2017年10月1日日曜日

やっぱりつまらなかったシルバー向けTVドラマ「やすらぎの郷」



倉本聰(82)がシルバー世代に向けた昼(12:30〜12:50)の帯ドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日)が9月29日、最終回を迎えた。まったく定かではないけれども“シルバー世代に向けた”と堂々と謳ったテレビドラマははじめてだったのではないかと思う。



役者が高齢であまり動けないので橋田壽賀子(92)風のおしゃべりドラマになる、セリフ回しと物語の進行がトロい、回想が多い、説教くさい、と開始前の予想通りのドラマであった。途中で1人くらい死ぬかも、という不届き千万な冗談までも不幸にもその通りになってしまった。野際陽子、2017年6月13日歿、享年81歳。ご冥福をお祈りする。



予想が当たったといっても所詮は自己申告の後出しジャンケンである。しかも年寄り向けと聞けばだいたい誰でもこの程度の予想はつく。あ、説教くさいというのは、年寄り向け×倉本聰の相乗効果からである。



勝手な感想をいわせていただくとドラマはあまりおもしろくなかった。対象を年寄りに絞っているのであれば“説教”は、たとえば懐かしのボヤき漫才のごとく面白おかしいスタンスで繰り出されるはずなのであるけれども、「やすらぎの郷」ではしばしば現役世代に向けてのマジな説教が入り交じるのである。



年寄りに代わって説教をしてやろう、それは年寄りの共感を呼ぶだろうし、同時に社会批評、現役世代への問題提起にもなりうる、と倉本聰は考えたはずだ。たぶん。社会派だから。これが年寄り×倉本聰の相乗効果説教の仕組みであり、密かに遂行された説教2度おいしい作戦なのである。



だがしかし作戦は失敗。観ている年寄りとしてはどこかで客観視・相対化してくれないと楽しめないだろうと思うのだけれども、現役世代への説教がマジ、さらにその背景にある自分たち世代の不満もリアル。社会派のメッセージをイジることは許されていないらしい。



かくして2度おいしいはずの説教は、おもしろさにマジな説教が邪魔をして中途半端、どこぞの誰に向って語っているのかわからない説教で共感も中途半端に終わっている。



たとえば極端な話、説教される側の現役世代が画面に出て、大岡裁きのごとくヘヘェーとなってくれればわかりやすいのである。しかしそんな安直な演出はできない。意地でもできない。だいたい提起する問題はそんなに簡単に解決するものでもないのである。社会派だから。



というわけで、画面の中にいるべき説教を受ける人に代わって、わざわざテレビの前に座った視聴者が説教を喰らうのである。シルバー世代向けのはずなのに私まで。しかもついでにボヤキと恨みつらみみたいなものまで聞かされる。



ときに8%台の視聴率を叩き出したのは、石坂浩二(76)、浅丘ルリ子(77)、有馬稲子(85)、加賀まりこ(73)、五月みどり(77)、野際陽子(81)、八千草薫(86)、藤竜也(76)、ミッキー・カーチス(79)という出演者の顔ぶれのおかげであろう。平均年齢78.9歳。わしらずうっと憧れておりました。



“シルバー世代に向けたドラマ”とはじめて聞いたときには、年寄りならではの感じ方考え方みたいなもの、年寄りワールドを少しでもかいま見せてくれるのかしら、と期待したのであった。しかし考えてみれば倉本聰は現役なのである。現役が年寄りワールドを描くのはきっとたいへん難しいことなのだ。



と、考えているうち、本物の年寄りワールドを気兼ねなく楽しむ方法が現れた。以下、ご覧いただきたい。





◆『夕刊フジ』2017年9月30日配信
【脅威の老人力発揮する黒柳徹子、骨折しても車いすで舞台に 民放関係者「100歳まで生きるが本当に…」】

《タレント、黒柳徹子(84)が右大腿骨を骨折し手術を受けていた。この年齢で足を骨折しようものなら、たいていは寝たきりになってしまうものだが、やはり徹子は、そんじょそこらのお年寄りとは違った。車いすのまま、舞台に上がってしまおうというのだ。

 

黒柳は28日、自身のインスタグラムで「実は、私、1カ月前に足を骨折してしまい、手術を受けました」と報告。


この日行われた主演舞台「想い出のカルテット」(東京・シアターEX六本木で29日開幕)の通し稽古にも車いす姿で登場したのだ。



骨折した理由は詳しくは明かさなかったが、驚くのは、そのアクティブさ。実際には、手術をしてから10日後には、医者の許可をもらって、現場に復帰していたという。

もちろん、骨が完全にくっつくまでは車いす生活となるが、インスタグラムでも「相変わらずの食欲とともに、毎日リハビリに励んでおります」とつづり、元気いっぱいの様子だ。



「黒柳さんぐらいの年齢だと、足腰の骨折が一番危険。寝たきりになってしまい、そのままフェードアウトというケースが多いからです。復帰の速さも驚きだが、もっと驚きなのは骨折前はスクワットを毎日50回やっていたと明かしたこと。ジャイアント馬場がスクワットを50回毎日続ければ100歳まで生きるといったことを守っているそうですが、本当になりそうです」と民放関係者。

何ともすごい黒柳さんだ。》





もちろん「何ともすごい黒柳さんだ」と感嘆しようとて観劇するわけではない。懸命に頑張っていらっしゃるご本人には申しわけないけれども、“老い”がついポロリと顔を覗かせてしまう瞬間を楽しみに待つのである。本物の年寄りワールド。意地が悪いのう。



しかし考えていただきたい。高齢になればとうぜんパフォーマンスは下がる。たとえ舞台上で演じるのが年寄りの役であっても、高齢の役者がその役を完全にこなせるかはまったく別の問題だ。そこを割り引いて鑑賞するのは、すなわちポロリと顔を覗かせてしまう“老い”を待つことと表裏一体ではないか。



しかもいつもいつも高齢者ばかりが登場する芝居ではないのだ。さらにその一方で主要なキャストを担える役者は年々老いてゆく。ある程度年老いたら身を引いてくれればいいのだけれども板の上で死にたいとかなんとかわがままをいうヤツもいる。となったらこちらとしてはポロリと顔を覗かせる“老い”に目くじらを立てるのではなく、逆に楽しむつもりで見守るしかないではないか。



もちろんこんなことでは芝居のもともとのおもしろさ、醍醐味は損なわれてしまう。しかし仕方がない。観るほうだっていいかげん老いぼれてどこまで正しく理解できているか知れたものではないのだ。開演した途端の居眠りやしわぶきを気にしてもはじまらない。幕間にトイレに立つ客が少ないのはみんなアテンドをしているからだ。芝居の途中で1人、2人は成仏する。これがほんもののやすらぎの郷である。説教など要らぬ。(了)




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