2018年1月6日土曜日

とても日本的な裏観光名所、青木ヶ原樹海とネット社会



エンターテインメント関連に限れば、正月早々イチバン怒られちまったのはユーチューバー(YouTuber)のローガン・ポール(Logan Paul・22)であろう。すっかり涙目で謝罪していた。





◆『BBC News』2018年1月3日配信
【「自分が恥ずかしい」 樹海の自殺遺体投稿した米ユーチューバーが謝罪】

《 ユーチューバーとして若者に人気の米国人ローガン・ポール氏が2日、山梨県の青木ケ原樹海で自殺したとみられる男性の遺体の映像を先月31日にYouTubeに投稿し、批判が殺到したことを受け、謝罪した。ポール氏は、許してもらえるとは思っていないと話している。

映像では、自殺者が多いことで知られる富士山の麓の青木ケ原樹海で、ポール氏と友人らが遺体を発見する様子が映されていた。

これに対しネット上で批判が殺到。「敬意を欠いて」おり、「すごく不快」との声も上がった。

ポール氏はその後謝罪し、「ショックと畏敬の気持ちで判断を誤った」と述べた。

ポール氏はツイッターに投稿したビデオで、「ひどい判断ミスを何度も犯した。許してもらえるとは思っていない」と謝罪した。

「ビデオを絶対に投稿するべきではなかった。カメラを置いて、自分たちがやっていることを撮るのを止めるべきだった。ほかにもいろいろなやり方はあったのに、そうしなかった」

さらに、「自分自身を恥ずかしく思う。自分にがっかりしている」とも語った。

映像は31日に投稿され、YouTubeで何百万人もが視聴したが、その後削除された。

ポール氏のYouTubeのチャンネルには、1500万人以上の登録者がいる。映像の中で同氏は遺体を発見しショックを受けながらも、冗談を言っていた。》





青木ヶ原で発見された自殺体はこれまでにもいくつもYouTube上にアップされていて、なかにはまだ吊り下っている遺体のすぐ脇に立ってゲロを吐いているたぶんアメリカとうさんの映像などというものまであった。外国人のレポートが多いのである。



その状況で今回ローガン・ポールがこれほどまでに怒られてしまったのは彼が有名な YouTuberであるからだ。閲覧回数を増やすためにやたらセンセーショナリズムを追いかけるYouTuber全体への反感が手伝っていることもあろう。



ネット上の言論・表現世界はますます“世間”的な体裁をととのえている。ウチの猫ちゃんはホントに可愛いのよー、から、あの北のデブ許せねえ!! まで、世間話で溢れている。ほんとうの現実世界の世間話であるならその到達範囲はタカが知れている。ごく稀に語り継がれて街の噂になるくらいのものだ。



けれどもネットの場合、到達範囲は桁違いだ。世間話によく取り上げられる小さな気付き、小さな思い、小さな出来事に対しても、受け皿は巨大である。また極端なことをいってしまえば、ネット上で怒られてしまうという現象の原因のいくらかは、この〈小さな発信:巨大な受け皿〉のアンバランスさにもあるように思う。質と量がいっしょくただけれどもそんな感じがする。



“世間話”は相手を選んでする。しかしネット上でそれはできない。“世間話”にある、あたたかで居心地のいい内輪の感覚はネットではご法度なのである。考えてみればあたりまえのことだけれども、私たちはまだこれに馴れていない。わかっているつもりでうっかり“気心の知れたコミュニティ”などという錯覚に陥る。たぶんこれは人間の本性と深く結びついているのであろう。



たとえばこうしてネットに上げることを前提に文章を書いているとき、読者として具体的に想定している、無意識にアタマに浮かんでくる人々は私の場合、思い起こして最大20人程度である。私のアタマが狭すぎるのかもしれないけれども、20人を相手に書いている。それ以上はイメージできない。これでどこかの誰かを怒らせないほうが不思議といえば不思議である。



でもって“巨大な受け皿”のほうもしばしば自発的に怒りの発言をするのでネットの世界はさらに騒々しくオコオコしている。“巨大な受け皿”には、匿名性に隠れて、という意味だけではなくて、支持してくれる人が多数という読み、の意味もある。ここの読みに“世間化”傾向、つまり“気心の知れたコミュニティ”の錯覚がないともいえないのも事実であろう。



というわけで、芸能人あるいはスポーツ選手など注目されがちな方々はいつも誰かが怒られている。今日もまた怒られている(エンターテインメント関連に限る)。見出しだけ挙げてみよう。





【V6・森田剛、宮沢りえとの“キス写真”スクープに「軽率すぎる」と関係者から呆れ声】
※『サイゾーウーマン』2018年1月5日配信


【日本の大晦日お笑い番組で黒塗りメイク 怒りと反発も】
※『BBC News』2018年1月5日配信


【「ガキ使」ベッキーへの無理やり尻キックにネットで批判の声「怒りで震える」】
※『東スポWeb』2018年1月5日配信


【TOKIO国分“インフル発熱”対応に疑問の声も】
※『ナリナリドットコム』2018年1月5日配信


【「正月に一番働くべきなのは嫁」ノンストップ「ダメ嫁判定」が物議 「時代錯誤」「ありえない」】
※『キャリコネニュース』2018年1月5日配信


【TBS『消えた天才』ヤクルト伊藤智仁特集に疑問の声多数】
※『NEWSポストセブン』2018年1月5日配信


【白鵬、横審の前で不評の張り手 解説者「不届き者だね」】
※『朝日新聞デジタル』2018年1月5日配信





この手のもの、いってみれば思いつきの感想に全員一致の反応を期待されているようで気持が悪い。なのでこれからこの手のニュースに出会ったら、小学生のとき隣に住んでいたおしゃべりババアの顔を思い出すことにしよう。



そんなこんなの意味も含めてローガン・ポールのやったことははなはだ浅薄である。よく捉えればこれが問題化したことはネット上の世間の自浄作用である。彼にはさらに現実世界、たとえばスポンサーサイドがどう対応するか、という問題も待っている。スポンサーは完全に巨大な受け皿、マスしか眼中にないのであるから。



それにしてもなぜ多くの人々が自殺の場所に青木ヶ原樹海を選ぶのであろう? 青木ヶ原で主人公が自らの命を断つという人気小説、あるいは有名な実際の事件でもあったのであろうか? かつて自殺の名所といわれた三原山の噴火口や華厳の滝はそのパターンであるけれども、青木ヶ原樹海でのそういうお話は寡聞にして知らない。



青木ヶ原樹海の場合、奇麗な場所で死にたい、とか絶対に亡骸を発見されたくない、とかいうニーズにはそれほどよくヒットしていないように思えるのである。どうだろう? 死ぬのに便利な場所ならもっと身近なところにたくさんある。それから、金がない、借金だらけで死ぬしかない、といいつつ青木ヶ原まで行けるというのはずいぶん贅沢な話ではないか?



『Best School Counseling Degrees』というアメリカのサイトの「MENTAL ILLNESS」のページに「10 Most Popular Suicide Spots on Earth」(2013)という記事があり、それを日本語に訳したものを見つけたので簡単にご紹介しよう。





【地球上で最も人気のある10の自殺スポット】

◆ 
第1位 青木ヶ原樹海(日本・富士)
2010年には、247人が自殺を試み、54人が実際に命を落としている。毎年、樹海は遺体であふれ、1年に1回遺体捜索が行われている。この地にまつわるオカルトや超常現象の話も多く、それが高い死亡数と結びついている。

◆ 
第2位 ゴールデンゲートブリッジ(アメリカ・サンフランシスコ)
1937年の開通以降、1500人以上、2週間にひとりの割合での自殺者が出ている。中でも1995年は最悪で、45件も自殺があった。しかし、最後の瞬間に死ぬのを考え直す人も多い。

◆ 
第3位 長江河川橋(中国・江蘇省南京)
1968年の橋の完成から2006年までの間に、およそ2000人の人が橋から37メートル下の川に身投げしたと言われているが、正確な数はわからない。

◆ 
第4位 ザ・ギャップ(オーストラリア・シドニー)
タスマン海を見下ろす険しく切り立った崖で、毎年50人ほどの人が飛び込み自殺する。

◆ 
第5位 ナイアガラの滝(カナダ/アメリカ)
オンタリオ州とニューヨーク州の境にある壮大なナイアガラフォールは、有名な観光地であるだけではない。毎年、20~25人が荒れ狂う水の中に飛び込む。1856年から1995年にかけて、なんとここで2780人が自殺したことが知られている。ここに落ちて自力で助かった人は3人しかいない。

◆ 
第6位 ビーチ岬(イギリス・イーストサセックス)
ここで自殺した大勢の人を偲ぶ碑があちこちにある。毎年、20人前後の人がここで身投げしているため、近年、自殺志願者を思い留まらせる試みが行われている。

◆ 
第7位 ウェストゲートブリッジ(オーストラリア・メルボルン)
1978年にオープンしたが、この橋は以前から悲劇の試練にさらされてきた。1970年10月15日、工事中に橋が崩れ、下の小屋で昼食をとっていた35人の作業員が亡くなった。警察の統計によると、3週間にひとりの割合で、58メートルの高さから飛び込んでいるという。

◆ 
第8位 サンシャイン・スカイウェイブリッジ(アメリカ・タンパベイ)
1987年に完成した橋。その美しい景観から、よく車のCMに使われる場所だが、全米屈指の自殺スポットのひとつでもある。2009年までに207人もの人がタンパベイの水中に飛び込み、34人が53メートルのダイブから生還したと言われている。いまだに年平均9人の自殺者が出ている。

◆ 
第9位 ハンバーブリッジ(イギリス・イーストヨークシャー)
この橋ができた1981年から2007年までの間、約200人の人々が橋から冷たい水中に飛び込んだ。30メートルの高さからなら、ほぼ確実に死ねる。

◆ 
第10位 コロナドブリッジ(アメリカ・サンディエゴ湾)
1972年から2000年の間に200人以上もの人々がこの橋から飛び込んだ。自殺がなかった年は1984年だけだ。





これまでの自殺者数がいちおう反映されているようではあるけれども、実際にどういう基準で選ばれているのかはわからない。水のある場所が10ヵ所中9ヵ所にランキングされていて、そのうちの6ヵ所が橋だということが特徴的だと思われる。



青木ヶ原樹海はここに名前が挙がった10ヵ所のうちただ1ヵ所、水とは直接関係のない場所である。また挙げられた人工物はすべて橋である。なんだろうなあ、みなさん死んでゆくその刹那、美しい景色に抱かれたいと思うのであろうか? 青木ヶ原樹海を除いて。



「この地にまつわるオカルトや超常現象の話も多く、それが高い死亡数と結びついている」という青木ヶ原樹海についての解説は私にはよくわからない。死のうとしている人は死んだ人をみんなお友だちとでも感じるのであろうか? それとも有名な場所で死にたいというブランド志向のようなものなのであろうか? あるいは数のなかに逃げ込みたい心理が働くのであろうか? はたまた闇の富士山信仰みたいななにかがあるのか?



ものごころついたときから行列をつくり、ナショナルチェーンのレストランや商業施設のフードコートで食事をし、ラブホテルでエッチをし、青木ヶ原樹海で自殺をするというのはものすごくつまらないことのように感じるのだけれど、私だけであろうか?



死んでゆくなかで水、あるいは深いうっそうとした緑に浄化されたいというような願いがあるのかもしれない。でも、いってしまえば亡骸というゴミをそこらに勝手に放置して浄化されたつもりになってもらってもなあ。



Why AOKIGAHARA ? ああ、こうなってしまえばたいへんインターナショナルな場所ではある。ある自殺者の死について外国人に説明しようとしたときこれほど通りのいい場所はないであろう。グローバルなんじゃ(by千鳥・ノブ)。(了)





OCN モバイル ONE データ通信専用SIM 500kbpsコース


CMで話題のコスメやサプリがSALE中☆


【DHC】最大70%OFFのSALE開催中!




0 件のコメント:

コメントを投稿