2017年10月18日水曜日

やる気があんだかないんだか。AV出演強要問題ひとつ片付かず



憶えておられるであろうか? AV出演強要問題。2016年3月に意志に反してAVに出演させられたと訴える女性の存在が女性団体によって明らかにされ、6月にはAVプロダクションの元社長ら3人が逮捕・起訴された(労働者派遣法違反)。



でもってさらに7月にはキャンプ場で撮影を行ったことで女優・監督・スタッフなど52人が公然猥褻の疑いで逮捕・書類送検されている。この件では全員が不起訴処分になったものの、さらに別件の出演強要告発が続くなどしてちょっとした一連の騒ぎになったアレである。とうぜんAV業界全体に緊張が走ったことはいうまでもない。



そのときにこうした問題の解決をめざして組織された外部有識者団体「AV業界改革推進有識者委員会」が、予定通り半年後の10月アタマに報告会を開いた。ざっくりその内容をネットニュースからご覧いただこう。





◆『弁護士ドットコム』2017年10月4日配信
【AV販売、出演女優が希望すれば最長5年で停止へ…業界健全化に向けて大筋合意】

《販売から5年経ったアダルトビデオ(AV)の作品について、出演した女優から要請があれば販売や配信の使用を停止にする方向で、業界内で調整がすすんでいることがわかった。早ければ来年1月から販売・配信の作品に適用される見通しだ。

AV業界の外部有識者団体「AV業界改革推進有識者委員会」(代表委員:志田陽子・武蔵野美術大学教授)が10月4日、活動報告会を開いて明らかにした。業界関係者によると、メーカー間では大筋で合意されており、近日中にAVメーカーなど200社以上でつくる業界団体で方針が決まるという。

●総集編制作時の「二次利用料」支払いなどの新ルールも

有識者委員会は、いわゆる出演強要などAV業界をめぐる問題を受けて、今年4月に発足した。AV女優など、出演者の自己決定権などを守ることに重点を置いて、業界の健全化を推進するために提言などをおこなってきた。この日の報告会では、次のような新しいルールの説明があった。

(1)メーカー・プロダクション間、プロダクション・女優間、女優・メーカー間の共通契約書の使用

(2)プロダクション登録時(契約時)において、女優本人が再検討する期間の明確化

(3)プロダクション登録時の第三者による意思確認と、その際の重要事項説明の制度化

(4)面接、契約、撮影時などにおける現場録画での可視化

(5)出演料やプロダクションフィーなど金銭面の女優への開示

(6)オムニバス作品(総集編)制作時における出演女優への報酬支払い(二次利用料の発生)

(7)作品使用期間の取り決め(最長5年、以降女優から要請があれば使用停止にする)

(8)通報窓口「ホットライン」の設置

(9)AV業界の紛争解決を行う「仲裁機関」の設置

(10)コンプライアンスプログラムの整備

同委員会には、メーカーなどでつくる業界団体「NPO法人知的財産振興協会」(IPPA)のほか、AV出演者の権利団体「一般社団法人表現者ネットワーク」(AVAN)、プロダクションでつくる「日本プロダクション協会」が加盟している。来年1月からの新ルール実施に向けて、業界内の調整をすすめているという。

●新団体「AV人権倫理機構」が発足

河合幹雄委員(桐蔭横浜大学教授・副学長)はこの日の報告会で、「(AV出演をめぐるトラブル)相談のかなりの部分がこれまで出演した作品を消してもらえないかというものだった」と説明。「作品販売から最長5年で使用停止」について触れて、最も重要なルールだと位置づけたうえで「かなりの被害・トラブルが減らせると考えている」と話した。

志田代表委員は報告会後、女優が出演をとりやめたときの違約金について、「委員会としては、出演強要になってしまうので、絶対にダメだと考えている。出演を取りやめたときのバラシ代(撮影セットの解体、人員の解散等の費用)のリスクもある程度メーカーが引き受けるべきだと考えている」とコメントし、今後の重要課題とした。

なお、有識者委員会は、発足から半年経った9月末に活動を終了したかたちとなった。10月からは、これまでの4人の委員と新たな有識者メンバーを加えた「AV人権倫理機構」として活動を引き継いで、業界の健全化に向けて活動を続けていくという。》





勝手な感想をいわせていただければ、現場の実際、問題の実態からはほど遠い。とりあえず上からバッサリ網をかけてみました、という印象を受ける。



河合幹雄がいう「(AV出演をめぐるトラブル)相談のかなりの部分がこれまで出演した作品を消してもらえないかというものだった」という言葉にそれが如実に現れている。



派遣プロダクションとの契約、製作会社との契約、撮影時の細かなやりとりなどなど、各場面でさまざまに想定されうるトラブルの結果として、出演者は「出演した作品を消してもらえないか」という願いを抱くことになるのである。



事後の対応であれば「相談のかなりの部分」が「作品を消してもらえないか」に落し込まれるのはあたりまえではないか。「AV業界改革推進有識者委員会」は誰もがそういう羽目に陥らないようにするためにはどうすればよいのか? を考える組織ではなかったのか?



おそらく被害にあったと訴える相談者に対して「で、あなたはなにをどうして貰いたいの?」とでも聞いたりしてしまったのであろう。申しわけないけれどもここの下りでは意欲そのものを疑う。



でもって作品使用期間を5年とすることでメーカー間の大筋合意が得られていることがトピックなわけである。長い。制作会社にしてみれば5年もあれば十分。それから流通を差し止められても痛くも痒くもないであろう。しかもネットにアップされてしまえばもう誰がどう頑張ってもキレイさっぱり抹消することなど不可能だ。中古市場というものも世の中にはある。これで「かなりの被害・トラブルが減らせると考えている」とはまったく理解できない。



「使用停止」ということは映像の製品化の停止だけれども、製品化を停止しても流通には乗り続ける可能性はある。極端な話、無修正のポルノ作品ですら法の網をかいくぐってほぼ公然と売買・配信されているではないか。



繰り返すけれども問題は出口ではなく入り口なのだ。その入り口での問題に対応しようとしているのが、記事中の(1)〜(3)であろう。もう一度掲載しておこう。

(1)メーカー・プロダクション間、プロダクション・女優間、女優・メーカー間の共通契約書の使用

(2)プロダクション登録時(契約時)において、女優本人が再検討する期間の明確化

(3)プロダクション登録時の第三者による意思確認と、その際の重要事項説明の制度化



まずはしっかりとした契約を取り交わしましょうということである。たしかにこれで“出演強要”という問題は減るであろう。たいへん大きな前進である。しかしこれで各作品ごとの製作プロセスがすべて厳格にコントロールできるわけはない。NG項目ひとつをとってもその場で解決しなければならない問題はいくつも出てくる。



そこを考えていくと、とどのつまり、女を軽んじることによって楽しさや興奮を得ることに走りがちな男の性のあり方みたいなものにたどり着く。ならばAVはすべてフィクションでなければならないという大前提に立てばいいのであろうか? チャンバラ時代劇のように。それもなあ。



とりあえず、個々の作品においては必ず出演契約の数日前にはシナリオを渡す、現場では女優の意思・主張を最大限に尊重する、くらいのことは最低限、とっかかりの包括的な“共通契約書”に盛り込んでいただきたいと思う。(了)



OCN モバイル ONE データ通信専用SIM 500kbpsコース


CMで話題のコスメやサプリがSALE中☆


【DHC】最大70%OFFのSALE開催中!




0 件のコメント:

コメントを投稿