BABYMETALに「NO RAIN, NO RAINBOW」というバラードがある。ラブ・ソングとも、もう少し広い意味内容にも取れる歌詞でなかなかの名曲である。しかし同時にどことなくイヤな予感もまた感じていたのだ。
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その予感の理由がわかった。この曲、メタルのアレンジを外せばモロに中島みゆき(66)なのである。ウソだというなら試しにカラオケでキーをガッツリ下げて歌ってみ。キーをシフトできなかったら1オクターブ下で。な? きっと納得いただけるはずなのである。
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恐ろしい。まったく恐ろしい。まるで知らないうちに隣家にジワジワと庭を侵食され、気づいたときには家の周りの土地すべて他人の地所になってしまっていたというような、砂浜で寄せては返す波を眺めていたらいつのまにか大海原の離れ小島で膝を抱えていたというような、うつけがある日突然陥る恐怖である。
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どうしてこんなことになってしまったのであろう? というか、これで実は私は中島みゆきのメロディが嫌いではなかったのだ、ということが明らかにされたわけである。いままで一度たりともそんなふうに感じたことはなかったのに。
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ああ、いつのまにかシイタケ菌に養分を吸い取られてボロボロになったホダ木のような気分である。何度トライしてもたとえが貧しいのう。なにぶん洋楽ばかりを聴いてきたつもりなのでたいへん慌てふためいているのである。
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いや待て、これは好き嫌いの問題ではなくて中島みゆきのメロディの浸透力がたいへん強い、強すぎるという問題なのだと思う。そういうことにしよう。で、ある日突然そいつは活動を開始するのだ。スリーパー・セル(by三浦瑠麗)である。中島みゆきはジワジワと何十年もかけて侵犯してくる。
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きっとほかにも、たぶん思いがけないところに中島みゆきメロディは潜んでいるはずである。たとえばジャニーズとか。聴いていないので具体例を提示できないのがまどろっこしいけれども唱歌っぽい感じがするので。
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おお、「唱歌」に「中島みゆきメロディ」。はからずもいま、不肖私は中島みゆきこそが現代における日本の流行歌の王道であると看破してしまったのである。おのおの方も好き嫌いはあれど認めざるを得ないのではないか?
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中島みゆき、桑田圭祐(62)、松任谷由実(64)が日本のニューミュージック界の三大クリエイターといわれた時代が長く続いた。ニューミュージック、ほかになにかある? そのうち松任谷由実がここ数年で脱落した。
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松任谷由実の2012年発表のシングル「恋をリリース」はオリコンチャートの最高順位が34位、売り上げはたとえCD不況とはいえ5000枚にも届いていない。それ以降シングルが出せていないのもなによりの凋落の証しだ。ご本人の歌唱力の衰えも目に余るし。
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なぜ松任谷由実が売れなくなったのかといえば、松任谷由実のヒット曲は計算づくで、いわば松任谷由実流の綿密なマーケティングのうえに送り出されていたものだからだ。で、最近もマーケティングみたいなことはおやりなのであろうけれどもそこにフックする曲が書けない。
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綿密なマーケティングにのっとって書いた曲たちは社会や時代と深く関わり過ぎているために、どうしても早く陳腐化しやすい傾向がある。いみじくも松任谷由実、かつて以下のように語っていたそうだ。
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「あたしは時代とシンクロしちゃいましたからね、幸運にも。60歳くらいまでこのままでやれると思う。もしもあたしが売れなくなるとしたら、日本の社会が何か変わる時だと思う。ひばりさんが日本の復興の象徴だとしたら、あたしは繁栄の象徴なんです」
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対して中島みゆきの関心はほぼ自分自身だけである。そのように見える。で、自分を掘っていってある程度の普遍性に辿り着く、というやり方。なので善かれ悪しかれ時代の影響を受けづらい。まあ、中小企業がよくいう“地域に根ざして世界に開く”みたいなもんす。で、たとえば1992年発表の「糸」がいまもカラオケで熱唱されていたりする。
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話は飛ぶけれどもカラオケで歌いやすいのは中島みゆきと吉幾三が双璧だと私は思う。そしてともにガンガンに声を張り上げて、というか怒鳴って歌うと気分がいいというのも同じ。むかしの学生寮歌みたいなもんす。かくして中島みゆきはもうそれほど曲を書かなくても生き残っていくのであろうと思う。
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最後に残った一人、桑田圭祐も社会や時代とはほとんどコミットしない。なぜかといえば桑田圭祐の音楽はファンの音楽であって、表現者の音楽ではないからだ。あんなふうに歌ってみたいこんなふうに演ってみたい、という欲求だけが原動力。
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そんなわけで桑田圭祐はいつまでも憧れのスターを追いかけているだけで自分なりのオリジナルには向わない。結果としてなにをやってもなにかのエピゴーネンあるいはパロディになってしまっている。「ひとり紅白歌合戦」がそのなによりの例であろう。ここに社会や時代との主体的なコミットはない。
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そんな桑田圭祐だけれども、体が元気なうちはもつじゃろが、だいたいやれることはやったようだし、かなり先行きが厳しいところまできている感じがする。桑田圭祐を聴くならオリジナルの洋楽を聴いたほうがいいという方々も多いし。
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ここはひとつ、先行した方々から目を転じてジャニーズやLDHをネタにするという手もたしかにある。しかしそれらは桑田圭祐自身の憧れの対象ではないのであまり食指が動かず、また長年築いてきたステイタスを貶めることにもなりかねないので、最後の手段ということになろう。
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というわけで最終的に中島みゆきが残るのである。と私は思う。うむ。黄昏ゆく日本列島に中島みゆきの歌声だけが響く、とイメージしただけで泣きたくなるくらい寂しいではないか。しかしこれが現実であろう。
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中島みゆきがメタルをやればいいのだ。北海道のサーベル・タイガー(SABER TIGER)と一緒に。(了)
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