2015年8月2日日曜日

理系のみなさん、彼女に嘘をつかれたらどうします? テレビ論少し





テレビは残酷である。誰彼なくそこに映る者の外面、つくろいを否応なくはぎ取るのである。笑顔の理由を晒し、嘘と真実の、本人にとってさえ微妙な境までもあらわにする。この残酷さがテレビの面白さである。



そうしてやがて生まれた、信条も理想も夢もすべてお笑いぐさの、元も子もない即物的な世界。そういう場所に私たちは生きているのである。そうするとやがてどうなっていったかというと、まるで昆虫のように、自分の触覚が届くとても狭い範囲でしかものごとを捉えられなくなったのである。



小説なんかはつくりごとだから一切興味がない、読まない、という学生が少なくない。いや、ほんとうの話である。もちろん多くは理系の学生である。困ったものである。恋人はいつも真実しか話さないとでも思っているのだろうか? そのときがきたらショックはさぞ大きかろうのう。



むかしからこういう若者がいることはいたのである。融通が利かぬ石部金吉。懐かしい。とにかく一生懸命、脇目も振らず勉強をする。それでも、小説はつくりごとだから読まないなんてことを、さも小賢しげに口にするなんてことはなかったのである。


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それでこれは実話であるが、ある男が建築の勉強をして有名シンクタンクに就職をしたのである。めでたい。しかし就職したとたん、何があったかは知らないが、「現代用語の基礎知識」で流行語だとか風俗語だとかをこれまた一生懸命勉強しはじめたのである。



しかもその、勉強しはじめた、ということでさらにもう一段、同期からバカにされたのである。まじめないいやつだし優秀だが、生きていく臭覚みたいなものがまったく備わっていないのである。KYってやつか? いやいやもっと根本的にである。



で、こういう人間は、同期にバカにされるだけならまだしも、人生のどこかで必ず大きくつまづいてしまうのである。女とか金とか酒とか。そいつの場合は結婚、離婚をして、一時、公園暮らしにまでなった。そのときのハンドルネームは「家なき子」であった。



真面目な男が理系をめざし、そして理系が偉そうにしているのは、それが金になると思われているからである。そういえば某メーカーの下っ端技術者に、そのまんま「日本を支えているのは我々だ。きみたちはそんな我々に奉仕をする立場の人間だ」といわれたことがあった。面と向かってである。親の顔が見たいものである。


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ともかく、なにがなんでも、医者か弁護士をめざすのでない限り、技術者をめざすのが妥当であるとされているのである。林真理子みたいに。意味が違うか。そして元も子もない即物的な風潮があり、図に乗った企業の都合もからんできて、大学から文系学部を減らし理系学部を充実させろ、という話になっているのである。バカである。みんなロボットをつくりたいのか、ロボットになりたいのか。



それでもってさっきの「家なき子」みたいに挫折する人間が増えてくると、また文部科学省が出てきて、社会で力を発揮できる逞しい人間づくりとかなんとかいうわけである。スポーツなんかやらせるわけである。



そもそもである。大学教育に国や企業がずけずけと口を挟んでくること自体がおかしいのである。学問は独立していなければならない。それが金儲けの役に立つとか立たないとかなどはまったく関係がない。なにかを知ることに役立てばそれでいいのである。



いまある国や企業のために学問をするのではないのである。いつのまにか産官学協同などとしたり顔をする前に、国や企業の存在根拠自体が長期的に見ればどれほどあやふやなものか、よくよく歴史を振り返って考えてみればいいのである。ああ、これは文系の学問であったのう。失礼した。


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まあ、国や企業はそのときどきの利に聡く、風見鶏のごとく右往左往しながらやっていけばいいのである。武力戦争よりも経済戦争で結着すればそれに越したことはない。人を殺すよりは札束で顔をひっぱたくほうがよっぽど上品かつ穏便、優雅である。それは必要なことである。



しかし、この元も子もない即物的な世界観は、人類の精神の危機なのである。それがどういう内容のものであれ、神を失った文明は滅びる。文系の学問をないがしろにするなど、近視眼的もいいところである。テレビを見すぎるとほんとうの近眼になるが。



それでは、これからテレビはどうしたらよいのだろうか? テレビにできることはないのだろうか? それはきっと、これまでテレビが映してこなかったものを映すことだろうと思うのである。残酷テレビでひとつ、お願いしたいものである。ああ、そのまえに、テレビに何ができるか、という思い上がった考えを捨てることも大切である。



話はまったく変わるが、缶飲料「KAGOMEつぶより野菜」のバナーがチカチカする!! こんなに痙攣的にチカチカするのはアダルトでもお目にかかったことがないくらいである。テレビならとっくにピカチュウ昇天である。「KAGOMEつぶより野菜」は健康飲料のはずである。なのに、ネット広告はなぜか激しく殺気立っているのである。




おお、こんどはBMWもビカビカである。たいへんである。目立てばいいってものでもないわけだが……、AdSenseである。Google、何を考えておる? たぶん文系的素養がゴッソリ欠落してるんだろうな。まずは最近よく勉強したはずの平成ノブシコブシにでも教えてもらえ。



おお、同じ場所で掲示されながら、アウディはチカチカビカビカしないのである。アウディ好印象である。それだけである。すまね。



数あるイスラムの過激派グループ、シリア政府もだけれど、武器を持って局地戦を闘い続けていると、なんだか徐々にやることが子どもっぽくなっているような気がするのである。もちろん、もうとっくに世界中から愛想を尽かされているのである。子どもっぽいからといって可愛いとは決して限らないのである。



「おまえ誰だよ?」「……だからおまえ、おまえ誰だっていってんだよ!!」「なにいってんだバカ野郎!!」。このあいだ、飲み屋でどこかのオヤジが電話をかけて放ったセリフである。こちらから電話をしているのである。高飛車にもほどがあるのである。  (了)




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