ここのところ続けてあーだこーだとテレビを語っているわけである。ふと気づいたのだが、このあたりで「テレビがある時代」とはどんな時代だったのか、簡単に確認しておいたほうがいいのではないか。いやいや決して忘れていたわけではないのである。ただ定義とか前提とか、そういうのが面倒くさいのである。
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日本でテレビ放送がはじまったのは1953年である。いわゆる団塊の世代より4〜6歳若い。ヘンないいかたで、すまね。団塊の世代が4歳から6歳のときにテレビ放送ははじまったのである。街角に子どもたちが溢れ返っていた時代である。
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同じ電波メディアであるラジオ放送は1925年にスタートしている。大正14年、翌年は昭和元年である。ここから、テレビを見るかラジオを聞くか、という時代がしばらく続く。
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次の大きな変化はやはりインターネットの登場である。一般的には、Windows95が発売された1995年がインターネット普及元年とされているようだ。テレビとラジオやインターネットとの比較、関係についてはまた改めて考えるとして、とりあえずはテレビが主役だった1953年から1995年である。
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テレビ放送開始とほとんど同時に、というか間髪を入れず、大宅壮一(享年70)の「1億総白痴化」のかけ声とともに「マスコミ時代」が幕を開ける。
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マスコミ報道が司法、行政、立法と肩を並べて第四の権力と呼ばれはじめたのは、それからおよそ15年後の1970年前後である。ときの総理、田中角栄がこの言葉を一般化させたという説もある。
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話は逸れるが、前回、テレビに殺されたのだと書いた三島由紀夫(享年45)はラジオ放送がはじまった1925年に生まれ、マスコミが権力になぞらえられるほど巨大化した1970年に自決しているのである。
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三島由紀夫は戦後文学の寵児であり、時代の寵児であり、それはすなわちマスコミの寵児でもあったわけである。実際に、由紀夫はかなり積極的にマスコミに登場していたのである。そしてそのこと自体が由紀夫を死に追いやったように思えてならないのである。
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小説家がマスコミ報道を自分に都合よくコントロールすることはできない。せいぜい頑張ってゴシップを抑えるくらいが関の山である。しかしそれ以上に、テレビに映る自分の姿さえも、自分自身でありながら完全に律し切れないのだと悟ったときの三島由紀夫の恐怖は十分に想像できるのである。
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1966年からの10年間は、中国で文化大革命の嵐が吹き荒れる。いってみれば中国共産党の修正主義に対する毛沢東原理主義の反撃である。それが潰え、中国は1970年代末から徐々に改革開放、市場経済への移行へ舵を切ることになる。
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1990年代に入ると、いきなり世界史的な大事件が続けて起こる。1990年の東西ドイツの統一と、1991年のソビエト連邦崩壊である。
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中国、ドイツ、旧ソビエト連邦で起こったことは、政治思想の頓死である。みな一様に、突然目覚めたかのごとく、「なによりまず飯を食えねば話になんねえ」、と思ったのである。命あってのモノダネである。それにはなんてったって金だよねえ、である。
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社会主義や共産主義の社会が負け、資本主義社会が勝ったということではない。元も子もない、即物的な世界になったということである。その元も子もなさの徹底に、テレビに映った光景、たとえば指導者たちの顔なんかがやはり大きな役割を果たしていた、と私は思うのである。
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そしてこの、一見、行き着くところまで行き着いたように見える元も子もなさも、まだ素の状態とはいえないのである。たとえば身の回りに日々猛烈な勢いで増え続けていく暗黙のルールはなぜだろう? なんてったて金だよねえ、は、世界というものの、とりあえずの解釈のひとつに過ぎないのである。
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話は突然変わるが、元も子もないといえば、中村アン(27)が犬を飼っているのは、ただ写真を撮るためだけに、なのだそうだ。テレビでシレッと喋ってしまっていた。骨の髄まで即物的な女である。きっとシッコの音はデカいと思うのである。
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シャトレーゼのWeb会員約21万人分の個人情報が流出した可能性があるらしい。このあいだハッカーにデータを抜かれた不倫サイト、アシュレイマディソンから流出してしまうのとシャトレーゼからとでは、どっちが恥ずかしいだろう?
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それはやっぱりアシュレイマディソンである。不倫云々より、流出したデータには御法川法男(みのりかわのりお)=みのもんた(70)の名前もあったのである。もんただよ、もんた。もんたと同類扱いされては……、どうですか、これ、ほんとにまあ、おくさん。ええ?
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なんのアンケートかは知らぬが「実際にいったら思ったより都会だった都道府県」第1位は北海道だそうである。しかし「札幌にいったらすごく栄えていてびっくりした」というコメントである。「栄えていた」といういいかたはどうにかならんか? なんだか発展途上国かインカの遺跡みたいではないか。 (了)





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