寝たきりになってから4人の子どもをつくった男がいる、という話を聞いたことがある。不屈の闘志である。チンチンが寝たきりになっている、という話は、むかしいやになるほど聞かされた。冒頭から下品ですまぬ。68歳のロニーウッドに子どもができたというニュース(「日刊スポーツ」12月7日配信)を見て、ついいろいろ考えてしまったのである。
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そのニュースによると、ロック界には高齢で子どもを授かった男がほかにもけっこういるようで、ミックジャガー(72)は56歳、ポールマッカートニー(73)は61歳、66歳のビリージョエルは今年、それぞれ父親になっている。
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ちなみにロニーウッドとは、ローリングストーンズのギタリストのロンウッド(Ronald "Ron" David Wood)のことである。ロニーウッド名義でも活動しているらしいのである。でもって、今回、子どもができたのは、そのロニーのほうらしいのである。双子らしいから、呼び名にロニーとロンをわけられて好都合である。男の子であることを祈る。
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一方、ロンウッドのほうは、2009年に前妻と離婚したとき、慰謝料に約10億円支払っているはずである。チャリティのために、いろいろオークションにもかけられたし。それでも、ストーンズのメンバーならこんな豪勢なひとり二役ができるのである。
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そういえば、また話は脇にそれるが、マックのキャラクターの名前は、本来はロナルドマクドナルド(Ronald McDonald)である。ロンマック。それを日本人が発音しやすいようにと、日本だけドナルド(Donald McDonald)にしたのだという。親切である。いまやもうむかしむかしのお話である。
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いつかも書いたように、芸能界全体を見回せば日本男子もそうとうである。子づくり記録、最高齢は、歌舞伎俳優の中村富十郎(享年81)の74歳だそうである。やっぱり梨園か、と深くうなずくのである。
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上原謙(享年82)は71歳、市村正親(66)は63歳であった。もう少し年齢を下げると、59歳の中村梅雀は今年、第2子が生まれている。イクメンで有名になった東儀秀樹(56)は48のときである。
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ちなみに2013年の人口動態調査によると、第1子誕生時の平均年齢は、母親30.4歳、父親32.5歳である。まだこのデータには高齢子づくりオヤジ増加の影響は出ていないようである。あたりまえである。去年は100万1000人の子どもが誕生しているのである。データにはっきり反映させるまでには、あと10万人はあとに続かねばならないのである。
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しかしこれからの世の中、貧富の差の拡大やら健康年齢の伸び、若年男子の草食化やらで、ますます高齢オヤジの子づくりは増える一方だと思われるのである。いやらしい話になるが、高齢での子づくりは、まずは金である。壮年時代と同程度の収入が保証されていればいいが、なければ、最低その年収20年分程度の貯蓄は必要になる。軽く一億に手が届く。
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そういえば知り合いで、嫁さんの両親の前でうっかり“車を買うか子どもをもう1人つくるか迷っている”と口にしたヤツがいた。即刻その場から叩き出されたそうだ。車と子どもを一緒くたにして較べるとはなにごとか、なのである。それは正しいのである。しかしそのあいだに金が割って入れば、較べてみるのも正しいのである。
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高齢オヤジの子づくりは確実に増えていく。そうなるといろいろなところに影響が出てくるのである。趣味嗜好の渋い子どもが増えるとか、その子どもの運動会に高齢父のためのコーナーができるとか、子育て中の未亡人が増えるとか。それにしても、未亡人という無礼きわまる言葉がいまだに生き残っているのはどうしたことだろう? やっぱりアレか? AVか?
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それだけではない。高齢オヤジの子づくりは母親の負担がたいへん大きくなる。オヤジの体力には限界があるから育児に協力するのにもおのずと限度が出てくる。病気になりがちである。さらにこれ、ある日ぱったり倒れて要介護にでもなったら、それこそ家の中に赤ちゃんが2人いる、みたいなことにもなりかねないのである。
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では、とりあえずは男は何歳まで可能か? である。これに関するデータはほとんどない。ED治療クリニックのホームページなどに使われているデータは、ほとんどが1998年に実施された疫学調査(東邦大名誉教授白井將文による)によっている。
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それから大雑把に推計すると、完全EDと、ときどきアウトな中程度EDを合計した年代別の割合は、40代で15〜20%、50代で25〜40%、60代で40〜60%、70代で60〜65%である。このほか、たまにアウトな軽度EDというのもあるが計算には入れていない。
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驚くのは、70代でまだ35%〜40%がほぼOKであることである。これは、恐ろしいことに、60歳以上の男で性行為を望む者が42.1%〜60.4%もいるというデータ(60歳以上の老人クラブ員男性を対象に1973〜1985年調査)となんとなく符合するのである。
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だからこれは、勃っちゃうからしたくなる、ということではないのか? と思うのである。うーん、もう忘れてしまったがそんな感じがしないでもない。逃げるわけではない。欲望よりもチンチンが先。そう考えればそうともいえる、というのが実感である。
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しかし、たぶん男はこうして死ぬまで自分のチンチンに振り回されて生きるのである。介護士らしきオバサンが居酒屋で愚痴っていた言葉、「男はいくつになってもヤラシくて困る」が深く深く共感するのである。
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そればかりではない。最近はED治療もグングンすすんでいるのである。潜在患者数1000万人とかいわれて、金になる分野だからである。すぐに思い浮かぶのが経口薬である。バイアグラ、レビトラ、シアリスが3大銘柄らしい。
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なかで最も新しいシアリスの場合、効果の持続時間が24〜36時間だというからたいしたものである。服用前後の食事の影響も受けにくいらしい。ただし、顔が赤くなったりする副作用はバイアグラやレビトラと変わらないのだそうである。
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さらに経口薬だけではないのである。自分で直接チンチンに注射するICI(intracavernous injection)というものがあるのである。“cavernous”は海綿体のことである。詰め物をするのではなくて、薬である。薬は各クリニックで調合されたものを使うのである。
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注射はインシュリン注射と同じペン型のものらしいのである。それにしても自分で自分のチンチンを刺す、というのはどういうものだろう? きっと恐怖と緊張で縮こまっているはずだし。間違って亀頭に差してしまって、とんでもないアタマでっかちになっても困るし。
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それでICIは5分〜10分で効果が出るのだそうである。しかも効果実感率97%だそうである。持続時間は薬しだいということだろう。ところが困ったことに、ICIをすると、性的な刺激がなくても勃起してしまうらしいのである。先ほどの推論をあてはめると、男は勃つとしたくなるのである。これ、あんまり濫用してほしくないと願うのである。
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ちょっと腰を引いて歩いているオジサンにも注意しよう。ズボンの内側がとっても窮屈なことになっているかもしれないのである。それにしても高齢オヤジの子づくりなど、最下層のさらに下の犬のそのまた下くらいで生きている私のような人間には、まったく異世界のお話である。だんだん腹が立ってきたのである。They Breed,We Die.(了)


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