が音として出てくるまでに音にいちばん影響するのはなにか? とこれはあるギタービルダーに聞いたら、ギターアンプ、とのお答えであった。ギターに50万とか100万とか出してそれ? なんだかみーんないい加減な感じがしてくる。しかもギターアンプやスピーカーすらいまは安くて高性能なシュミレーターがあるし。
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そんなところにちょっとびっくりなニュースが入ってきた。
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◆『J-CASTニュース』2018年2月19日配信
【「ギターのギブソン」経営危機報道に「マジか」 米国の会社側は「事業のスリム化」公表】
《 米国の楽器メーカー「ギブソン」の経営が危機的な状態にあることを、本拠地のある米テネシー州・ナッシュビルの「ナッシュビル・ポスト」や「ナッシュビル・ビジネス・ジャーナル」などが報じた。
プロ・アマチュア問わず愛用するミュージシャンが多い老舗中の老舗とも言えるメーカーの現況に、音楽ファンから驚愕の声が上がっている。
ギブソンは1902年創業。現在のギターのスタンダードの1つでもある「レスポール」モデルを売出し、それ以外にもSG、フライングV、エクスプローラーなどの人気モデルを数々打ち出した老舗楽器メーカーだ。
ジャンルを問わず、数々のミュージシャンが愛用しており、特に人気の高いヴィンテージ品は高額で取引されているものも少なくない。
歴史あるモデル以外にも、自動的にチューニングを合わせるロボットギターなど変わったモデルを発表し、度々注目を集めている。
しかし、2017年にメンフィスの自社工場を売却しているなど、現在の経営状態は順調とは言えない。
ナッシュビル・ポストは18年2月9日(現地時間)、ギブソンは年に10億ドルほどの収入がある一方で、3億7500万ドル(約400億円)の借金が夏に返済期限を迎える上に、それが解消されない場合、別の1億4500万ドル(約154億円)の銀行ローンも支払わなくてはならず、「時間切れ」だと、その経営状態の厳しさを報じた。
こうした報道が日本でも伝えられ、ツイッターでは
「マジか。 ウチのもギブやで」
「有名メーカーだからって安泰って訳でもないんだね」
と、驚きの反応が相次ぎ、一時はトレンド欄にも入った。
ギブソンは報道を受け、15日(米東部時間)にプレスリリースを公開し、事業のスリム化と集中という方針を発表した。
ギブソンは、楽器やプロ向けのオーディオ部門は収益を上げて成長しているものの、以前ほどの水準ではないとし、一般消費者向けのオーディオ機器を扱う「フィリップス」へ注力し、同時に収益性が期待を下回る部門を排除することで、
「来年中にもギブソン史上最高の結果へと導き、数年以内には負債を払えるようになると期待している」
と、今後の見通しについて説明した。
また、ヘンリー最高経営責任者(CEO)は、株や不動産といった分野のマネタイズを推進し、負債を減らし、資金を増やしていくとコメントしている。》
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フィリップスはギブソン傘下であったか。まあどんなふうに決着がつくにしろGibsonブランドはなくならないであろう。であろうけれども、こんなことになるのなら早くに中国の模造品メーカーを訴えるべきではなかったのか、と思うのである。
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中国製の偽ギブソンはパッと見では見分けがつかないほどたいへん美しくよくできていて、アメリカでもChinese+GibsonでCibson=チブソンなどと呼ばれてなかなか人気らしいのである。もちろんギブソンのはずなのにエピフォンのピックアップがつけられていたりしてそうとういい加減なところもある。
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しかしなにしろ本物の20%くらいの値段で買えるのである。でもって腕が短ければあなたもB'zの松本孝弘(56)気分である。耳がぶっ壊れている私にもピッタリだよん。これが通販で全世界的に売られているのであるから被害額も相当に上がるはずなのだけれども、それよりもブランドイメージが安くなってしまうのがマズいよねえ。
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ルイヴィトンなどはファミリーレストランのおもちゃコーナーで子ども向けに売っていた偽キーホルダーにもしっかりチェックを入れてくるくらいなのに。こんなところでもブランドを守らなかった現経営陣の責任は大きい、と思うのである。
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がんばってね、ギブソン。(了)
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