私はほんとうはバカなのではないか? という話の続きである。1日8時間もテレビを見続けてきた私は、テレビを見すぎるとほんとうにバカになるのか? を切実に知りたいわけである。
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これについてはすでに、ニンテンドーDSの一連の「脳トレ」ソフトの監修者としても有名な東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授(56)のグループの研究があるのである。視聴時間の長い子どものほうが脳の成長が遅い傾向があるのだそうである。
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しかし「脳の成長が遅い傾向」とはいっても、それがどの程度のものかわからないのである。私としては、バカ疑惑から帰還する望みをまだ捨ててはいないのである。というか、自覚もないのに、たったひとつの研究結果だけで自分にバカの烙印を押す人間などいるはずがないではないか。
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というわけで、さらにネット上を検索すると、バカになるらしい、という推測や仮説程度の話はゾロゾロと出てくる。いわく「考えるスペースが狭くなる」「受動的な脳になる」。
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いかにももっともらしいお言葉ではあるが、根拠が記されていないので、そのまま鵜呑みにはできない。しかし、おぞましくありつつも、長時間テレビを見た直後など、経験的にはしっくりする表現ではある。
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少し極端かもしれないが、私の場合は、ときどき左目の上のあたりにもやっとした霞のようなものの圧迫を感じることがあるのである。その部分が働いていないような気がするのである。ただ気がするだけなのだが。
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しかしそうこうするうち、私はついに朗報を見つけたのである。1日3時間以上テレビを見ている子どものほうが、1日1時間以下しか見ていない子どもに比べて、約3カ月分ほど知能が発達していた、という研究結果が学術誌「the journal Sociology」に発表されていたのである。
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発表したのは、ロンドン大学教育研究所のAlice Sullivan博士で、1万1000人の子どもの誕生から7歳までを追った調査結果などを分析したのだという。発表されたのは2013年で川島隆太教授グループの発表と同じ年である。テレビ視聴と脳の関係は、やはり熱いテーマなのである。
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では、どうして川島隆太教授グループとAlice Sullivan博士の研究の結果が、一見、相反しているように見えるのか、といえば理由は単純なように思える。Alice Sullivan博士の研究対象は「誕生から7歳」なのに対し、川島隆太教授グループの研究対象は「5歳〜18歳」なのである。
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つまり、2つの研究結果は、「子どもが(約3カ月分の知能の発達が測れるくらい)十分に幼いうちは、テレビ視聴は子どもの知能の発達に貢献するが、それ以降は脳の成長に、逆にマイナスの影響を与える」というふうに、都合よくスムーズにつながってしまうのである。
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世間によくいる、小さなときは口も達者で利発な子どもだと評判だったのに、小学校高学年くらいからだんだん怪しくなってきて、高校を卒業するときには完全に人並み以下、というパターンである。
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せっかくグッジョブ&グッニューだと思ったのに、サリバン先生、いささか残念でございます。私の場合も、アタマの中身については、小学校低学年以来、一貫して坂道を転げ落ちている実感があるのである。それまでは自分を天才だと思い込んでいたのである。これもまたバカの証しといわれればそれまでなのだが。
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話は変わるが、このところ芸人、たとえば松本人志(51)やカンニングの竹山隆範(44)なんかが時事的な話題にコメントするタイプの番組が増えている。いわゆる情報番組である。高校生デモについて「ちょっとニュースに誘導されている感じはある」とかいっているのである。
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しかしこのコメント、家庭でテレビを見ながら発泡酒でも飲んでいるオヤジが、家族に無視されつつひとりブツブツ語っているレベルである。何の役にも立たない。
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テレビのなかの人がテレビのニュースの感想を述べているのである。合わせ鏡を見ているようでくらくらするのである。むかし、テレビカメラでオンエア中のモニターを映してその図柄が無限に奥へ重なっていく態のイタズラがよくあった。あんな感じである。ここに考えの深まりは絶対にないのである。
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にしても、テレビ局側も、自局も含めたマスコミ、マスメディア批判をシレッとやらせるものである。こういう番組を見ていると確実にアタマは悪くなるだろうなあ、とようやく最近になって気づいたのである。
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パソコンやスマホから離れる時間をもつことを「ITデトックス」というのだそうである。「デトックス (detox) 」とは、detoxification=解毒の短縮形である。体内に溜まった毒物を排出させることである。 ほんとうに毒物が排出されてバカが少しは治まるなら「TVデトックス」やってみようかなあ。 (了)





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