2017年8月7日月曜日

突然いいヤツになってしまったジャスティン・ビーバーの心模様



7月23日に「パーパス・ワールド・ツアー」残り14公演の中止を突如発表したジャスティン・ビーバー(23)である。2016年3月から約18ヵ月にわたって150を超えるコンサートを行ってきて、ゴールはもう目前のところであった。



これについて本人が8月アタマにインスタグラムで発表したコメントの全文がある。——『ELLE girl』2017年8月5日配信【ジャスティン・ビーバーがファンに伝えたメッセージを全文公開。ツアーをキャンセルした理由とは?】。



ざっくり見たところ中止の具体的な理由については言及されていないようであるけれども、現在の心境や自身の過去と未来についての思いがたいへん率直に語られているようで興味深い。それを少していねいに読んでみたいと思う。



コメントを〈起・承・転・結〉の4つのブロックに分けたのは、ちょうど全体が4つの段落からなっていたというだけの安直な理由である。欧米に〈起・承・転・結〉、4つのブロックで書くというフォーマットはないし、〈起・承・転・結〉それ自体の解釈も人それぞれで固定した意味あいはないはずである。要するにここのところは思いつきのでっちあげである。ゴメンネ、ジャスティン。







〈起〉:過去・現状 ****************

「この旅をみんなで歩んでこられて本当に嬉しかった。ツアーが開催できたことも嬉しかったけれど、それ以上にこの生活をファンのみんなと作り上げてこられたことに意味があると思う。何かを学ぶこと、成長することは簡単ではないけれど、自分がひとりじゃないって分かっていたから、ここまで来れた。消せない不安がいつもあって、うまくいかなかった過去の恋愛にとらわれて、僕はみんなにひどい態度を取ってきた。苦しみや嫉妬、不安に自分の人生を支配されてたんだ。」



ジャスティン・ビーバー23歳、14歳のときからプロのシンガーソングライターとしての活動をはじめ、多くの賞を獲得し、2011年2月に発表された第53回グラミー賞では最優秀新人賞と最優秀ポップボーカルアルバム賞にノミネートされた。同じ年の5月には、アメリカの経済誌『Forbes(フォーブス)』が毎年発表している世界のセレブ100人番付で17歳の若さにして3位で番付デビューを果たしている。



絵に描いたような若き、というか若すぎるビッグスターである。平静でいられるわけがない。成功の階段を上るたびプレッシャーはさらにキツくなるし、周囲の連中もそうした創造の苦しみなど想像もできない、ただただ欲に釣られて群がってくるバカにしか見えない。



で、ジャスティン・ビーバーはたびたび荒っぽいトラブルに巻き込まれ、ゴシップを提供するようになる。2014年1月には飲酒運転や公務執行妨害の容疑などで逮捕されたことをきっかけにアメリカ・ホワイトハウスの公式ウェブサイトに国外退去を求める嘆願が寄せられ、署名がなんと10万件を突破している。



今年7月には「海外で一連の不適切な行動があり、過去の中国での言動が国民の不満を引き起こした」ことを理由に中国での公演を禁止されていることも判明した。なにをいまさら。



この最初の段落では、それらを「消せない不安がいつもあって、うまくいかなかった過去の恋愛にとらわれて、僕はみんなにひどい態度を取ってきた。苦しみや嫉妬、不安に自分の人生を支配されてたんだ。」と率直に認めている。認めているだけではなくそうとう冷徹に客観視もしていて、過去の自分とは確実に一線を引いた、異なる地点に立っていることを印象づけている。



そしてその孤独な闘いをささえてくれたのはファンであり、「この生活をファンのみんなと作り上げてこられたことに意味があると思う。」「自分がひとりじゃないって分かっていたから、ここまで来れた。」という言葉に感謝の気持が現れている。なかなかよろし。もし、もしも、もしもし(by田中直紀)、あなたや私が同じ経験をしたならもうすでに絶対になにかをやらかしておっ死んでいると私は思う。







〈承〉:現状に対する考え ****************

「ここ数年、僕が本当はどういう人間なのか、これからどういう人間になっていきたいのか思い出させてくれた人たちに本当に感謝している。自分が過去にした決断や恋愛は、未来の決断や恋愛を支配したりしないって教えてくれた。僕は全然完璧な人間ではないってことを分かっているし、これからも間違いを犯すと思う。でも、過去のせいで未来をダメにしたくないって思っているんだ。今までの過ちを恥ずかしいと思い続けるのも、やめたいと思っている。失敗から学んで、今よりいい人間になりたいんだ。」



さらに繰り返し過去の(一時期の)自分との訣別を強調している。「自分が過去にした決断や恋愛は、未来の決断や恋愛を支配したりしない」「過去のせいで未来をダメにしたくないって思っている」「今までの過ちを恥ずかしいと思い続けるのも、やめたいと思っている。」。前しか向かねえ(by大島優子)、ってヤツである。



で、その過去の(一時期の)自分との訣別はすなわち「僕が本当はどういう人間なのか、これからどういう人間になっていきたいのか思い出させてくれた人たち」への感謝につながっていくのであるから、もっと過去の子ども時代に回帰していくのである。自分の本質はこんなに有名になってしまう前の自分にあるのだ。



注目されるのは「ここ数年、〜〈略〉〜 思い出させてくれた人たちに本当に感謝している」の部分である。「思い出させてくれた人たち」、その1人は間違いなくカール・レンツ牧師であろう。ヒルソング・チャーチのニューヨーク支部の顔ともいわれているイケメン牧師である。



《 ジャスティンとレンツ牧師が出会ったのは2014年。ちょうどジャスティンの素行不良がメディアに取り沙汰され、世間から「バッドボーイ」のレッテルを貼られるようになった頃。当時、大スターとしてのさまざまなプレッシャーに押し潰されそうになっていたジャスティンは、ある日、レンツ牧師に「神のことをもっと教えてください」と膝まづいて涙ながらに訴えたという。

当時のジャスティンついて、レンツ牧師は「彼はまだ20歳そこらだった。残酷で毒々しいこの世界で必死にもがいていたんだ。彼は、自分がなりたいと思う人間ではなく、世間が期待する通りの人間になろうとしていたんだよ」と、ジャスティンがかなり精神的に追い込まれた状況にあったことを米GQ誌とのインタビューで明かしている。》

(※「FRONTROW」2017年8月5日配信【ジャスティン・ビーバーが心の拠り所にする「ヒルソング教会」&謎のイケメン牧師とは?】)



また同『FRONTROW』によれば「ヒルソング教会」の概要は以下のようなものらしい。

《キリスト教ペンテコステ(聖霊降臨)派の牧師夫妻であるブライアン&ボビーヒューストンによって1983年にオーストラリアで設立。宗教にあまり関心の無い若い世代からも支持が高く、現在では、世界18カ国に80以上もの支部を持つほどに成長している。

同教会のウェブサイトには「ヒルソング・チャーチは、ジーザスを信じ神と人々を愛する教会です」との記述があり、信仰としては標準的なキリスト教のものと変わらない。》



活動面での特徴は音楽を重視していることである。

《ヒルソング・チャーチは、街のこじんまりとした教会で集会を行う代わりに、ナイトクラブや劇場、まるでコンサートでも行うかのような大きなライブ会場などを貸し切って、賛美歌パフォーマンスを含む大規模集会を行っているほか、3つの音楽レーベルを所有している》(※ 同上)



でもって、ジャスティン・ビーバーのほか、元恋人のセレーナ・ゴメスやケンダル&カイリー・ジェンナー、モデルのヘイリー・ボールドウィン、コートニー・カーダシアンなどからも支持を受けているらしい。らしいばっかりですまんの。なにしろいま調べたばかりだでの。



両親が離婚して父親との縁が薄かったジャスティン・ビーバーにとって、妻と3人の子どもがいるレンツ牧師は理想の父親に見えるのかもしれない。入信のための洗礼を受けた後、約1ヵ月半、ジャスティン・ビーバーはレンツ牧師のもとで暮らしている。その家庭のようすに憧れを抱いたであろうことも容易に難くない。





〈転〉:展望 ****************

「このツアーが本当に素晴らしいものだったこと、自分自身のことをたくさん学べたツアーだったことをみんなに知ってもらいたい。この世界で自分の言いたいことを言える立場でいられることが、どれだけ恵まれているのかを思い出させてくれた。自分の使命に感謝できるようになり、その使命をもっと大切にしたいと思うようになったんだ。今、音楽活動を休むのは、これから先も活動を続けていくためなんだ。」



ここは「パーパス・ワールド・ツアー」中の自身の変貌について述べている。それはもちろん、ヒルソング・チャーチの信者となったジャスティン・ビーバーがそこで学んだ信仰や世界観にもとづいて自分のやっていること,立場をトレースし直し、掴み取ったものである。



そして「使命」をより強く感じたので、それをまっとうするために音楽活動をいったん休止する、というお話である。たしかに14歳からの9年間をショービジネスに打ち込んできたジャスティン・ビーバーには、オトナになる前に経験しなければならないことがまだまだたくさん残されている。バカな友だちやバカな冒険、世界に対する深刻な怒り、人間の複雑さへの脅威などなどは、それなりの時間をかけなければほんとうには感じられないし得られない。





〈結〉:結論 ****************

「僕はこれからもキャリアを築いていきたい。でも、自分の心や魂も大切にしていきたいんだ。そうすれば自分がなりたい自分になれるし、いつかは誰かと結婚して自分のなりたい夫や父親になれる。このメッセージは、僕の気持ちを知ってほしいというだけで書いているんじゃない。みんなに理解してもらいたいと思っているわけではなくて、今の僕の行動の理由を伝えたいと思ったんだ。このメッセージが文法的にめちゃくちゃなのは、よく分かっている。でも、これは心からの言葉なんだ。不完全なものにこそ、特別な何かがあると思うんだ」。



いつかは理想的な夫や父親になりたい。クリスチャンとしての熱烈な信仰告白である。ジャスティン・ビーバーは「パーパス・ワールド・ツアー」の突然の中止のいいわけをするためにこれを書いたのではなく、この告白のために書いたのである。しかし、



うむ。ヒルソング・チャーチへの急速な傾倒は傍目にはいささか危なっかしくも映るけれども、いまのところはよく役に立っているようである。ってエラそうで申しわけないでごわす。宗教についての私の立場は「ときどきは役に立つけれども本質ではない」(by吉本隆明)なんだもん。



ジャスティン・ビーバーの突然のツアーの中止はたいへん寛容に受け取られているように見える。おそらくそれには今年の5月と7月に2人のボーカリストが相次いで自殺したことも関係しているように思う。サウンドガーデン、オーディオスレイヴのクリス・コーネル(享年52)と、リンキン・パークのチェスター・べニントン(享年41)である。



つまり多くの人々が、これまでのジャスティン・ビーバーにメンタルな危機の予感を抱いていたのだと思うのである。私もここで立ち止まってくれてよかった、とほんとうに思う。いまはただ静かに、またいつかジャスティン・ビーバーが姿を現す日を待とう。



でも正直なところ、このまま伝説になってしまうのも悪くないとも思ってしまうのである。ゴメンネ、ジャスティン。(了)






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