毎日8時間もテレビの前に釘付けになっていた私は、いま思えばまるで文明を知らずに生きてきた少数民族の子どものようなものだったのである。魂を吸い取られてしまったのである。
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それはおそらくソニーがCMに使いたくなるような感動的な光景だったに違いないのである。想像しただけであまりのいたいけのなさに涙が出るのである。いや、ほんとうはそれほどは可愛くなかったのである。後ろ姿だけならなんとか、のレベルである。
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どんな番組を見ていたのかといえば、朝のワイドショー、昼のワイドショー、午後のワイドショー、夕方のワイドショー、再放送ドラマ、ニュースである。相撲中継もときどき見ていた。夜は適当にドラマ、歌番組、映画、プロレスなどである。
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ワイドショーをずいぶん見ているのである。というかワイドショーばかりである。私のテレビ体験の特異なところだろう。夕方を過ぎて家族が揃えば自分の好きな番組ばかりは見られない。チャンネル権を確実に手にできる貴重な時間が、学校が休業期間の昼間である。
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そこでワイドショーを繰り返し選んで見ているのである。小学校から高校卒業まで、いやそれから先も、一貫してワイドショーなのである。我ながら奇妙である。ワイドショー全盛の時代ではあったが、繰り返し同じニュース、似た話題を見ているのである。
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結局、私はその番組の内容を見ていたのではなく、そこに映っている人を見ていたのである。人を観察するには生放送のワイドショーがちょうどよかったのである。相撲中継にしても同じで、制限時間いっぱいまでの仕切りが続いても退屈したことなどない。顔の表情やしぐさの変化にひきつけられるのである。裸の尻の変化にも。
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そうかあ、こうして改めて思い返してみると、私は単にテレビ好きというだけでなく、ワイドショー好きなのである。子どものころからババ臭かったのである。いまでも朝からワイドショーを見ている。私の立場は、テレビ党地上派ワイドショーグループである。テレビはタダでダラダラがイチバンである。
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そういうことであるので、子ども時代に見ていたワイドショーでどんな企画が放送されていたかすら、恥ずかしながらよく憶えていないのである。憶えているのは日本テレビ「お昼のワイドショー」の「怪奇特集・あなたの知らない世界」と、同じく「ルックルックこんにちは」の「ドキュメント女ののど自慢」くらいのものである。
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しかし司会者は憶えている。とくにテレビ朝日の「アフタヌーショー」は、好みの司会者の宝庫であった。「泣きの-or-怒りの小金治」(桂小金治、享年88)、「そうなんですよ川崎さん」の川崎敬三(82)、買春疑惑を報じられて司会者就任後わずか3ヵ月で姿を消した山田吾一(享年79)などである。
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同時代的に見ていたのかといわれると少々不安もある。しかしともかく、記憶の中の彼らは、いずれも顔面を凝視するに足る強者、くせ者であった。実際、私の「全顔思想」は彼らによって育まれたようなものなのである。彼らこそ「人は顔、顔は人」をテーゼとする全顔思想革命の父なのである。
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しかしまた同時に一方で、あれだけ見続けた番組の内容をほとんど憶えておらず、毎度繰り返し顔を出す司会者だけをかろうじて憶えているというこの私は、実はただのバカではないのか? という底知れぬ不安も確かにあるのである。
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話は突然変わるが、春香クリスティーン(23)がはじめての相手と交際約5ヵ月で破局していたそうである。春香クリスティーンといえば、その直前までは前代未聞の処女アピールを激しくしていた女である。申し訳ないが、世間の興味はその一点にしかないのである。勝手にいい出したのは自分なんだだからなー。
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春香クリスティーンは政治オタクである。目的は政治閥入り、つまり政治家の息子との結婚である。しかし狙っていた鳩山太郎(41)は諸般の事情からあまりに危険であることが判明し、また小泉進次郎(35)はもたもたしているあいだに元秘書にやられてしまったのである。自暴自棄になっての構成作家なんかとの交際だったのである。
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しかし春香クリスティーンは、実際にはLiLiCo(44)と同様、ヨーロッパから送り込まれたエージェントなのである。一朝有事の際には諜報活動や破壊工作に邁進すべく、スリーパーとして日本永住を企んでいるのである。政治閥狙いはそのための戦略なのである。春香クリスティーンの本当のライバルは東條英機(享年64)なのである。 (了)





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