「嵐」が地味に売れているらしいのである。今週発表の9月5日付けオリコン週間ランキングのDVD、BDの各部門でそれぞれ初登場総合1位を獲得したのである。これで「嵐」の「DVD&BD同時総合1位獲得作品」は、通算6作目で6作連続となったのである。タイトルは『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』である。
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さらにこれで「嵐」は音楽DVDによる「連続総合1位獲得作品」を15作連続に、「通算総合1位獲得作品」を17作に伸ばして、それぞれ自己の歴代1位記録を塗り替えたのだそうである。加えて10年連続で総合1位を獲得したというのも、今回の「嵐」がはじめてのことであるらしいのである。いろいろな冠のつけ方をしてくれるのでややこしいのだけれども、とにかくたいへんなものである。
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それにしても「嵐」は地味である。いやいや、2015年11月から12月にかけて行われた『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』では全国5会場17公演で約80万人を動員しているし、昨年の総売上が約350億円(「デイリー新潮」8月31日配信)に達しているのは承知しているのである。それでもなおかつ「地味」。1位とか記録更新とかいわれても地味。
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そう見えてしまうのは、ひとつには、やはりとくに今年に入ってからの芸能界の異様な狂躁ぶりがあるのである。ベッキー&ゲスッチョ川上絵音、神田正輝&三船美佳にはじまった一連の不倫問題、清原和博、高知東生の覚醒剤事件、さらに高畑裕太の強姦傷害事件、そして直近では夏目三久&有吉弘行の妊娠→結婚報道……。これでは比較的よい子の「嵐」が埋もれてしまうのもムリはないのかもしれない。
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さらに同時に、「嵐」にはジャニーズ事務所内の微妙な立ち位置がある。いま現在のジャニーズ事務所あげての焦眉の課題といえば、いかにSMAPの後継をつくるか、ということである。「嵐」は長くSMAPに次ぐNo.2であったし、売り上げではすでに数年前からそのSMAPすら凌駕してダントツのトップなのである。しかしこれ以上の将来があるかといえばクエスチョンマークがつく。すでにここらあたりがピークアウトなのではないか、という気配がチラチラする。ノビシロがどうも、なのである。
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SMAPの後継候補に上げられているのは、いまのところNEWSとHey! Say! JUMPらしいのである。事実、この2つのグループメンバーの露出が最近はとみに多い。つまり「嵐」はすでに定番商品の座をしっかりと確保して、とくにコマーシャルなどを打たなくても確実に稼ぐマルコメ味噌みたいなものなのである。基礎食品。たとえがセコくてすまんのう。
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しかし芸能界の狂躁だとか世代交代の狭間に落ち込んだとか以上に、「嵐」を地味に感じさせている理由があると思うのである。それはファンサークル、ファンベースの閉鎖性である。従来どおり、またはかつての考え方でいけば、まずはファンクラブの運営などにも関わるコアなファンが中心にいて、それから徐々に個々の熱量を下げつつ、大衆のなかへ同心円的に広がっていくというのが、ファンのあり方であった。
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しかし最近の、とくにジャニーズ事務所所属タレントに顕著なのは、ほとんどコアなファンというか、エンスージアスト(熱狂的な支持者)によってファンの大部分が占められているということである。そこには独特のルールがあり、言語がある。コンサートでの声援のしかたなど、そりゃもうシビアに決められているのである。
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そんなファン同士による相互監視、規制や排他的な姿勢が、「嵐」の場合はまた飛び抜けて厳しいのである。ときどきはカルトにたとえられることさえある。どっちつかずのファンは弾き飛ばされてしまいそうな勢いである。このまま次に世代が継承されていけば、もはやそれは「民族」である。嵐民族。
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たとえば『ARASHI LIVE TOUR 2015 Japonism』の発売初週の売上はDVD24万4000枚、BD27万8000枚であった。発売初週の売上にはファンの忠誠度が如実に現れる。おそらくこれ、両方購入したファンが多いのであろうと思うのである。自発的AKB商法の虜である。なぜかといえば、「嵐」のファンたるもの「嵐」の実績づくりに貢献しなければならないからである。
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つい最近、「嵐」ではないけれども、8月24日発売のKis-My-Ft2の新曲『Sha la la☆Summer Time』が、初日売り上げで名古屋発のボーイズグループ、BOYS AND MENの新曲『YAMATO☆Dancing』に敗北したという“事件”があったのである。で、これに焦ったKis-My-Ft2のファンは「追いシャララ」などといってTwitterで購買を呼びかけ、ついに初週売上では26万7000枚を計上して1位を奪還するのに成功しているのである。
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Kis-My-Ft2はSMAPを育てた飯島三智が手がけたバリバリの飯島派であり、SMAP解散後はジャニーズ事務所内での風当たりがさらに強くなっているらしいのである。しかも1位を奪われた相手はジャニーズ以外のボーイズグループなのでファンの緊迫の度合いがまた違っていたのかもしれない、といろいろ勘案しても、ファンというものは恐ろしいものである。いや、ほんとうにありがたいものである。
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で、こんなところで比較するのは酷かもしれないけれども、「嵐」、5月18日に発表したシングル『I seek / Daylight』の初週売上は73万8000枚であったのである。やはり別格である。
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それでもなおかつ、たいへん申しわけのないいい方になるけれども、これだけでは「嵐」は井の中の蛙なのである。よくいわれるように老若男女に愛される“国民的アイドル”にはほど遠いのである。ほとんどをエンスージアストが占めるフアンに支持され、その輪のなかで成長してきた「嵐」は、いってみれば、孤島で進化するガラパゴス型のアイドルなのである。ガラケーではなくガラドル。
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しかし、広く世界を見渡してみれば、ニッポンのアイドル事情そのものもまた他に類を見ないガラパゴス型なのである。いまでこそ韓国に類似のグループなりを見ることができるけれども、それまではほとんどニッポンだけの、ニッポンにしか生息しない固有種であったのである。つまり「嵐」はニッポンというガラパゴスのなかの、さらにまたガラパゴス、孤島のなかの孤島に棲むアイドルなのである。はたから見れば地味に見えるのもしかたがないのである。
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でもって、この二重ガラパゴスの上に年商1000億円、赤坂や渋谷の不動産資産だけで200億円(「週刊新潮」2016年9月1日号)といわれるジャニーズ帝国が君臨しているわけである。地味な「嵐」の松本潤がいつまでも結婚できないわけである。で、ジャニーズタレントのファンでもなんでもない私は、それをどこか遠い宇宙の果ての出来事のように眺めているのである。
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ああ、そういえば1980年代の終りごろ、台湾に「小虎隊」というアイドルグループがあったのである。3人組で「少年隊」のモロパクリであった。こういう動きを大切に育てていくことができれば、あるいは「嵐」はただの孤島のアイドルで済んだかもしれないのである。一重ガラパゴス。
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いまやBABYMETALや元NEWSの森内貴寛(28)が在籍するONE OK ROCKが海外で人気を得ているのである。このあたりでひとつ「嵐」も、といきたいところではある。……ムリか。たいへん残念だけれども、ノビシロがないというのはこういうことなのである。生涯ガラドル、いやガラガラドル。頑張れ「嵐」!! 井戸の外で待っている。(了)
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