また割り込みです。予定では「私撰 2015年のすぎた女たち」の第4回目でしたが、今回はテレビドラマについて書かせていただきます。もう、テレビドラマと聞いただけで最高につまんなーい気分でいっぱいになってしまうのです。いったいなぜなんでしょう? ダメさ加減を楽しむのももうウンザリ!! そんなうっぷん晴らしです。
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なぜテレビドラマがつまらないかというと、それはスターシステムでつくられているからです。最初に主演俳優が決められ、それを補強するカタチで脇役がキャスティングされます。まあ、邦画でもハリウッドの大手でもだいたいはそうですけれども。
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補強する、というのは、たとえば福士蒼汰が主演に決まって、それじゃ対象が若い女性層に絞られすぎてキツいなーとなった場合、じゃ母親役に橋本マナミでも入れてみっか、的なことです。これでどういうドラマになるのかわかりませんが。
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で、主演俳優にあわせて脚本など制作が進行していきます。原作がコミックであれ小説であれ、つねに主演俳優のキャラクターやカラーが念頭に置かれてドラマ化されていきます。
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ですからスターシステムというのは、スターに圧倒的なパワーがあるときのものです。邦画の世界でも、ただ人気スターが出ているというだけで映画館が満員になる時代がありました。懐かしの日活青春映画とかですね。
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そんなようなことでつくられていますから、ドラマの視聴率はひとえに主演俳優の人気にかかっている、ということになっています。視聴率が上がれば“天皇”とまで呼ばれます。『相棒』の水谷豊や『半沢直樹』の堺雅人です。調子こいてます。
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反対に視聴率が上がらなければ、もうすべての責任は主演俳優にあり、で完全に負け犬扱いです。最近この負け犬がやたら多いのです。少し前まで数字(視聴率)をもっている、ともてはやされていた俳優でさえ、少しつまづけばそっこー、低迷、惨敗、爆死です。もう完全に戦犯扱い。
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たとえば最近で思いつくところでは、西島秀俊『無痛~診える眼~』(フジテレビ)、斎藤工『医師たちの恋愛事情』(フジテレビ)、向井理『遺産争族』(テレビ朝日)、福士蒼汰『恋仲』(フジテレビ)ですね。イケメン俳優たちも、全員イヌ。それにしてもフジが多いですね。
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女優陣のほうも、ざっくり剛力彩芽(23)「ビブリア古書堂の事件手帖」(フジテレビ)&「天使と悪魔~未解決事件匿名交渉課~」(テレビ朝日)、桐谷美玲『アンダーウエア』(フジテレビ)、篠原涼子『オトナ女子』(フジテレビ)、新垣結衣(27)『掟上今日子の備忘録』(日本テレビ)、とこんな感じです。まあ、叩かれ方でいえば、NHKの大河でこけるよりはまだマシですけど。
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で、あまりに主役が叩かれるものですからSMAPの低視聴率王、香取慎吾があえて脇役を取りにいく作戦で物議をかもしています。あたれば主役と一緒に評価アップ、あたらなければ知らぬ存ぜぬ、責任は主役に、と。まあ、みなさんいろいろと小狡い手を考えるものです。
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ではどのくらいの視聴率を稼げばよいのか、といえば「『20%とったら凄い!』『25%で凄い!』っていわれてて。いま25%なんかとったら、とんでもない騒ぎになりますから」(by明石家さんま『ヤングタウン土曜日』MBSラジオ11月28日放送)という感じです。
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とりあえず2ケタいってセーフ、ですね。そういえば、ただいま『下町ロケット』(TBS)が20%を超えた、とはしたなくもおおはしゃぎ中です。
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で、下のほうは、「低迷」で1ケタの上、「惨敗」で1ケタ中ごろ、「爆死」で1ケタの下、というところでしょうか。ですから、少し引いて見れば、たいへん狭い範囲に天国と地獄があります。
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しかしこれがたとえば『下町ロケット』のようにプライムタイムの番組だと、全国放送であれば1%あたりおよそ100万人の視聴者がいるという計算になっています(NHK発表では117万人)。なので、コンマ1にも一喜一憂です。
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しかし、ですよ。21世紀ももう15年が過ぎようとしているいま、出演者、俳優が見たくてテレビドラマを見る、という人がどれくらいいるかですよ。作品としてのデキとは関係なく。
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そもそもドラマが面白いか面白くないかのデキの基礎というか80%くらいは脚本で決まるのであって、俳優の仕事はその面白さをより完璧なもの、奥深いものにする。あるいはそのドラマの看板になる、ということです。
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脚本が面白くなければ俳優がいくら頑張ったって面白くなるわけがないのです。でもどうしても視聴率がほしいので、切羽詰まった局はでっち上げの交際報道なんかで話題づくりをしますね。あろうことか『掟上今日子の備忘録』では、 新垣結衣をシャワーに入れちゃいましたからね。サービスシーンのために。ガッキー可哀想。録画し忘れたし。
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で、スターシステムではダメだということはもうみんなわかっているわけです。でも止められないのです。なぜかというと、スポンサーとテレビ局を結ぶ代理店ですね、悪の根源は。やっぱし。
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テレビドラマで主役をやれば大手スポンサーのCMがとれます。というか代理店からいえば売り込める。そこでつながってまたドラマのスポンサーにも、という話になっていくわけです。ここでまた代理店は仕事ができる。だから主役はCM受けしやすい俳優が選ばれる傾向があります。
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俳優には、いちおう年代性別ごとの支持率が算出されていますから、これもスポンサー説得の材料になって便利です。オタクの商品のユーザーに支持率が高いこの俳優……、とかなんとか。でもってスポンサーとは関係のないところで関連グッズでひと稼ぎ、と。こういう思惑が絡んでドラマがつくられるのですね。
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元も子もないいい方をしてしまえば民放のテレビ番組はすべからく広告の器、容器でしかないので、代理店のやり方は非常に合理的といえば合理的です。
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そうとはいえ、どのドラマも視聴率が低迷していては、代理店も売り込むタマがなくなります。それじゃ、しかたないなーと抜擢されたのが『孤独のグルメ』(テレビ東京)の松重豊(52)だったりするのではないか、と思いますね。
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代理店のいいなりになっているスポンサーもスポンサーです。ですからテレビ局としては、もっと強力に、スポンサーに直接、自局の企画を売り込まなくてはダメなわけです。
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でもフジテレビなんかは、つい最近までスポンサー企業に足を運ぶことさえしていませんでした。フジの営業はみんなスポンサーの担当者の顔も知らないのですよ。代理店任せで。どこでなにをしていたのやら。
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沈んでいるのはなにもドラマだけではありません。テレビ全体が危機に瀕しています。「我々なんか、30%をとろうとしてた時代の人間やから。いまは13、14%だなんだって『やりました!』ってガッツポーズをとる時代やから」(by明石家さんま、同上)。
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で、そんななかでドラマはいま何をしなければならないかといえば、やっぱりきちんとした物語、脚本をつくることだと思いますけどねー。それも原作に頼るのではなく、オリジナルで。なかなかお話を転がせる人っていないんですよ。どこのジャンルでも。(終)


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