「このハゲーーーーー!!」と絶叫し、「お前らは白痴か? 痴呆症かお前らは?」と罵倒し、そして実際に旦那もハゲているらしい(本人申告)豊田真由子(42)が、9月18日午後6時30分から地元の新座市内で記者会見を開いた。その録画を、ああ真由子のマユが……、とスナック菓子をポリポリしながら眺めたけれども、見終わった印象はかなり凄惨なものであった。
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なにをしでかしたのか泣きじゃくりながら必死に親に謝っている幼児の顔面クローズアップを久しぶりに見た気分である。そして子どもを育てるということはたいへんなことなんだよなあ。むしろ子どもにあまり手を欠けてやれなかったむかしのほうがよかったのかもなあ、とポリポリ。袋を捨ててしまったのでスナック菓子の商品名がわからぬけれどもけっこううまい。
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これから書こうとしているのは、つい照れてしまうくらいにベタなお話である。“ベタ”というのは典型的、絵に描いたような、という意味で、つまり照れてさせてしまうくらいベタな情況を抱えた豊田真由子はそうとう深刻である、ということである。なにをまわりくどい。
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立ちっ放しで約2時間におよんだ会見をとことん要約したニュースがある。
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◆『スポーツ報知』2017年9月18日配信
【豊田真由子議員「次の総選挙に出ませんと申し上げているわけではなく…」会見問答】
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《 〈— 略 —〉
―元政策秘書への暴言はあった?
「全部聞かせていただいわけではないんですけど、報道されたものを聞いたりして、自分が言ったとは…。自分の音声だと思います。本当に申し訳ないという思いでいっぱいであります」
―元秘書に手を挙げた?
「これがまさに刑事事件の捜査中でありまして、何が事実かと言うことについて、この場で申し上げることはできないと…。大変心苦しいんですけど。大変な暴行を働いて大けがをさせたことはありません」
―議員活動を続けるのか、辞職は考えないのか?
「厳しいご批判を受けており、辞めてしまった方が楽というお話もありました。楽な道を選ぶのではなく、必死で働いて、引き続き地域のため、国のため、世界のために働ける仕事をして、恥をさらして生きていくことが償いに、責任を取ることになると考えております」
―衆議院解散と言われてるが、次の選挙で出るのか
「正直、そこまで考えてないというか、3か月ぶりに地元に帰りまして、じゃあここから先にどうするかは、まだこれからです。例えば今日、集まって下さった後援会の方は普段の私の活動を知ってくれている方々で。『パニックになってしまった真由子とは違う』と思ってくれるんですが、一般の人は、裏表があると思ってしまっているのは事実だから、『これからどうやって説得していくか』、『時間がないよな』という人もおられました。『俺たちはずっと応援するから』ということを後援会の人に言って頂きましたが、私からは何も言っておりません」
―総選挙に出る意欲はあるのか
「次の総選挙に出ませんと申し上げているわけではなく、戸惑っているというのが正直なところです。議員を続けさせて頂けるのは、選挙で受からなければ議員を続けられませんので、必然として総選挙に出ないことには…」
―ここまで説明責任を逃れて出る資格があると思われますか
「資格のあるないというのは、どこでどういう判断になるかは…。心身が不調で医師に止められ、止められ、時間とか労力をぜひとも挽回したいというのが切なる思いです」》
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自身が起こした暴言問題について、豊田真由子(42)は率直に「異常な言動をした」と認めている。「音声を聞くたびにぼう然として、どうしてこんなことを言ったのか。本当にどうかしているなと思いました」「あのときは10日くらいの間ですごくトラブルを抱えていた。ショックだったし、自分が作り上げた信頼を壊される恐怖で混乱状態になった。パニックで自分を失っていた」、である。その背景として婦人科系疾患と内科系疾患を抱えていたことも明らかにしている。
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さらに、5年間いつも笑顔で頑張っていた豊田真由子と秘書に罵声を浴びせる豊田真由子とどちらがホントの豊田真由子なのかわからない、といわれるという話を数回繰り返していたし、また「夫もあの声はほんとうにお前なのか? 」といっていた、と語っている。
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すなわち豊田真由子としては、あの暴言・罵詈雑言は、ふだんの自分からは逸脱した異常行動であった、と理解している、少なくともそう説明しているわけである。私であって私じゃないの、である。そしてその異常な自分をスッパリ切り捨てることで現在の自分の妥当性を保とうとする。
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これはこれはたいへん危なかしい。異常な自分も、のちにそのことを激しく悔やむ自分も間違いなく自分なのであって、その矛盾を引き受けられなければ再び同じ過ちを犯す危険をいつまでも克服できない。どこかの虐殺者のように「自分たちがやったこととは信じられない」とかなんとか、自分の“悪”に目をつぶっていてはなにも変わらない。
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いうまでもなく選挙には出る気満々、やる気満々である。政治に復帰する理由については、記事にもあるようにラクな道に逃げるのではなく厳しい道を選び、恥を晒して生きていくことが償いになると思い、そうして地域・国・世界のお役に立ちたいからだそうである。
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お言葉ながら“厳しい道”と“恥を晒す”の2つはワタクシゴトで、有権者に直接関係するのは最後の「地域・国・世界のお役に立ちたい」だけである。申しわけないけれども不肖私もコソコソと自室でパソコンに向い、いくばくかの金を稼ぎささやかな消費もして、地域・国・世界のお役に立っているつもりである。同時に環境負荷の一部も担いつつ。
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しかしどうも政治家・豊田真由子の核には、この漠然とした「地域・国・世界のお役に立ちたい」しかないらしい。それはそれでむろん間違いではないし立派なことである。But!! そんなことはどこのどの政治家もいうのである。政治家・豊田真奈美おっとまた間違いた(by荒木経惟)真由子のその姿はピントが盛大にボケている。
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異常な私は私であって私じゃない、活動目的がいまいちはっきりしないのになにがなんでも国政に携わりたい……、どうしてこんなことになっているのであろう? その答えがベタなのである。
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記者会見が後半に差しかかったとき、ご本人が5年間の政治活動を振り返るなかで、自分を偉いとも秀でているとも思っていないという話から、「私は自己肯定感がメチャクチャ低い」「スゴーく頑張らなければいる資格がない」と語っていた。
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こういう人はいる。すなわち、ありのままの自分など取るに足らない存在で、他人から評価されるなにかを得てはじめて存在価値があると考えている、という人だ。このとき豊田真由子、目をウルウルさせていた。
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バカだなあ、そんなこと、誰からどんなふうに見られたっていいじゃん、自分で好きなようにやってれば、私なんか坂につまづいて転んで犬に踏まれた男だよん、というふうにいい加減には絶対になれないし、いわれてみれば少し変態かもしれん、と自分のネジが曲っていることを認めることも絶対にできない。
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ああ、そうか。そうなんだよなあ。私は逆に自己肯定感がメチャクチャ高いんだよなあ。バカなのかもしれないなあ。
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で、豊田真由美はつねに絶対的に勝ち続けなければならないのである。スゴーくスゴーく頑張って東大法学部から国家公務員になったのもそれだし、しかしそれは厚生労働省であり、さらにそこの次官コースからもどうやら外れたと知ったときに、めざすべきは政治家、政治家への転身、となったのもそれであろう。
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“メチャクチャ低い自己肯定感”は「スゴーく頑張らなければいる資格がない」という強烈なオブセッションとして豊田真由子の人生を支配している。政治家は選挙に落ちればただの人、と簡単にいうけれども、豊田真由子にとってはそれは掛け値なく死と同等以上の恐怖であろう。
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であるから、この記者会見のなかでも「たとえ難しくてもその次、その次、と……」と落選しても決して撤退しない意向を見せていた。撤退しなければ何回落選しても負けたことにはならないのだし。辛いことじゃのう。
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ではその“メチャクチャ低い自己肯定感”はどこからきたかというと、成長の過程で植え付けられたのである。否定されることが多かった、褒められたり認められたりする機会が少なかった、自分で選択する機会が少なかった、ネグレクトされていた、はずである。
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つまり豊田真由子の場合はいつもいつも一貫して全力でよい成績を取ることを求められ、しかしいくら頑張って成果を挙げても、挙げても挙げても挙げても誉められることはなかったのだ、と私は思う。
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2014年4月、現職の国会議員と配偶者のみが招待される東京・赤坂御苑での園遊会に豊田真由子が母親をともなって現れ、入場を制止する宮内庁職員らと大ゲンカのすえ強引に受付を突破したという出来事、いやもはや事件があった。それほどの暴挙である。しかしここでなんとかして母親に認めてもらいたかった豊田真由子の心情を察するに痛々しく、それはそのまま今回の記者会見の凄惨さにつながる。
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つねに絶対的に勝ち続けなければならない豊田真由子の凄惨な姿は会見の冒頭と最後に象徴的に現れた。冒頭、約40分間の挨拶と会見の趣旨説明のなかで、豊田真由子は4回、深々とアタマを下げている。
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1回目はお騒がせご迷惑をおかけした皆さまに対して、2回目は元秘書とその家族に対して、3回目は支援者・国民に対して、そして4回目は全体のおさらいとして、である。ごていねいなことである。
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深々とした礼のあとに上げた豊田真由子の顔は、恥辱と苦痛に満ちて激しく歪んでいた。なにを叱られているのかは理解していない、むしろなにも悪いことはしていないと思うのだけれども謝らなければ許してもらえないので号泣しながらも謝っている幼児の顔である。負けは許されないのに。
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その後、まるで一面の小さな掻き傷にカットバンをペタペタ貼っていくような報道陣との退屈な問答が続き、とうぜん一歩も引かぬ——だから逆に反感を買ってしまう、やりとりをしてペースを握った真由子はいささかご機嫌になった。マユも少しピクピクするようになっていたのである。
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ところが最後の質問者、『週刊新潮』の記者が、元秘書への暴言について最初に否定したのはウソをついていたことになるけれども……、と語りかけた途端、豊田真由子は文字通りその言葉に被せて猛烈な勢いで反論をはじめたのである。しかも、この礼儀を失した応答のしかたはほかの場面にはなく、さらに2度3度と繰り返されたのである。
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つねに絶対的に勝ち続けなければならない豊田真由子は、ここでまた「異常」な自分を露呈してしまった。そうなってしまうわけもわかるしたいへんだなあ、とも思う。しかしこれでは国政には向かない。ただひたすら負けず嫌いをバネにして馬車馬のように働けばよいというのは官僚の世界のお話である。
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しかもそのうえご本人はどんどん登り詰めていかざるを得ないオブセッションを背負っているのであるから、末は大臣、総理大臣、などという夢も思い描かないとも限らない。そうでなくても国の舵を取るの重責だ。簡単に「異常」な自分になってしまう人にそれはムリ。いまのうちに諦めたほうがいい。国民が迷惑するし。
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豊田真由子には自分の心と向き合って生きるのがいちばんの道だと思う。静かに人間としての成熟をめざしたまえ。
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この、根拠なく遥かに高い自己肯定感も少しなんとかならぬかのう。
(了)
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