いぢめてうれしいS、いぢめられてうれしいM。70年代初頭、80年代初頭、90年代初頭とほぼ10年周期でブームといわれるものがあり、それ以降はさすがポスト・モダンというわけかとくに盛り上がりを見せるでもないけれども風俗(not風俗業)の底流で連綿と息づいているSM(Sadism and Masochism)である。
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ワタクシの周辺でもS嬢の取材にいってカメラマンの前でたちどころに胡座縛りにされ危うく浣腸までされかかった男や、たまたま入ったクラブでSMショーを演っていて、どこかへいったと思ったらちゃっかりパンイチの四つん這い姿でステージに上がり、鞭で叩かれて大喜びしていた男がいる。
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この男はその後自分よりひと回り以上も年下の女と結婚し、ときどきナマ脚で首を絞めてもらっているらしい。まったく羨ましいかぎりの人生である。
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ワタクシ本人は、ある日自分はSかMかはっきりさせようと思い立ち、SMクラブでとりあえず料金が安いMプレイに挑戦したものの、しょっぱなのバーコーナーでの言葉嬲りプレイ兼女王さまとのお見合いの段階で憤怒に駆られ飛び出てきたことがある。
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「顔が大きい」だの「いや、顔のフチが大きいのねん」だの、なにが悲しゅうてカラスのガラみたいなブスにいわれにゃならんと。しかしまあそれでMではないことははっきりしたわけである。
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で、その翌日、今度はSプレイに挑戦しにまた同じSMクラブにいったのである。前回とは違って個室のプレイルームに直接案内されたまではよかったものの、出てきたのはすごくボンヤリした危ない感じのM嬢。そうか、客にM嬢を選ばせないのはこういうわけか、と気付いてもあとの祭り。いくら冷血と呼ばれるワタクシでもそんな女をいぢめて遊ぶ気にはなれず、ただ世間話をして帰ってきた。この仕事をしていて一番怖いのは「お客さんが勃たないとき」というお言葉が印象的であった。
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結局、ワタクシについてはとくにSとかMとかの嗜癖はなく、そうなったらそうなったでおもしろい方向に適当に流れるといういい加減な感じであろうか。意気地なしなのである。「オードリー・若林(40)は南沢奈央(28)を一度も抱いてない」説に激しく同意してしまうくらい意気地なしなヤツなのである。まあ、若干のS気はあるかもしれない。
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そのSMへの嗜好を高嶋政宏(53)がカムアウトして話題になっているらしい。しかしワタクシとしては、ついこのあいだまで「妻のお尻を撫でるのが大好き」などと語っていた高嶋政宏はまだまだ駆け出しの感じがする。それとも例によってビジネス狙いの付け焼き刃か。それで『変態紳士』(ぶんか社)なるエッセイ集まで上梓するのだから立派なものである。まあこれを読んでみれ。↓
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◆『NEWSポストセブン』2018年11月12日配信
【高嶋政宏が語る「SとMが織りなす奥深さ」と同志の見つけ方】
《 〈SMとの出会いは運命だと思いました〉──10月に発売されたエッセイ『変態紳士』(ぶんか社刊)で、俳優・高嶋政宏(53)が「SM好き」を公言して波紋を呼んでいる。高嶋に「SMの極意」を聞いた。
──高嶋さんもかつては「SM=マニアックな嗜好」というイメージがあったそうです。なぜ覆ったのですか。
「そんな大それた感じはありません。最初にお店にひとりで訪れた瞬間の、『あ?ここにいる人達は自分も含め同じ変態なんだ』という安堵感。そして、初めてショウを観た時の、『これだ!!』感。すべての人たちに、妙な特別感は捨ててもらいたいですね」
──エッセイでは「Sはサービスのエス」と強調されていました。
「だって考えてみてください。簡単に言えば、Mがどうやったら気持ち良くなるかを考えてプレイするんですよ。サービス以外の何があるんですか」
──SMのパートナーや同志を見つけたい場合、どうするのがスマートでしょうか。
「本物の方々が集まるところに行くのが手っ取り早いですが、それはちょっとという方には、とにかく飲み会でも何でも下ネタ言って、その時の引き具合と食いつき具合。にらまれたり怒り出す人がいなければ、軽くSMの話を織り交ぜて下ネタ。あとはリアクションを待ちます。
ノリのいい人は『今度連れて行ってください!』になるし、一見引いたように見えても、あとからメッセージが個人的に来るかもしれない。本当に心の底からSMネタが嫌な場合は、2度とそういう話しないでください、と相手から言ってきますんで心置きなく喋りましょう。ただ最近、ハラスメント全盛なので訴えられるかは自己責任で」
──この世界に足を踏み入れて、人生はどのように豊かになりましたか。
「とにかく楽しい。ただただ酒飲んでるだけじゃまったく面白くない。僕にとってのショウとはSMです」
──興味はあるけど踏み出せないという人は、どうきっかけを作ればいいのでしょう。
「とにかく少しの勇気を持って、まずお店に行ってみることです。何も臆する事も緊張する事も恥ずかしがる事もありません。だって、そこにはあなたと同じ変態しかいないんですから」》
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はじめてエロ写真を見た小学生みたいな雰囲気だ。『週刊文春』11月15日号【『SMは紳士の嗜み』高嶋政宏の変態宣言】で「僕は普通の挿入には興味はないんです。僕がただ興味があるのは、クスコ(膣鏡)という医療器具を肛門や膣に差し入れて、開いて見ること」と発言している。懐かしい二次の匂いがする。この記事での発言もそうだが、具体性、肉体性がないとでもいえばいいのか。
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もうひとつの理由は、 高嶋政宏は熱心なロックファンでもあることになっている。そしてそのきっかけがKISSからだったという点だ。マジで。KISSに衝撃を受けてロックに興味を……、みたいな方はけっこうおられる。しかしKISSからロックに入ったという人をワタクシは信用しない。コマーシャリズムそのものだからだ。同じように高嶋政宏のSMにはアンダーグラウンドの湿りや怖さがない。それで「変態紳士」を語れるのはまったくの初心者ゆえだ。
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たとえば1917年、東京市下谷区(現:台東区西部)竜泉寺町に住む大工職人小口末吉(29)が内妻よね(23)を求められるままに傷つけ殺してしまう事件があった。小口末吉が傷つけることを嫌がると、よねは「別れる」と脅したという。高嶋政宏はこの性愛の極北を理解できるだろうか。
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前出『週刊文春』誌上での妻のシルビア・グラブ(44)を縛ったりしないのか? という質問に高嶋政宏は「吐き気がする」と嫌がられると答えている。さてどうだろう? “変態紳士の妻”という風評が起たないための予防線を張っているのだろう、妻を“変態”イメージから遠ざけようしているのだろう、とこれまたワタクシは邪推する。
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しかしながらほんとうに変態なのはテレビなどで拝見する限りシルビア・グラブのほうだと思えてならない。高嶋政宏などより遥かに変態的な空気を撒き散らしている。根拠はないがそういうご面相である。高嶋政宏のSM嗜好カムアウトの影には思わぬドラマが隠されているのかもしれない。なんとかして仔細が明らかにならぬものか、否がうえにも期待は高まる。(了)
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