悪いこととは重々承知していても、咎められてさんざん酷い目にあっても、性懲りなく何度も繰り返すのが「不良」の絶対条件である。その点「ワル」には一度とっちめられるとさっさと方向転換してどこかへいってしまう小賢しさがある。小狡しさ、ともいうか。あ、小狡賢さか。
*
たとえば山尾志桜里(43)は不良への道を順調に歩んでいて、その一里塚が倉持麟太郎(34)である。一里塚中学校の生徒・倉持麟太郎はやがて世間知が付けば「ワル」に転ぶ。そんな中坊と先輩卒業生の運動会をワケもわからず熱烈応援しているのが体育教師・小林よしのり(64)である。そのうちPTAと衝突して停職をくらう。
*
ではどうして人は「不良」になるのか? が今日のテーマである。色惚け? それはこちらはそうかもしれないけれども、ちょっとこの際おいておく。今日書きたいこと、もうひとつの回答がこれだ。
*
*
*
『デイリースポーツ』2017年11月10日号
【佐野量子さん 夫・武豊騎手の抱擁写真めぐる「4つの神対応」】
《写真週刊誌に年下タレントとの抱擁写真が掲載された競馬の武豊騎手(48)の妻で元タレントの佐野量子さん(49)が10日、フジテレビ「直撃LIVE グッディ!」の直撃に笑顔で応じた。番組では佐野さんの落ち着いた対応を絶賛し、「4つの神対応」としてまとめた。
佐野さんは京都市内の自宅で対応し、スタッフに「京都までありがとうございます。こんなとこまで来ていただいて。こんなことで皆さまに」と何度も頭を下げた。神対応(1)として、佐野さんがカメラの前で何度も頭を下げたことをあげた。
フライデーの直撃に対してピースサインで明るく対応した様子が同誌にも掲載。そのことを聞かれた佐野さんは「大きなカメラをお持ちだったので」と返答。神対応(2)として、取材相手を思いやった対応をしたことをあげた。佐野さんは、フライデーの直撃時は記事の内容を知らなかったという。
佐野さんは今回のことについて、「主人はお酒を飲むとちょっとフレンドリーになってしまうところがあるのかな。悪い意味じゃなくて。それは私もよく分かっているんです。ですので、そんなに大きなことではないなと思ってる」と話した。神対応(3)として、夫の酒癖に寛大な心であることをあげた。
佐野さんはまた、武がフライデーに載った写真を「見ないでほしい」とお願いしていることを明かした。その願いを受け入れて同誌を見ないと決めたそうで、神対応(4)として当該の写真を見ないことをあげた。》
*
*
*
ついさっきまでここにいた知り合いが「武豊のホーキョー写真!! ホーキョー写真!!」というのでなんのことかと思ったらこの記事であった。「抱擁」を“ホーキョー”と読むようになってはニートもお終いである。“豊胸武豊”ならうまく収容できるジャンルがあるような気はするが。
*
ともあれコレである。夫に浮気された(この場合はなかったことになっているが)妻の“神対応”である。しかし妻の“神対応”は当の夫にしてみれば“地獄対応”に違いない。ということである。報道陣に向って何度もアタマを下げる律儀&健気なはずのそのお姿が、その背中が勝ち誇っているように見える。はずである。というお話である。
*
たしかに悪さをしたのは自分である。逃げも隠れもしない。マスコミがこんなに大挙して自宅前に押し寄せる事態を招いたのはあなた自身じゃないの、といわれればおっしゃるとおりごもっとも、二の句が継げない。しかし、だけれども、気分は山からうっかりのそのそ出てきて射たれ、四肢を縛って軒先に転がされている間抜けなクマの気分なのである。
*
罪の意識があるから、いまにも髪の毛を鷲掴みにされ「コラ! おまえももっとちゃんとあやまらんかい!!」とグイグイ地面に押し付けられそうな気分にもなる。「あっちこっちの畑でコソコソコソコソ食い散らしやがって」。はいはい、ですから悪いのは私、それはよーくよーくわかってますから。はい、すみません。口応えしてすみません!!
*
このあたりのニュアンスを『デイリーニュースオンライン』は“芸能記者”の声を借りてこう語っている。
*
*
*
《「フライデーの報道を受けて、今朝も各局ワイドショーが武の自宅を直撃してるんですが、その時も佐野が登場し、『キツく怒りすぎたかな?というぐらい、キチっと怒りました』と言ってます。佐野は結婚当初から『あのおっとりした喋り方はキャラで、じつはかなり気が強く、周囲が困惑している』とさんざん週刊誌に書かれていた人物。佐野が笑顔を振りまけば振りまくほど武の顔が強ばっていく様子を見てると、家庭内での第2レースが始まっているんだなと察しがつきます」(芸能関係者)
武の生涯獲得賞金は約50億と言われる。それほど稼げば浮気の一つもしたくなるだろうが、離婚となれば「慰謝料」は天文学的な数字になる。武は浮気の代償に、この先も佐野に御され続け、馬車馬のごとく働くことになりそうだ。》
(2017年11月10日配信【武豊の不倫騒動、妻・佐野量子の取材が神対応すぎて「あれが逆に怖い」と関係者】)
*
*
*
つまり夫と並んで取材陣に対応している妻にとって、その状況は獲物のクマの毛並みを自慢している趣もあり、逆に楽しくてしかたがないはずなのである。と私は邪推する。横で晒し者になっている夫はただただ曖昧な笑いで誤摩化すかひたすら恐縮して見せるしかない。武豊の場合は誤摩化して笑い、ひたすら恐縮してみせたのは中村橋之助(52・現中村芝翫)であった。その中村橋之助の妻・三田寛子(51)が繰り出した“地獄対応”のもうひとつの例をご覧いただこう。
*
*
*
『デイリースポーツ』2016年9月17日号
【三田寛子、笑顔の神対応「離婚ないで~す!」 夫・橋之助の不倫騒動を謝罪】
《 京都の芸妓との不倫を報じられた歌舞伎俳優・中村橋之助(51)の妻でタレントの三田寛子(50)が16日、都内で取材に応じ、夫の騒動を謝罪した。三田は橋之助について「これからが彼の男としての見せどころ」と言ってのけるなど、堂々の対応。笑顔を絶やすことなく、離婚についても「ないで~す!」と完全否定した。
あっぱれの対応だった。橋之助改め八代目中村芝翫襲名披露興行(10月2日初日、東京・歌舞伎座)の打ち合わせで、都内の稽古場を訪れた三田は、集まった報道陣に対し「この度は多大なるご迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございませんでした」と深々と頭を下げた。その上で「今一度夫婦で立ち返って、よく考える時間というものを神様に与えていただいた。きちんとこれから地に足を付けて頑張って進んで参りたいと思います」と、目前に迫った大舞台への意識を強調した。
橋之助は、15日発売の週刊文春に20年来の付き合いである京都・先斗町の芸妓との“不倫”を報じられ、14日に都内で会見。「不徳の致すところ」を連発し、事実上認めて謝罪していた。この日、三田は同誌発売前に夫から報告を受け、2人でしっかり話し合ったことを明かした。橋之助は深く反省していることし、“再起”へ背中を押した。
「もう、何の言い訳もないと思います。これからが彼の男として、人としての見せどころとなっていくことを肝に銘じて、一生懸命、中村芝翫を継ぐべき人間として頑張ると申しておりました」
歌舞伎界では、既婚者でも女性との交際は「芸の肥やし」と評価される風潮があるが、「はい、そんな“ことわざ”もございます」と軽く受け流して笑顔。離婚についても「ないで~す!」と一笑に付した。
三田が姿を見せる直前から、稽古場付近では強い雨が降りしきった。「世間には雨降って地固まるということわざがあるように、私もそういうふうに言っていただけるように」。明るく振る舞う中でも、梨園の妻としての強い覚悟をのぞかせた。》
*
*
*
やっぱり夫にとっては地獄である。武豊が針のむしろに座らせられたのだとすれば、中村橋之助は死ぬまで立ち尽くすしかない恐ろしい立枷にかけられたようなものである。むかしの中国の刑罰である。そうして生き恥を晒しつつなんともいいようのない生涯を終えるのである。
*
はいはいはい、わかっております。わかっております。三田寛子にしても佐野量子(49)にしても夫に裏切られた口惜しさ切なさはいかばかりのものでございましょうか。それを夫のため仕事のため、家のために胸の奥にグッと抑え込んで明るく対応されるお姿に、こともあろうに針のむしろだの立枷だの、なにを勝手ないいぐさでからかうのか!! でございます。そのとおりでございます。
*
というようなことを、武豊も中村橋之助も延々と自分自身に言い聞かせていたわけである。妻は100%正しく自分は100%悪い。やってしまったことは取り返しがつかない。謝って許してもらうしかないのである。そんな反省と自己嫌悪と恥ずかしさで真っ赤になっている耳に「(離婚は)ないで〜す」という妻の明るい声が響いてくるのである。実際に聞こえたかどうかは知らないけれども。
*
そのとき、ああ、申しわけない、妻に申しわけない、自分はなんていうことをしてしまったのであろう、という気持のなかに、心の奥にポッと「いったいオレがしでかしたのはそんなに悪いことか?」という疑問がわくのである。「人を殺したというわけでもあるまいし」。極悪非道の犯罪人みたいにいうな。
*
と起訴内容は認めるけれども「これは少し叱られ過ぎ、謝らせられ過ぎではないのか?」、と刑量に不服が出てくる。「不良」へのリスタート(byファンキー加藤)である。いやいや悪いのは自分だ、すべて身から出たサビ。それにこれ以上世間からバッシングされるのは困る。つべこべいわずにすべてを投げ出して謝るしかない。うううう。
*
それにしても長くないか? レポーターども。付き合っている妻も妻だ。「神対応」だの「妻の鑑」だのいわれてそんなにいい気分か? 勘違いするなよ、世間やマスコミから見て、というかどこから見てもスターなのはオレのほうだ、そのオレの真ん前にいいツラしてしゃしゃり出て調子こいているなんて、わが女房ながらちょっと違うんじゃないの? 悪いのはこっちだからとてもそんなことはいえないけど。
*
しかしいったん火がついた反逆の炎は時間とともに燃えさかるのである。あのな、浮気男がほんとうに後悔するのはな、黙って耐える妻の姿を見たときなんだよっ!! なにもいわずに唇を噛むとか後ろを向いて涙を隠すとか。むかしむかし石原真理子が玉木浩二との不倫会見でやったやつだよっ。いまはメチャクチャだけどよう。マスコミ対応しなきゃなんないのはわかるけどよう!!
*
そしてついにはこう考える。「魂の虐殺だ!!」。みんなで寄ってたかってバカにして、これは魂の虐殺だ。クッソー!! たしかに浮気をしたオレは悪い。女好きでスケベでだらしがない。しかしだからといって、人さまの前で人の顔を踏みつけるようなことをしておいて自分だけいい子になろうとするなんてどういう了簡だ? えっ? どういうことだ? えっ? いまに見てろ、いつか必ず仕返ししてやる。仇を討ってやるからな。
*
と、さらに妻が怒り狂いそうな女を物色することを固く心に誓ったりなんかするわけである。こうしてめでたく、性懲りなく繰り返す「不良」が誕生するのである。いいかわるいかは別にしてこんなものなのである。なので武豊も中村芝翫も必ずまたやる。もうとっくにやらずにはいられない気分になっているのである。
*
うむ。白を黒、おっと間違いた(by荒木経惟)黒を白といいくるめるのに梅沢富美男(67)的話法がたいへん有効であるということがよくわかった。そのようなナイスな収穫がありつつも、なんだかひどく虚しい。のう。心が北風ピューピューじゃ。(了)
OCN モバイル ONE データ通信専用SIM 500kbpsコース
CMで話題のコスメやサプリがSALE中☆
【DHC】最大70%OFFのSALE開催中!
0 件のコメント:
コメントを投稿