2017年10月14日土曜日

もしかして中国ってもう1回革命が必要なんじゃない?



中国はそのうち分裂するだろう、とずうっといわれ続けている。そもそものもとをただせば多民族国家であり、赤色貴族制と揶揄される共産党独裁であり、沿海都市部と内陸部の経済格差が激しい。



さらに都市部と内陸部の経済格差にオーバーラップして都市戸籍と農村戸籍という戸籍の二元管理による差別もある、と聞かされればそうだろうなあと思う。



人口約13億8000万人のうち共産党員は約9000万人である。その多くは共産党から任命されて国営企業の役職に就いているのだそうである。叩き上げの非共産党員の職員を、やってきたばかりの若い共産党員がアゴでこき使う光景もあたりまえらしい。



貧乏人は割り算が好きなのでちょっと計算してみる。党員1人に対して非党員は約15人、労働人口でいえば10人弱。アメリカでいうWASP(White,Anglo‐Saxon,Protestant、白人のほとんど) よりも「漢・共・沿海都市部」のほうがステータスが高そうだ。



しかし反対に共産党員ではない内陸部の農民の家に生まれついてはたまったもんじゃござんせん。な感じはする。そしてその確率は相当に高い。全国で1日に何百件ものデモだか暴動だかが起こっているというのもまんざら大袈裟ではないであろう。



とはいえ、こうして推測してみたとしてもその空気というのはわからない。中国にいったこともないし、インドみたいに国の恥をダダ漏れさせるほど豪快というか無頓着なところもないから具体的なニュースが伝わってこないのだ。



しかしそれでも見つけた。しかもかなり強烈なヤツ。





◆『Techinsight』2017年9月3日配信
【旧日本兵の軍服を着た男性、駅前で「バカヤロー」と叫ぶ(中国)】

《 このほど中国で、人通りの多い駅前で旧日本兵の恰好をした男性がパフォーマンスを繰り広げ、警察に身柄を拘束された。『South China Morning Post』が伝えている。

さる8月13日に、中国南部にある高速鉄道の駅前で第二次世界大戦当時の大日本帝国陸軍の軍服を来た男性がいた。この男性は刀のような物を振り回し、慣れない発音で「バッカヤロー!」と繰り返し叫んでいた。傍らでもう一人の男性がその様子をニヤニヤしながら撮影している。

『South China Morning Post』では、この2人の男性は広西チワン族自治区の賓陽県出身と報じている。警察は彼らが社会秩序を乱すという理由で10日間身柄を拘束。さらには地元の人々を激怒させてしまったようだ。

警察の調書によると、およそ300人もの人々が彼らの自宅に集まり「打ちのめしてやる!」と怒りを爆発させたという。当時、集まった群衆を退散させるために警察を総動員するほどの大きな騒ぎとなった。

「なぜこのような危険な真似をしたのか?」という警察の事情聴取に対し、2人は「インターネット上で有名になりたかった」と答えている。

しかし彼らの自宅を取り囲んだ300人の群衆を擁護するネチズンのコメントほとんど見られていない。ある人は「裸でもあるまいし、どんな服装をしようと彼らの自由です。それにひきかえ乱暴な群衆達はそれで愛国心を持っていると言えるの?」とコメントしている。》





インターネット上で有名になりたいからと駅前で“日本鬼子”のコスプレをして「バッカヤロー!」と繰り返し叫ぶ男と「裸でもあるまいし、どんな服装をしようと彼らの自由です。それにひきかえ乱暴な群衆達はそれで愛国心を持っていると言えるの?」という“ネチズン”。対して男たちの家を取り囲んだ怒れる300人。この違いはどこから生まれるのであろう?



コスプレ男と“ネチズン”のほうには大日本帝国によって侵略されていた時代を客観視する余裕があるようにみえる。客観視するどころかいまやそれをネタとして扱っているのである。



コスプレ男はコンビニのアイスクリームのショーケースに寝転んだ写真をインスタグラムに上げるバイトみたいなものだ。ずいぶんサバけたものである。そして“ネチズン”にとってコスプレ男は“日本鬼子”のカリカチュアであり、少しひねったギャグ、批評行為なのだ。



であるからこの場合、“ネチズン”にとってはコスプレ男を笑って受け容れることが愛国心であり、「乱暴な群衆達はそれで愛国心を持っていると言えるの?」ということになる。これでムキになるなんてバカなヤツ。ふうん、エッラそうに。



この事件が中国南部のどこで起きたのかは不明である。コスプレ男ともう1人は「広西チワン族自治区の賓陽県出身」と記されている。広西チワン族自治区はベトナムと国境を接し、トンキン湾にも面している。大型港湾がいくつもあり、農業・工業が発達して豊かな地域だ。



コスプレ男たちが今回の「バッカヤロー!」パフォーマンスを繰り広げられたのには、もちろんそうした経済的な背景がある。しかし、警察が事情聴取で「なぜこのような危険な真似をしたのか?」と訊いたように、この事件が起きた地域では、そもそもそれは許されざる行いなのである。



ということで、ああ、こんなふうに中国の人々も不公平に晒されて分断されているのだなあ、そのうち中国は分裂するのかもしれないなあ、という空気はなんとなく伝わってきた。



で、「広西チワン族自治区の賓陽県」からきた男が大日本帝国陸軍のコスプレをし、こちらとしては笑えないギャグをぶっ放せたのにはもうひとつ大きな理由がある。



それは1966年から1976年までの文化大革命のあいだ、広西チワン族自治区で組織的な大虐殺、しかもなんと人肉食を含む虐殺が行われていた歴史があるということである。“文化大虐殺”。実行したのはほとんどが漢族の中国共産党員であったとされている。漢族の党員、ここがポイント。



飢えてもいないのになぜこのようなことが起きてしまったのか? など詳しいことはネットで調べていただければすぐに出てくる。実態の記述をひとつ挙げておこう。





《 文革時代の最も行き過ぎた行為の一つに、中国南部・広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の武宣(Wuxuan)県で起きた、粛清の犠牲者の心臓や肝臓、性器が食べられた事件がある。

共産党が文革を宣言した1966年5月16日の「五一六通知」から50年が経過した現在、武宣県にはフローズンヨーグルトを売る店が立ち並び、こけむした石灰岩の下を流れる川で男性たちが釣りを楽しんでいる。木々の枝には共産党の人民への貢献をたたえる赤い旗が掲げられている。

地元住民の中には、飢えではなく政治的憎悪によって武宣県の路上を血に染めた数十件に上る食人行為について、聞いたこともないと話す人もいる。

80年代初頭に公式調査を行った主要メンバーの一人は、匿名を条件にAFPの取材に応じ、武宣県では少なくとも38人が食人の犠牲になったと明かした。「全ての食人行為は、階級闘争があおられた結果起きたもので、憎悪の表現として行われた。恐ろしく、獣にも劣る殺人だった」

「10年間の惨劇の中、広西チワン族自治区では無数の人々が命を落としたのみならず、ぞっとするような残酷行為と悪意が吹き荒れた」――この調査団の元メンバーは、未公表のままの報告書草案にこう書いている。AFPが確認した草案には「首切りや殴打、生き埋め、石打ち、水責め、釜ゆで、集団虐殺、内臓の抜き出し、心臓や肝臓、性器の切り取り、肉のそぎ落とし、ダイナマイトでの爆破など、あらゆる方法が使われた」とあった。

1968年には、中学校の生徒たちが地理の講師を殴り殺した後、遺体を川辺に運び、別の教師に強要して心臓と肝臓を取り出させる事件があった。学校に戻った生徒たちは臓器を焼いて食べたという。現在、この中学校は移転しており、現役の生徒たちに聞いても事件は知らないと首を振る。地元住民らも、知らないと答えるか、口を閉ざすかのどちらかだ。

事件について議論することを望むごく一部の人々は、記憶が風化する中、町は過去から逃れることに必死だと話す。ここ数年で急激に発展する武宣県にとって、歴史は「何の意味も持たない」のだ、と。

 〈— 略 —〉》

※『AFP BB NEWS』2016年5月13日配信【文革50年、語られぬ「人肉宴席」中国】





惨劇が繰り広げられた広西チワン族自治区の武宣県は、コスプレ男たちがやってきた賓陽県の北東に位置する隣県である。男たちにとっては惨劇を引き起こした漢族の党員のマネをするよりも、大日本帝国陸軍のコスプレをして日本刀らしきものを振り回しながら「バッカヤロー!」と叫ぶほうが、いろいろな意味でよっぽどラクなはずである。



あるいは彼ら自身が漢族の共産党員かもしれない。そしてその背後にいる漢族の共産党員とその子弟の“ネチズン”たち。彼らにバカ扱いされる怒れる地域住民。おそらくチワン族。そう考えると、中国が自国民のあいだに抱える溝の深さ広さがさらに深刻に思えてくる。



しでかしたほうの記憶は簡単に薄れるけれども、やられたほうは、ほんとうはずうっといつまでも忘れない。(了)




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