長嶋一茂(52)ブームだそうです。その理由をいろいろと推察したネットニュースやコラムにもしばしばお目にかかります。今回はそれにワタクシなりの決着をつけようと思っとります。
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その前に、そもそも長嶋一茂ブームなどというものがあるのか? という疑問が生じるわけですが、もちろんありません。カズシゲTシャツを着て歩いている人なんかに出会ったことがありません。長嶋一茂ブームはテレビのなかだけの、しかも業界寄りの方々のあいだだけでいわれていることです。
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おっと、おやおや。もう今回の結論に迫ってしまったのではないでしょうか? 長嶋一茂ブームの理由、長嶋一茂が視聴率を稼いでいる理由は、テレビ界の人間でも芸能人でもないから、ではないでしょうか?
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以前、このブログで長嶋一茂と石原良純(56)はワケのわからないことをいうオジサンの役、と書いたことがありました。アウトサイダーなのです。石原良純はさておき、長嶋一茂はほんとうにいつまで経っても部外者であり闖入者であり続けています。それがまたまるで宇宙人みたいな突拍子のなさと相乗効果を発揮して、アウトサイダー感を異人感にまで盛り上げています。
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このテレビに染まっていないところに視聴者はキヨキヨしく感じるのです。おっとだめだめ、ただ学習能力がないだけ、とかアタマのなかにもキョキョしい風が、というようなことをいってはいけません。
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異人感が長嶋一茂の人気の理由です。たとえば『羽鳥慎一モーニングショー』のレギュラー、スタッフ全員と一緒に記念写真を撮れば一人だけ異様に浮いて映るはずです。異人さん(唐人さん)より異人さんっぽい人でございます。
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長嶋一茂はテレビのなかにいることを許される、きわめて非テレビ的人物ということもいえます。考えてみればまったく稀有な存在なのです。ここのところは存在自体が放送コードギリギリ、というようにしばしばネタにされてもいますね。
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と、なると、です。これはひっくり返せば、いま視聴者はどれほどテレビ的なものに飽き飽きしてしまっているか、を示しているということになります。そりゃそうです。たとえばドラマは時代物が事件物に入れ替わっただけで新味がなく、制作の目線やスタンスまでバラエティと同じレベルになってしまっています。テレビ界は十年一日のごとくというより徐々に後退している感じがします。
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キャスティングを見ればテレビ業界と芸能界の馴れ合いがあからさまで、報道はソンタクばかり。こうしたヨゴレを長年にわたって溜めに溜めて、さらに経年劣化でヒビは入るわ固くはなるわのテレビのなかで、ここの世界の人ではない異人長嶋一茂が存在感を発揮しているわけです。
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そういう経緯に気付かず長嶋一茂ブーム!! などといって煽り立てようとしているテレビ業界は、なんのことはないただ自分たちのふがいなさを宣伝しているようなものだ、とワタクシは思いますね。
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いきなり結論が出ましたけど、芸能レビューではなんといわれているのでしょうか。せっかくですからざっくり見てみましょう。
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◆『AERA.dot』2018年7月28日配信
【ブレーク中の長嶋一茂、人気の秘密は天然ボケでなく、浮世離れした「悟ってる感」】
《 テレビ業界では今、長嶋一茂が大ブレークしている。朝の情報番組からゴールデンのバラエティ番組まで幅広く数多くの番組に出ている。一茂はプロ野球の世界から引退した後、タレントに転身した。タレントになって約20年が経った今、なぜ彼が改めて脚光を浴びているのだろうか。》
ということで、以下長くなるのでその“脚光を浴びている理由”をこちらでまとめます。大きくいうと、それは
◆ とぼけたキャラクターの裏に人としての深みが感じられる
◆ それは弱さを知る人間の強さであり、悟りきったような生き方である
ということで、具体的なポイントとしては
◆ テレビの中でも空気を読まずに言いたいことを言える貴重な存在である
◆ 現在の自身のブレークに関しても「一過性のものでしょ」と他人事のように淡々としている
◆ 専門分野のスポーツに関してはまっすぐに鋭いコメントをする姿が評価されている
◆ 先日のロシアW杯のポーランド戦で日本代表が時間稼ぎのようなプレーをしたことについても全面的に擁護してみせたりするなど、周囲の反応を気にせず正論を堂々と口にする
だと主張しています。
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もうひとつ。
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◆『日刊ゲンダイDIGITAL』2018年7月28日配信
【視聴率15%の快挙 テレビ界を席巻する「一茂」ブームの背景】
《 長嶋一茂(52)がテレビ界で旋風を巻き起こしている。
情報番組からバラエティーまで出ずっぱり。25日に出演した「ザワつく!一茂良純ちさ子の会」(テレビ朝日系)の平均視聴率は15.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)を叩き出す快挙。最高視聴率は一茂が富士山登山について語っていたシーンで16.6%を記録したというのだ。 一茂はこの番組の直前に放送していた「あいつ今何してる?」(同)にも出演しており、こちらは12.3%を記録。新視聴率男といって申し分ないリッパな数字である。》
と、直近の実績を紹介したうえでバツ4の芸能リポーター、城下尊之(62)のコメントを掲載しています。
《 「恵まれた環境に生まれ育ったことによる生来のゆとりはもちろんのこと、守りに入らなくてもいい精神的なゆとりが一茂さんにはあると思います。プロ野球選手を引退されて、芸能界に入った1年目で(稼ぎが)億を超えたことを明らかにされていますが、凄いのは、いつ仕事がなくなってもおかしくないのが芸能界だと認識されて不動産や株やファンドで資産運用し、それだけで家族が食べていくには十二分な額を稼いでしまったということ。もともと天然キャラで、つくりがない分、テレビで面白がられ、出演オファーが倍増していったのです」》
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つまり
◆ ガツガツきゅうきゅうとしなくてもいい経済的ゆとりがある
ということですね。バカでいられる。加えて
◆ テレビのメイン視聴者が50歳以上で、この層には一発でわかってもらえる知名度がある
◆ ある程度自由にやらせておけば番組が面白くなる
ことも指摘し、全体をまとめて長嶋一茂を「高齢化の進んだいまの社会に適応した売れっ子」であると定義しています。
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具体的な指摘の部分は妥当だと思いますけれども、そんな長嶋一茂を総評して「人間としての深み」、「ゆとり」というのとは違うとワタクシは思います。
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たとえばプロ野球選手としての挫折の経験は「人間としての深み」を与えたというよりはそのままの屈折として長嶋一茂の背後にあるような気がしますし、大胆な発言ができるのは「ゆとり」のおかげではなく、まったくのフリーハンドだからの無手勝流だと思います。バカみたいですけど。「人間としての深み」とか「ゆとり」とかいう前に、こうやるしかなかった、ということでしょう。
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あらゆる場面で煮詰まってただズブズブと沈下していくテレビ業界をイノセントな香りで満たすあだ花、いつか突然、なにも残さずどこかへ飛び去っていく異人、それが長嶋一茂です。
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人としてみれば芸能界への道を開いてくれた明石家さんま(63)よりずっと潔し。ケツケツし。(了)
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