なにか猛烈にイヤーな感じに襲われて目が覚めた。目が覚めてからなにがそんなにイヤなのか考えても思い当たるフシはない。しかし取り返しのつかない何かをしでかしてしまった焦燥感はたしかにある。大袈裟ではなく、それは絶望に近い。
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もしかして眠っているあいだに人殺しでもしてしまったのであろうか? いやまさかそんなはずはない。両手を前に突き出して夜道をフラフラ歩いた感触もないし。それではこの、もう二度とまっとうな道には戻れないというような激しい後悔はいったいなんなのであろう。
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話は変わるけれども、二度とまっとうな道には戻れないという深い思い込みと懲りない性質、繰り返す性質が不良と呼ばれるための必須にして十分条件である。こうして併記するときはにはなんでも3つあると座りのよい感じがするけれども2つだけでOK牧場(byガッツ石松)。
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そうである。この感覚は学生時代、どうしても履修のしかたがわからなくて何年も留年していく夢——実際にオリエンテーションからサボっていたのでしばらくわからなかった、を見たときと同じだ。これまた小さな男じゃのう。なにが焦燥感、なにが絶望!!
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ああ、なんと怯懦のうえに自堕落な、甲斐のない半生を送ってきたのであろう!! 大胆にして勇猛果敢、誠実勤勉、堅牢強固の反対はオーレなんだなー(by松山千春)、こんなことではどうせロクなものにならぬ。というかすでになっていない。
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二日酔いなのであった。二日酔いをするとざんげの値打ちもない(by 北原ミレイ)気分になる。北海道ではザンギの値打ちもない、というらしい。知り合いにももう1人そういうヤツがいたから、たぶんある程度は共感される方もおられるであろう。万人に共通とはいわぬが。
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ほんとうに久しぶりの二日酔いである。以前は二日酔いというより終日酔っぱらっているような人事不肖の事態が多かったけれども、もう十年以上、酒は嗜む程度のオトナな暮らしを続けてきた。酒を買いに走ったコンビニのアルバイトに「まだ飲むんですか!!」とハイチのお面のような目をされた日が懐かしい。
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ふつうならここで自己嫌悪、という段取りなのであろう。しかしそうはならないのである。パーなのであろうか? あるいは性格に歪みがあるのであろうか? 自己嫌悪などという高尚な悩みとはあまり縁がない。
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あれま考えてみれば悩み自体に縁がない。これは今夜は少し悩まなければならないな、と思っているうちに眠落ちしてしまうのがいつものことである。であるから人生はほとんどその場任せのなりゆきである。とはいえあまり楽天的でもマーニーでもないと自分では思っている。
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こんなふうに生きているから過去の記憶がないのである。いや思い起こしていけば蘇る部分はあるのだけれども、それすらも億劫で、しかし放っておくとどんどん空白の期間が増殖する。現状は気絶しているうちに人生の大半を過ごしてきたのとほとんど変わらない。
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昨夜は特別ななにかがあって飲み過ぎたわけではない。なにしろ、恥ずかしながら昨夜はボッチ宅飲みである。小笠原諸島の固有種なんかのテレビを眺めながら、気がついたら寝ていた。で、勝手に飲んで勝手にふつつか者の二日酔いである。
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おお、いま思い出して確認してみたけれども、インプラントを施されたような形跡もなし、アブダクティ(abductee=宇宙人に誘拐されて戻ってきた人)になったのでもないらしい。
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耐寒耐熱・無味無臭は生き方のひとつの理想ではあった。しかし、こんな人畜無害な男になぞなりたいと思ったことはないはずなのだ。もしかしたらまだ酔っぱらっているのかもしれない。なんのおチカラにもなれず面目なし。(了)
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