もう８年ほど前の話である。２ヵ月で100kgから80kgへ、ちょうど20kgダイエットしたのである。鈴木亮平（32）の２ヵ月30kgにはかなわないが、１ヵ月10kg、４週間計算だと１週2.5kgである。われながらなかなかのものである。
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しかしまあ、元の体重が100kgもあったのだし、この程度のことは、きっと誰にでもできるような気がするのである。そこで、恥ずかしながら体験談をご報告しておくのである。
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当時もいまも私の身長は175cmである。体重が100kgだと、ベルトの上に腹が乗り、靴や靴下を履くのに苦労し、首がよく回らないのである。スリーサイズは上から110cm、112cm、110cmであった。
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前屈みになるのが苦しくてイヤで、喉が渇いても自販機は使わず、わざわざコンビニのカウンターで買っていたのである。便器が壊れたことも１度あった。100kgの負荷で割れるなんて、ちゃちな便器である。
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健康上の問題はとくに感じていなかったのだが、ときどき喉の奥、というかアデノイドのあたりの肉がブルブル震えて息が詰まりそうになったのである。アデノイドは子ども時代に切除しているのに。
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なぜこんなていたらくに陥ってしまったかというと、大量に食べて飲んで寝ていたからである。ひどく燃費の悪い男といわれていたのである。どうして大量に食べて飲んで寝る羽目になったか、とかいうことは、この際、関係がないのである。
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精神の問題、気持ちの問題はひとまず置いておいて、物質と代謝のことだけを考えるのである。ダイエットをするうえで、ここはものすごく重要なポイントなのである。人間のカラダは機械と同じ、とはっきり割り切るのである。
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で、大量に食べて飲んで寝ているうち、徐々に体重は増えていったのである。太りはじめる前の76kgから１年ほどで100kgになったのである。前々から100kgになったらダイエットしようと決めていたので、いよいよ戦闘開始である。
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どういう方法をとったかといえば、 大量に食べて飲んで寝ているうちに太ったのであるから、「食べない・飲まない・眠らない」でいこうと思ったのである。バカである。「食べない・飲まない・眠らない」というとなんとなく覚醒剤中毒者みたいで、覚醒剤中毒者にデブはいないし、などと息巻いていたのである。
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「食べない・飲まない」についてはある程度の我慢ができるのである。しかし「眠らない」はどうにもならないのである。3日目に入ると、意思とは関係なく眠りに“落ちる”のである。いや、まったくふつうの話である。バカである。
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そんなようなことである程度、常識的なルールをつくることにしたのである。とはいえダイエット本なんかは大嫌いなのである。とくにダイエット成功者が監修している体のものは、自慢たらたら上から目線な感じがたまらないのである。ジムに通って命令されるのもイヤなのである。あ、そうか。こちらがヘソ曲りなだけか。
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とにかくそのときは「１日１食（内容に制限なし）、飲料は水、睡眠は自由」と決めたのである。ほかには少しは散歩をするようにしよう程度のことで、ルールは本当にこれだけである。２ヵ月30kg減の鈴木亮平のダイエット方法も同じようなもので「極力食べないようにする」のだそうである。これしかないのである。
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で、１日１食で、その１食にはなにをどれだけ食べてもいいのである。空腹なのでさぞかし大量に食べると思いがちである。しかし、そんなに食べられないのである。むしろダイエットに取りかかる前の１食分よりも少なめで満腹になってしまうのである。酒を飲めばすぐ酔っぱらうし。
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聞いた話だが、１日１食でも自由に食べられるとなると、ストレスがたまらないらしいのである。そんなことをいったって、空腹それ自体がそうとうなストレスだと思うのだが。
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私の場合、貴重な１食はやはり夜に設定したのである。朝や昼に食べてしまい、それから急に夜の予定が入るなどということがなきにしもあらずだからである。これを朝か昼に設定できれば、ダイエットのスピードはもう少し上がっていたかもしれないのである。
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夜に設定していると、日が変わって次の夜まではなにも口にしないことになるのである。あたりまえである。したがって日中はかなりひもじいのである。とくに昼前後から２時過ぎくらいまでの時間帯がいちばんきついのである。
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その時間帯をどうやってやり過ごしたかというと、私の場合はわざとデパ地下の食品売り場を巡回したり、いい匂いのする食べもの屋の前をウロウロしたりしていたのである。自分では精神力を試すのだ、などとリキんでいたのだが、いま振り返ってみると、なんのことはない自虐バカである。あまりの空腹にアタマがおかしくなりかけていたのかもしれない、と思ったりもするのである。
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しかし、その時点でそう考えてしまってはたぶん失敗するのである。ここで、人間のカラダは機械と同じ、とはっきり割り切るのである。そして、いきなり話は飛躍するが、世界中の痩せている人たちのことを考えるのである。太りたくても太れない人たちはたくさんいるのである。腹が減ったとかなんとか、なにをなまぬるいことをいっておるのか、である。
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そうすると、テレビカメラに向かってなにかを食べては、どーだこーだいっている人たちがとてもグロテスクに見えてくるのである。あと、あそこのなにがうまいかにがまずいとかいいつのるオヤジたちや、食べものの名前とブランドの名前ばっかり出てくるお嬢ちゃんたちに、無性に腹が立つのである。
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空腹のあまりカリカリしていたせいなのかもしれない。まあ、ささやかだが、いい経験だったのである。あれ以来、あまり人前でものを食べなくなったのである。酒は飲むが。
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で、ダイエットをはじめて２週間が過ぎたあたりから、メキメキと体重が落ちていったのである。夏のデブが秋にはふつうに近づいていたのである。いつもと違う今日のボク、みたいな感じである。ダイエットに成功した女が急にいい女ぶる気持ちがわかったりするのである。
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しかしその一方で、恐ろしいことが起こったのである。髪の毛が抜けはじめたのである。ダイエット中はそれほどでもないのである。ダイエット終了後、半年ほどかけてじっくり、しかしすっかり薄くなってしまったのである。
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私の父は晩年白髪であり、おふくろがハゲだったのである。それがあろうことか、私の頭で合体したのである。薄くなって以来ずっと丸刈りにしていて、これはこれで面倒くさくなくていいかな、と思っているのである。負け惜しみである。
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おそらく鈴木亮平も２ヵ月で30kgもの減量をすれば、間違いなく毛髪にダメージがいっているはずである。そこのところどうしているのか? もしかするとヅラをかぶっているのではないか、と疑っているのである。
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であるから、この方法は誰にでも勧められるというものではないのである。ただ、なにはともあれ、多少リスキーであっても急いで痩せることを最優先にするのであれば、有効な方法なのである。というか、これしかないのである。
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私の身長は175cmである。体重100kg時のBMIは32.7である。BMI 25.0以上が肥満であるなどといちいち指摘されなくても、見た目からはっきりデブだったのである。
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いまの体重も、ダイエット完了時と変わらず80kg前後をウロウロしているのである。おお、そうするとBMIは26.1になってしまうではないか。これじゃあ、私はまだデブだということではないか。なんてこったい。
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しかも、身長175cmの標準体重は67.4kgであるが、標準体重というものは外見上は少し太め、という感じなのらしい。おお、むかし20kgダイエットしたことがある、と調子こいて威張っている場合ではなかったのである。少なくともあと15kgは痩せなければならぬという話である。おお、しかし、その決心がつくまで、しばし猶予をいただきたいのである。（終）
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