「バカまじめ」といえば、日本郵便「ゆうパック」のテレビCMである。キャラクタターはご存じ松本人志(51)である。バカまじめな郵便局員の松本人志が「ゆうパック」を携えつつ登場したり走ったり再会したりして、ヒロイン役の木村多江(44)と絡んでいくシリーズものである。
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残念ながらこのCMは失敗である。おそらく日本郵便はこのCMで、「ゆうパック」は確実に、誠実に、ていねいに配達します、というようなことをいいたいのであろう。コンセプトは信頼感、安定感である。お預かりした荷物は間違いなくお届けします、である。まずはそれがはっきり伝わってこないのである。
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お預かりした荷物を間違いなくお届けするというなら、それを可能にする理由、システムがあるはずである。それを見せてくれればいちばん手っ取り早く、こちらも納得がいくのである。しかしそれがまったく顔ものぞかせず、ただバカまじめ男が走っていてもピンとこないのである。あるいは労働組合への配慮が働いたのかもしれないが。
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キャスティングにもアタマをひねってしまうのである。バカまじめ男と地味ヒロインの、だから歯がゆくなるようなロマンスのゆくえで興味をつなごうとしているわけだが、ダウンタウンの松ちゃんとリングの貞子である。ロマンス方面ではいっこうに興味がわかない2人なのである。
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ときめきや緊張を生みだす、中年なら中年なりの純粋さ、ひたむきさも感じられないのである。なんだかこの2人だと「ゆうパック」配達中にラブホテルにしけこんでも、あんまり違和感がない感じがするのである。
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2人にそういうエロいイメージがあるというのではなく、こうした設定だとそう感じてしまうということである。松ちゃんと貞子がCMドラマで結ばれようと結ばれまいと、ふうん、なのである。
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しかも、松ちゃんの顔が強烈に汚いのである。配達にきてもらうのもちょっと遠慮したくなるくらい汚いのである。それが汗を噴き出しながらやってくるのである。きっと画面いっぱいに顔ダニがうごめいているのである。
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玄関ドアを開けたとたんこれに迫られたら貞子としても髪振り乱し四つん這いで逃げるしかないのである。どうしてこんな画ヅラにしてしまったのか。なぜ少しくらい消毒もといデジタル処理しなかったのか。誰がなんといおうと、ご家庭の奥様たちにはイケメンである。清潔感である。
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ひとつこのCMの発想の下敷きにあるのはソフトバンクの白戸家シリーズだと思うのである。が、ただただおもしろさを追求しているおとうさん犬にくらべて、バカまじめ男はまったくつまらないのである。でもって貯金箱とかクリアファイルだとかキャラクターグッズだけは例によっていろいろ取り揃えられているのである。
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最大の問題は「バカまじめ」というこの言葉である。ダウンタウンの松ちゃんは関西人であるから、「バカ」はなじまないのである。いつもの松ちゃんとは違う、なにか別人の感じがしてしまうのである。いつもの松ちゃんでなければ、やっぱりただ顔の汚い脂性のオッサンである。
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そこで「バカ」でなければなんだろうと考えるのだが、関西人ではない私には思い浮かばないのである。「バカ」に相当するのは「アホ」だといわれるが「アホまじめ」はピンとこない。意味からいくと「エライまじめ」か? 「ギガまじめ」「テラまじめ」「ケタハズレまじめ」か? 「クソ」は汚い。
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と考えてきて、やっぱりバカまじめ→松本人志で物流の信頼感、安心感訴求はそもそも無理なのだと諦めてしまったのである。
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そしてこれをおもしろくわかりやすくするには、松本人志と木村多江の役柄を入れ替えるべきなのだと気がついてしまったのである。松本人志は「ゆうパック(と木村多江)」をデオドラントなんかしながら待つ汚い脂性のオッサンの役である。いまからでも遅くない。どや? (了)





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