2018年3月27日火曜日

フィッシング詐欺メールをはじめて読んだ感想文でやんす



フィッシング詐欺メールが迷惑メールに振り分けられずに受信ボックスに入るようになった。すべて文章だけ、色数もURLが青字になっている以外はスミ1色というような、きわめて質素といおうか地味なものばかりである。しかし私はそこに読ませて騙すぞ!! という勝負師の気迫を感じるのである。ヒマなので読んでみた。





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       byウィリアム・ジェイムズ


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「私としては/本物だと確信できる/内容なので」だけれども、こちらの私としてはもちろんまったく確信できるはずがない。とくに最後にある「配信停止」のURLが怪しい。ドッキリ企画で順路を渡り切る直前に仕掛けられている落とし穴のようなものだ。これにハマると敵はおおいに喜ぶがこちらの精神的ダメージははかりしれない。



ここで体験レポートふうのものを期待しておられる方々には申しわけないけれども、面白半分にクリックしてメンドくさいことになるのはイヤなので遠慮しておく。



引用されているウィリアム・ジェイムズは19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したアメリカ合衆国の哲学者、心理学者である。Wikipediaには「意識の流れの理論を提唱し、ジェイムズ・ ジョイス『ユリシーズ』など、アメリカ文学にも影響を与えた」とある。享年68歳。



「意識の流れの理論」、なるほどね。唐突だがアントニオ猪木の詩を思い出す。



この道をゆけばどうなるものか
危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ
行けば分かるさ



なりゆき任せといおうか判断放棄といおうか、どこかのどかで脳天気な感じもある。それがたいへんアントニオ猪木らしく、また「フィッシング詐欺」という名称ともシンクロしているのだ。ひねもすぼやっと釣り糸を垂れている感じで、やってみればなんとかなるんじゃないのー、と誘ってくる。そしてさっきのあなたといまのあなたは別人だから、おめでとう。とかなんとか。「意識の流れの理論」は人さまをいいくるめるにもうってつけではないか。



ちなみにウィリアム・ジェイムズのいう「意識の流れ」とは、「人間の意識は静的な部分の配列によって成り立つものではなく、動的なイメージや観念が流れるように連なったものである」(Wikipedia)ということらしい。人間は頼りない生きものなのである。



おーっ、と。この詩をアントニオ猪木作だと思い込んでいた私もとんだ脳天気野郎であった。一般には一休禅師の詩とされているらしいけれどもこれもまた違っていて、実は哲学者・宗教家の清沢哲夫(not清水哲男・詩人)によるものなのだそうである。いやはやこんなところで細かなフェイント「一休」までかましてくるとは、真理探究の道は険しからずや。



清水哲夫が書いた『無常断章』(1951)のなかにある該当する一節は以下の通り。





此の道を行けばどうなるのかと危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし
ふみ出せばその一足が道となる
その一足が道である
わからなくても歩いて行け
行けばわかるよ





そう、その通り。なにごとも第一歩からはじまる。たとえば「ウソつきは泥棒のはじまり」である。でもって泥棒は刑務所への第一歩でもあり後悔先に立たずである。行ってみてわかってからではもう手遅れということもあるのだ。〈できそうなことから始める!『新生活』〉くんも考え直したほうがいい。



〈できそうなことから始める!『新生活』〉くんは一人称「僕」なので、このメールは若い女子をターゲットにしているつもりなのかもという気がする。「意識の流れの理論」に則ったなし崩し戦法というのは詐欺を働くばかりでなく女子を口説くのにも案外有効かもしれない。そういえばたまさかテレビで見たナンパ師、スカウトとかいう方々の話法もいま思えば「意識の流れの理論」であった。



清水哲夫という人物については宗教家らしいという以外はよくわからない。



あらら、そんなこんなしているうちに今度はコレがきた。





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今回ポエムの引用はないけれども「中年救済機構」が効いている。オラも救済できるものなら救済してもらいてえ。しかし満50歳以上が対象とは中年もトシをとったものである。



あっそうか。「中年」というのは50歳以上の人間に対しておべっかを使っているつもりなのね。冴えない風体のサラリーマンに「社長!!」と呼びかけるがごとく。



しかし50歳以上の人間はいまさらまた中年に戻ってあくせくを繰り返したくなどないのではなかろうか。年齢限定のプレミア感というのもたぶん実感したことないであろうし。ほぼムダな小細工が多いっす。でも、これでも書けば仕事をやり終えた充実感はあるんだろうなあ。「意識の流れの理論」だなあ。



暇つぶしにお付き合いいただき、かたじけない。(了)




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