2015年8月19日水曜日

ミスチル桜井はわざと意味不明。オバマ大統領のSpotifyプレイリスト





今回はテレビの話はお休み。



ネットの記事によると、Mr.Childrenの桜井和寿(45)は、ミュージシャンは政治的な発言をすべきではないと考えているらしい。その理由として紹介されていたのが2007年の「ROCKIN'ON JAPAN」のインタビューからの抜粋である。



「ミュージシャンがライブ会場などでメッセージを発信することもあるが、彼らが信頼されてるのは音楽があってこそ。なのに自分自身が信頼されていると勘違いし、言葉を発信するのは謙虚ではない」(by桜井和寿)



不思議である。言葉にまったく論理性がないのである。「音楽があってこそ」信頼されているのは「彼ら」ミュージシャンである、と桜井和寿はいっているのである。そこでは彼ら自身が信頼されているのである。



しかもいうまでもなく、その音楽をつくっているのはミュージシャンである。しかしなぜか「なのに自分自身が信頼されていると勘違いし」になってしまうのである。不思議である。


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音楽を媒体にして発信してきた人間が、いまさら言葉を重ねて発信するのは音楽に対して誠実ではない、というならわかるのである。ところが「 なのに自分自身が信頼されていると勘違いし、言葉を発信するのは謙虚ではない」なのである。どうもよくわからない。



あるいは、人気取りのための政治的な発言はすべきではない、ならわかるのである。しかし桜井和寿がいっているのはそれとは逆に、すでに(音楽に)信頼を得ている=人気を得ているミュージシャンが、その信頼を(自分自身へのものだと勘違いして)楯にし、発言するのはいかがなものか、のニュアンスなのである。



あるいは桜井和寿は、ミュージシャンのように社会的影響力が大きな人間は、安易に政治的な発言をすべきではない、といいたいのかもしれない。それならそれでわかるのである。発言の前半で「メッセージを発信する」という社会を意識した言葉もつかっているのである。



しかしこの発言の締めくくりで桜井和寿はそうはいわず「 なのに自分自身が信頼されていると勘違いし、言葉を発信するのは謙虚ではない」と語っているのである。つまり社会性の問題についてはとりあわず、なんとなく曖昧に「音楽」と「ミュージシャン」の関係のような話にすり替るのである。(←A)


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なぜこうなるのかといえば、考えられることは4つある。ひとつは「 ミュージシャンのように社会的影響力が大きな人間は、安易に政治的な発言をすべきではない」とストレートにいってしまうと、当然ながら異論が巻き起こるのでそれは避けたいと考えた、かもしれないということ。



ふたつめは桜井和寿自身と桜井和寿がつくる音楽とのあいだには、実は遥かな隔たりがあるのかもしれない、ということである。平たくいえば「心にもないことを歌って、あるいはちらつかせて得た信頼をかさになにごとかを喋るのは謙虚ではない」である。



3つめは桜井和寿という人の保守性である。改めてざっくり歌詞を読んでみたところ、問題意識をちらつかせはするものの、結局は現状を追認するだけで終わる曲が圧倒的に多いのである。いろいろイヤなことや辛いこと、理不尽なことがあるよね、でも変化すべきは社会ではなく自分のほう、というところに落ち着くのである。前出(A)の部分もこの態である。



最後の4つめは、保守性に絡むのだが、Mr.Childrenが売れだしたころ、リベラル派の筑紫哲也なんかに持ち上げられたことが尾を引いているのかもしれないのである。いまさらはっきりと体制に恭順な顔を見せて人気に翳りが出ては困るのである。それにいちおうロックだし。


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私としては4つ全部があたっているような気がするのである。まあ自惚れているのである。そしてこれらの根本にあるのは小心、臆病であると思う。この「ROCKIN'ON JAPAN」のインタビューでも、とっさに右顧左眄した結果、非論理的な発言に自分を追い込んでしまっているのである。



いや、ここはもっとうがった見方もできるのである。桜井和寿の歌詞にも散見されるのだが、結局わけのわからないことをいっておけば大禍なくやりすごせる、という処世術の感じさえするのである。いきなりこれだけ見事な非論理的発言をするのはかえって難しいものである。



桜井和寿、なんだか日本の政治家みたいである。でもってこの小心さが人気のほんとうの理由かもしれない、とも思うのである。そして世間の空気はますます窮屈になっていくのである。語らないことの責任、というものもあるのである。



話は変わる。定額制音楽配信サービス「Spotify」でのオバマ大統領の夏休みプレイリストが公開されている。ホワイトハウスは最近「Spotify」に公式アカウントを開設しており、それを記念しての第一弾企画だそうだ。実際にオバマ大統領自身が選んだのかは定かではないが、アメリカの大統領はこんな感じなのかと見ていくと、けっこう面白い。紹介しておこう。リストは「Day」と「Night」の2つある。各20曲である。




「Day」トラックリスト

Ain’t Too Proud to Beg – The Temptations

Live It Up – Isley Brothers

Memories Live – Talib Kweli & Hi Tek

Tombstone Blues – Bob Dylan

So Much Trouble in the World – Bob Marley

Paradise – Coldplay

Tengo Un Trato (Remix) – Mala Rodriguez

Wang Dang Doodle – Howlin Wolf

Another Star – Stevie Wonder

Hot Fun in the Summertime – Sly & the Family Stone

Boozophilia – Low Cut Connie

Wherever Is Your Heart – Brandi Carlile

Good Day – Nappy Roots

Green Light – John Legend

Gimme Shelter – Rolling Stones

Rock Steady – Aretha Franklin

Down Down the Deep River – Okkervil River

Pusher Love Girl – Justin Timberlake

Shake It Out – Florence + The Machine

La Salsa La Traigo Yo – Sonora Carruseles



「Night」トラックリスト

My Favorite Things – John Coltrane

Superpower (feat. Frank Ocean) – Beyoncé

Moondance – Van Morrison

Is Your Love Big Enough? – Lianne La Havas

How Can You Mend a Broken Heart – Al Green

Red & White & Blue & Gold – Aoife O’Donovan

Nothing Even Matters – Lauryn Hill

The Best Is Yet to Come – Frank Sinatra

You Don’t Know Me – Ray Charles

I Found My Everything – Mary J Blige

Help Me – Joni Mitchell

I’ve Got Dreams to Remember – Otis Redding

Suzanne – Leonard Cohen

Feeling Good – Nina Simone

Stubborn Love – The Lumineers

Until – Cassandra Wilson

UMI Says – Mos Def

The Very Thought of You – Billie Holiday

Flamenco Sketches – Miles Davis

Woo – Erykah Badu



やはり黒人ミュージシャンの作品が多い。これはオバマ大統領が黒人であるからというわけではなくて、黒人にすぐれたミュージシャンが多いというだけのことかもしれない。



実際、大衆音楽の分野で黒人が果たした貢献は計り知れないほど大きいのである。ジャズ、ソウル、ブルースはほとんどすべての大衆音楽に影響を与え、アメリカを代表する文化のひとつである。



そう考えてくると、このリストは、いつ果てるともしれない黒人差別に対し、アメリカは黒人からこんなにも多くの恩恵を受けているのだ、と訴えているようにも見えるのである。



「Day」トラックリストの15曲目、Rolling Stones の「 Gimme Shelter」にしても、黒人女性歌手Merry Clayton(67)のシャウトが素晴らしく印象的な曲だ。ライブではLisa Fischer(56)が起用されることが多い。



しかしそういえば、Rolling Stones のコンサートツアーを追ったドキュメント映画「 Gimme Shelter」(1970)では、コンサート会場で黒人青年がヘルスエンジェルスに刺し殺されるという事件が報告されているのであった。世にいう「オルタモントの悲劇」である。



大統領、なかなかよいリストをありがとう。次があったら、BABYMETALの「IDZ」も、ぜひ。 (了)




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